紙の本
「生」と「性」の鮮やかな世界
2015/03/26 11:38
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:september - この投稿者のレビュー一覧を見る
手に取って驚いた薄い!短編だ!しかし侮るなかれスパッと切り裂かれ飛び出してきたのは「生」と「性」の鮮やかな世界。それが当然であるかのように日常の一部であるかのように語られる設定は、読者に一分の隙も与えることなく、有り得てしまう未来かもと想像させるのは容易い。見たら脳裏から離れん表紙のインパクトもお見事。これからも注視していきたい作家さん。
紙の本
命の重み
2023/06/10 14:13
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投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る
少子化が進み、「産み人」になって十人出産すれば一人死なせることができるようになった日本。社会はそれを受け入れているが、それに反対する者も存在している。
正義や道徳は時代によって変化する。主人公は周囲の人間の様子からそれを知っている。
命の重みはどちらに天秤を傾けるのか?
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今一番、新刊が出るのを心待ちにしている作家さんです。
さて、かなりの直球タイトルですが、まさに文字通り。殺人出産という中編小説をメインに、奇想天外な物語が散りばめられています。
殺人出産
初潮が始まった時点で子宮に避妊技術を施し、快楽だけのセックスを楽しむ世界になり、人口は激減した。そこで子どもを10人産んだら1人殺してもいいという制度が設けられた。男は人工子宮をつけ、女は人工授精でただひたすらと産む。それらは産み人と呼ばれ神聖なものとして崇められる。
トリプル
ふたりでつきあう、言わばカップルが主流だった時代は遠い昔のことで、自然なのはどのような組み合わせでもトリプルだという時代。主人公は男二人と交際をしている。そのなんとも不思議なトリプルでのセックス、そしてトリプルとしている彼らから見るカップルでのセックスへの嫌悪感がすごい。ちょっと気持ち悪い。
清潔な結婚
家庭に性というものを一切排除することを決め、夫婦になった、が、子どもは望んでいる。そんな夫婦の一風変わった、最先端のクリーン・ブリードについて。この夫の隠された性癖がダメで、これもなかなか気持ち悪かった。
余命
老衰も他殺による死も技術が発達して蘇生できるようになり、この世から死がなくなった日のこと。自分で死ぬ時期を選ぶ時代がやってきた。死に様を選ぶ、センスのいい死に方を。これまた不気味。
そう、トータルしてとんでもなく不気味な世界である。村田さんが描くとSFはこうなるのかーと感嘆した。こんな時代が来られたら困ってしまうというものばかり。あ、けれど、余命のように蘇生技術はいいな。死にたい時に蘇生拒否申告して死を選べる世界。
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「十人産めば、一人殺してもいい」という法律が出来た日本。産み人は凄いこととされていて、殺されることは名誉あることとされている。
セックス=妊娠ではなく、人は全て人工授精をうける。それは本当に正しいことなのだろうか?
尊い命を十人産んだ人間が、尊い命を一人殺す。割合にすれば産まれた命の方が多いが、この法律は一体何を産み出そうとしているのだろう。
自分が殺したい人間対して産むという選択をするのか、殺される側になったとき、どうするか?
生と性は、生と死以上に切り離すことが出来ないものだ。
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もしも、こんな世界になってしまったら。
→http://bukupe.com/summary/12664
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近代文学のような印象。
分析したくなる文章だった。
俯瞰する一人称が心地好い。
他の作品も読んでみたい。
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どの短編も、いま自分がいる世界の、足元がグラついてくるような設定なのに、登場人物が‘ふつう’なので、バランス感覚失いクラクラ立ち眩みした。
くだらねえこと繰り返す日本でふつふつ怒りを溜め込んで、ついにとんでもねぇ妄想世界をつくりだし、平和ボケのやつらみんなを巻き込む!モンスター沙耶香が産み出したパラレルワールド!!
センセーショナルすぎ、もっと話題なっていいのに!
「清潔な結婚」がシュールですき。
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ジャンルとしては、ディストピア小説ですね…。
表題作の中編が1本と短編が3本の作品集です。
正直なところ、評価しづらぃ作品だったかな~。
子供を10人出産したら、
誰かを1人殺人してもよぃ社会とか…、
恋人は3人一組がふつぅの社会とか…、
私たちの社会では非常識なことが常識の社会…。
読んでいて、全編で、違和感や気持ち悪さが…。
(それが、ディストピア小説の醍醐味なのかな)
ただ、
その違和感や気持ち悪さを際立たせてる要因は、
設定が、ほんの少し前の現実の社会から分岐した
パラレルワールドである、といぅ点でそぅか…。
読者と同じ常識を持つ人間と、
それと正対する新たな常識を持つ人間の混在は、
相手への生理的な嫌悪感をうまく表現しており、
読者も、作品の世界に入り込みやすかったです。
過去の常識は現代の非常識…、
現代の非常識は未来の常識…、
これは、大なり小なり身近にあることですが…、
こと、それが、性や命に係ることになりますと、
途端に、自分の価値観の壁が高くなるのでそぅ。
もし、本作品が、
より、人間の深層心理まで深く洞察してみたり、
より、グロぃ描写で書かれていたならば…、
また違った作品の印象も持ったでそぅが…、
さくっと書かれていた分、さくっと読めました。
評価は難しぃですが、チャレンジ分も併せて…。
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今より少し進んで、今より大分壊れてしまった世界。
人工知能も、ロボットも、殺戮兵器も登場しないデストピア小説。
そこではただ純粋にヒト同士がころし合い、愛し合い、産み合う。
いちばん怖ろしいのは、それなのに、ヒトの肌のぬくもりや血の匂いが希薄なことだろう。
語り手の視点があまりに淡々としていて、さも当然のことのようにこの狂った世界の有様を観察している。
僕には彼女らが狂って見えたけれど、
彼女らには僕たちの方が狂って見えるのだろうか。
これは大きなお世話でしかないのだろうけれど、
こんな小説を生み出してしまった村田さんが正気でいられるのか、本気で心配になってしまいます。
怖ろしい。
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なかなかすごい内容だった。「殺人出産」産み人ととなり10人出産すれば、1人殺して良い。「トリプル」もなかなかすごい。
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殺人出産、トリプル、清潔な結婚は雑誌掲載時に読んだので、余命だけ読んだ。たった4ページの読書(笑)
医療が発達して死ぬことがなくなり、終わりは自分で決めるようになった。
死について不便だとおもうけれど、もしそういう時代がやってきたら、私もきっと自然な死を望むのだろうなあ。
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『清潔な結婚』は『GRANTA JAPAN」で読んだ時も面白かった。表題作も何だか有り得そうな気もしてくるから怖い。
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「10人生めば1人殺しても良い。」そんなあり得ない近未来社会を描いた村田沙耶香『殺人出産』。気色悪い現実味を帯びた凄い小説だった。
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そういう考え方もあるのかぁ(私は共感できないけど)。10人出産したご褒美の殺人もトリプルな恋愛も清潔すぎる結婚も寿命完全無視の世の中も、これじゃロボットだね。「あいつを殺すために」とか「あと何人産んだら殺せる」と考えながらの妊娠なんて、お腹の中の赤ちゃんにいい影響与えなさそう。胎教にもよくないと思うんだけど。
『余命』はたった4ページしかないのに、妙にいろいろ考えさせられました。「お迎えが来る」のではなく「来てやったよ(行ってやるよ)」になるのかぁ。いつ来るかわからない「死」という終わりがあるから、今を頑張って生きているんだと思います。私は寿命とか運命とか神の領域だと思っているので、ちょっと抵抗を感じます。ただ死を迎えるに際して、住居や預貯金などの身辺整理をする・事務手続きをしておくなどは、いい心構えだとは思いますが・・・。
100年も経つと世の中はそれが当たり前になっているのかなぁ?まさか私が生きている間はそんな風にはならないだろうけど。気持ち悪かった・・・。
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本屋で目についたので、立ち読みしました。
4つの短編集で1日目に表題作の「殺人出産」と最後の「余命」、2日目に「トリプル」と「清潔な結婚」を読了。
この作家さんの作品は初めてだったのですが、「殺人出産」の10人出産したら1人殺しても良い社会という設定の面白さに惹かれて手に取りました。
立ち読みでも苦にならないくらい読みやすかったし、結末がどうなるのだろうと気になってぐいぐいと読んじゃいました。
すごく好みというわけではないのですが、ストーリーは面白かったです。
でも殺意って、そんなに簡単にわくものかなぁ…と思うのですが。
最後の殺人のシーンは、あまり共感できないし(当たり前?)。
でも今子どもをほしいと思えない自分には、この社会をうらやましい…とは思わないけど、何だか身につまされる思いがしました。
「余命」の方の、自分で死ぬのを決める社会というのも面白い設定だと思いました。
でもその辺で死なれたら死体の処理とか大変そうな気がします(苦笑)。
性行為と妊娠・出産を切り離して考えることがこの作者のテーマのようですね。
家族(夫婦)と性行為を切り離すという「清潔な結婚」の考え方も面白いと思いました。
でもイマイチ、何で最後に夫が気持ち悪くなったのかが読み取れませんでした。
あと「トリプル」の性行為の仕方も自分的には受け入れがたい…。
トリプルという関係性自体は悪くないと思いますが。
この作者の他の作品も気になります。