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商品説明
うつ病が世界的な流行をみせている。この流行はなぜおきたのか。増える患者、揺れる臨床現場のなかで、北米と比較しながら、日本のうつ病理解が持つ可能性を探る。『こころの科学』連載他に加筆修正。【「TRC MARC」の商品解説】
目次
- 第1章 うつと自殺の医療人類学
- 第2章 「意志的な死」を診断する――自殺の医療化とその攻防
- 第3章 気のやまい――前近代の鬱
- 第4章 「神経衰弱」盛衰史――「過労の病」はいかに「人格の病」へとスティグ
- マ化されたか
- 第5章 「精神療法」と歴史的感受性――二〇世紀日本のうつ病
- 第6章 鬱、ジェンダー、回復(1)――男性と「諦観の哲学」
- 第7章 鬱、ジェンダー、回復(2)――女性はうつ病をどのように経験してきたか
- 第8章 “ストレス”の病?
- 第9章 「労働科学」の新たな展開――脆弱性再考
著者紹介
北中 淳子
- 略歴
- 〈北中淳子〉マッギル大学人類学部医療社会研究学部博士課程修了。慶應義塾大学文学部人間科学専攻准教授。Ph.D.(医療人類学)。
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紙の本
日本でのうつ病の疾病観の変化
2015/02/24 10:45
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たい - この投稿者のレビュー一覧を見る
執着気質、メランコリー親和型といった気質中心の病因を仮定した「内因性」の病という見方から、「社会的ストレスによる」病という見方へと変化した。このように日本ではうつ病の疾病観が変化した、と本著作では述べられる。
電通事件をはじめとした裁判の判決によって、司法がこの疾病観の変化の動きを主導し、厚労省がそれらに追従する形をとり、国がよくも悪くも「うつ病」の社会的意味づけ、対策を牽引しているという。この点は、世界にあまり類を見ないそうである。そもそも昔から執着気質、メランコリー親和型をうつ病の主因と見てきた、その疾病観も日本独特であるらしいが。(「なぜうつ病の人が増えたのか」 冨高辰一郎著)
さらにSSRI解禁、自殺対策施策の各種予防活動、精神科受診と薬物療法の早期開始勧奨、精神科クリニック開業増加などがそれらの動きを後押ししたという点は、類似の著作で指摘されるとおりである。本著では、戦中世代の人と、現代人とでは「つらさ」を感じる、その主観的感覚のベースラインが変化しているのではないかといった指摘も、調査結果をひいてなされる。
本著作の論は、著者の長年の精神科におけるフィールドワーク、調査、翻訳活動などが下敷きになっており、重みが感じられる。ただ治療的アプローチの選択や病に対しての見方は、大学によっていろいろとヴァリアントがあるように思われるので、読んでいて著者がフィールドにした大学ではそうだったのだな、あるいは著者の接した患者さんたちがそういう人が多かったのだな、と感じる部分もないこともない。しかしひどく労力のかかる作業を下敷きにしているという点がゆるぎないため、読んでいていやな感じは受けじ、興味深く読み進めることができた。
近年はうつ病の診断であっても、双極性障害の治療が実際はなされているという人もよくある。今後そのあたりの変化も追いかけてほしいと感じた。