紙の本
イギリス貴族の生活
2016/10/09 10:19
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投稿者:読書好き - この投稿者のレビュー一覧を見る
一見したタイトルからは、夫人から虐げられる使用人の悲哀?と予想したのですが、「旅行ができるかも」という希望を抱いて奉公することに決めた女性の眼を通した貴族の生き方が鮮やかに描かれています。
夫人に対して遠慮なく物申すメイドとそれを受けての夫人のやり取りは身分の違いを超えて自由にして闊達、ドラマか映画にならないかなあ?
紙の本
実録です
2020/01/16 02:06
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投稿者:Chocolat - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルから勝手に小説かと勘違い
しかし、当たり!でした
20世紀初頭のイギリス、筆者ローズは、労働者階級の娘
望みは、貴族の奥様か、令嬢のお付きメイド
キャリアも積んで、仕事に自信を持った矢先、イギリス初の女性下院議員、アスター子爵夫人に出会います
「奥様には、優しさというものがなく、気まぐれで、意地悪を楽しむ方」とは、本人の弁
しかし、数々の試練を乗り越え、いつか「私に我慢できるのはローズしかいないし、ローズに我慢出来るのは私しかいない」と、奥様に言わせる程のベストメイトとなっていく、身分差がありながらも心は平等と、2人の丁々発止のやり取りが笑えます
これは、希少となった、貴族社会と、使用人の世界を知る資料でもあり、誇りを持って働くこと、幸せな一生とは?など、様々なことを考えさせられた作品で、2人の長い年月は、読み応えがありますが、読んで良かったと思えた作品です
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俺(私)は従僕(メイド)じゃないんだから関係ない、という人は従僕やメイドを蔑視しています。彼ら彼女らは「正直と勤勉」で評価が決まる世界に生きた先達です。一度、この従僕やメイドの世界を読んでご覧になるとよろしい。仕事に誇りを持って働く人は美しいです。
で、パワハラ上司を持っている人には特にお奨めです。
「おだまり、ローズ」を連発するレディ・アスターに、ローズはどうして美点や愛情を見出せたのでしょう。そこが読みどころです。
美点も部下への愛情も全くない上司なら戦うか逃げるか早く決めた方が身のため。ローズの人間観察眼は現代でも時代遅れになっていないと思います。
念のため付け加えますが、ローズはおだまり、と言われて黙ってばかりいません。ローズが従順だけを善しとしていたなら「おだまり」は何回も発せられるはずがないのです。
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もう最高に面白い。
ローズも奥様も。おそらく、普通の英国貴族の奥様だったらこういったつながりはなかったであろうけど、名執事のリー曰くの「いわゆる普通の貴族奥方ではない」奥様であればこそ。
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この使用人たちのプロフェショナル意識、恰好よすぎるわ!
ほんと、有能でないとお付きメイドはできませんね…とてもこなせそうにない仕事量。私も、メイドになりきれば、日々の洗濯掃除をこなせる気がしてきました。
いくつもあるお屋敷ごとの、個室の使用人部屋がいいなぁ。
戦時中の話には、初めて「ノブリス・オブリージュ」の意味を知った気がします。あと、古き良き英国は、戦中に終わったのだなぁ、と感慨。
晩年のレディ・アスターの写真が凄すぎる、こちらまで背筋が伸びます。最後には泣けてしまいました。
ちらっと見える、女主人とメイドの精神的な繋がりがよいと思います(「半身」的な、さ…)
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書評
『おだまり、ローズ』by 出口 治明
URL : http://honz.jp/articles/-/40792
おだまり、ローズ: 子爵夫人付きメイドの回想
作者:ロジーナ ハリソン
出版社:白水社
発売日:2014-08-12
とても面白い本だ。「事実は小説より奇なり」という格言が本当によく実感できる。ロンドンに駐在していた時、日本から賓客が来られたら、よくクリヴデンにお連れしたものだ。ヒースロー空港に近く、豪華で典型的な貴族のカントリーハウスであったからである。現在はナショナルトラストが保有しているが、最後のオーナーがアスター卿であった。本書はそのアスター家の子爵夫人に仕えたメイドの回想録である。
アスター家は、連合王国の貴族ではない。アメリカで財を成し(ニューヨークのウォルドーフ・アストリア・ホテルはアスター家が創ったもの)、連合王国に渡って、子爵の地位を得た。著者が仕えたレディ・アスターもアメリカ生まれ、アメリカ育ちの「型破りな」貴婦人である。対するメイド(著者)は、強情とされる生粋のヨークシャー娘。さて、この2人の対決はどうなるのだろうか。
少しばかりの高給につられてレディ・アスターに仕えることになったローズ(著者)は度肝を抜かれる。これまでに仕えた貴婦人とはまったく異なり、レディ・アスターは我儘一杯のじゃじゃ馬であったのだ。ローズはあやうくメンタルを病みそうになる。しかし、自分の子供時代や故郷の村を思い出し、我に返ったローズは「間違っていたのは、反論せずにいたこと」だと気づく(ビジネスパーソンにも応用できそうだ)。その後の35年間は、2人の戦いあるいはゲームになっていく。そして「勝負は最後までつかずじまいでした」。
登場人物もそれぞれに興味深い。紳士を絵に描いたようなアスター卿。「真に偉大な人物は権限を人にゆだねる度量を持っています」。有能な家令のリー氏。ふと、カズオ・イシグロのスティーブンスを思い出した(「日の名残り」)。それからそれぞれに個性的なアスター家の子どもたち。また時と場所にも事欠かない。なにしろ、クリヴデンは連合王国をゆるがしたあの有名な大スキャンダル、プロヒューモ事件の舞台でもあったのだから。(ローズはこのスキャンダルを、老いたレディ・アスターに隠し果せることに成功した。)ローズはレディ・アスターのお伴で世界を旅する。ヨーロッパの各王室の宮殿での生活などが垣間見られて興味をそそる。また戦時下のアスター家の仕事振りや暮らし振りにも目を引かされる。ローズはすばらしい品位とエスプリを保っていて、アスター家を巡る生々しい人間ドラマを率直に描きながらも暴露趣味的なところが微塵もないことに感心させられる。さすが、ヨークシャー娘。
ローズは、結局のところ、レディ・アスターの最期を看取るまで35年仕えて人生を全うする。題名の「おだまり、ローズ」はレディ・アスターがローズに言い包められた時の自己弁護的な常套文句であった。「この世で一番の望みはなんだい、ローズ?」というレディ・アスターの問いにローズは答える。「もう一度、同じ人生を生きることです」。すばらしいローズの人生。ここには間違いなく���ラマチックで感動的な連合王国の美しい夕日が見られる。
出口 治明
ライフネット生命保険 CEO兼代表取締役会長。詳しくはこちら。
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時代遅れの階級社会のお話と片付けるのはいとも簡単。
でも確かにそこには人間の幸福な関係があったことは疑いも無い。『日の名残り』然り『ダウントン・アビー』然り。そして本作も然り。
本作はまるでフィクションとさえ思える。それもこれも語り部そしてその仕えた女主人他関わる全ての人の魅力に尽きるのだろう、つまりは繰り返しだが例え後世の人間が後進的社会制度・関係と判断したとしても、そこには確かに人と人との繋がりが確かにあった証かと。単なるノスタルジーを超え共感せざるを得ない痕跡があるとしみじみと感じる。訳含めて好著、ご一読をば。
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お付きのメイドさんの生活や上流階級の人の装いや装飾小物などの記述が興味深かった。ローズは、扱いづらそうな夫人相手にのびのびと、言いたいこと言ったりして。きっとメイドという仕事が性に合っていたんだろうな。もちろん夫人との信頼関係・相性も良かったのでしょうけど。
そもそもメイドさん雇えるほど余裕はないけど、他人様にこんなことさせたら悪いかななどといちいち遠慮してしまう私はメイドを使うコトなんてできないな。
家も庭も衣類も身の回り品も美しさを保つ為には結局、誰かが常にせっせと手入れするしかないんだな、高価なモノなら尚更・・・。そういう細々としたところまで手を抜けない。使用人って、メイドさんって、ひゃぁ大変なお仕事だ。
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364pもあるからそうとう疲れるかも、と思っていたけど杞憂だった。おもしろいし難しいこともないからすいすい読めた。ローズが誇りをもって仕事をしていて、レディ・アスターとやりあう日常茶飯事にもプロフェッショナル!を感じた。
晩年のレディアスターがエリザベス女王の戴冠式に出席された時の、着飾りまるで繊細な陶磁器のようなレディアスターの姿に”老い”を感じたローズの一文には思わずこちらも感傷的になってしまった。そしてレディアスターが亡くなられる場面では思わず涙が。35年間お付メイドとしていつでも一緒におつかえしていたローズの虚脱感はいかばかりか。
ローズは人生とも呼べるような仕事を全うした。結婚はしなかったけど、パートナーとして奥様を全力でサポートし、仕事仲間といきいきと毎日を過ごしたかっこいい女性です。
貴族屋敷を舞台にした(?)「ダウントン・アビー」というイギリスドラマを見てみたくなった。
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おおざっぱに言えば、ヴィクトリア時代好きなら読んどけって一冊です。
いやぁ面白い。
浅学につきアスター夫人について詳しくは無いのだが、彼女の魅力とローズの黙らないっぷり、まっとうな気の強さ、心根の正しさというものが存分に書き記されている。
ある時代、過去は辛いと言うけれど、それが当たり前と思う人々と過ごしていればそれが当たり前で在るようにも思える。
ローズのたくましさが素晴らしい。
そして、ある時代のジェントリというもの(厳密に言えばアスター夫妻は働いて居るのだけれどね)、貴族の義務を持つもの、というのは親しさや優しさの代わりに大きなものを背負うことができたのかもしれないなぁと。
良い悪いではなく、正しい間違っているではなく、そういうものだという一つの時代。
価値観がことなる世界で、自分だけが違うことを認識しながら生きることが一番つらいのかもしれない。
読みながらそんなことを考えました。
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簡潔、明瞭な文章で読みやすかったです。
当時の貴族階級の生活やメイドとの関係などとても興味深く楽しめました。
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レディーアスターとの丁々発止のやり取りの中に、お互いへの尊敬と愛情、反発と諦めのなんとも言えない混ざり具合が最高だ。イギリスの上流階級の風習や皇室までに及ぶ貴人のあれこれも裏話的に面白かった。
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メイドや執事、乳母といった「お仕えする人たち」はフィクションではしばしば登場するけれど、実際にその立場にいた人が手記を書くのは珍しい。普通ならまずご縁のないハイ・ソサエティの生活実態を垣間見させてくれるんだもの、そりゃもう、面白いに決まっている。
しかも著者がメイドとして長年仕えたのは、イギリス女性初の国会議員となった子爵夫人で、第二次大戦前の社交界の花形的存在だった。この上流社会の晩餐会やらレセプションやらの様子が、いやはや「華麗」としか言いようがない。女王をはじめとした王族に始まり、チャーチルやらガンジーやらが次々登場し、千人以上招待した舞踏会があったり、もう大変。その「舞踏室」ってそこらの体育館より大きいよね?どんな邸宅なんだ。
この本がユニークなのは、その子爵夫人と著者が、普通想像するような「立派な奥様と忠実なメイド」というありきたりなパターンから大きく外れていることだ。奥様も奥様ならメイドもメイド。丁々発止のやりとりがおかしい。この著者、奥様だけでなく、その家族や友人知人に対しても、かなり厳しいことをさらっと書いていて(基本的には愛情を持ってるけど)、そのストレートな筆致が他にない味わいを生んでいると思う。
ヨーロッパ、特にイギリスのものを読むといつも思うのが、どうしても私たちには「階級社会」に生きる人たちの心性というのはわからないんじゃないかなあということだ。これを読んで、その思いはさらに強くなった。著者の誇りは「自分の職分を立派に果たす」ことにあり、上流の方々にはまたそれにふさわしい義務がある、という強い信念があることが見てとれる。これはいたってシンプルなようだけど、考え出すと奥深い。
ともあれ、これが読み物として非常に面白いのは間違いない。あとがきによると、「おだまり、ローズ」という邦題は冗談から生まれたそうだが、なんとも絶妙。お堅い白水社もやるじゃないですか。
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だまりません、奥様
NHKにて放送されている「ダウントン・アビー」。
現在はセカンドシーズンが放送中だ。
日本の中流家庭に生まれ、中流家庭を築いている身としては、華やかな屋敷の貴族、使用人のどちらの世界も馴染みがない。
だからこそ興味深い。
華やかな世界、高価な調度品に憧れたり、働いてなお夢を追いかける使用人の世界に感動を覚えたり.....
さて、そんな世界はドラマの中だけではもったいない。
興奮冷めやらぬ中で見つけたのが本書。
人気で図書館でも順番待ちの一冊だ。
(なお、解説にもダウントン・アビーの話は登場する)
「おだまり、ローズ」。
この子爵夫人(レディ・アスター)の口癖には愛もあり、照れもあり、八つ当たりもあり。
それに対抗して真正面からモノを言うローズ。
互いに率直な意見を語り合うことで得た信頼。
それは著者のローズが、レディ・アスターを看取るところで終わる。
そして彼女は思う。
悪くない人生だった、と。
自分の念願を著者は最高の形で叶えたのだ。
生まれは労働者階級。
学校に通って学んだことで、彼女は自ら道を切り開いていく。
決して特別なことはしていない。
だが、彼女は勤勉だった。
正直だった。
たとえ人生の一時が辛くても明日は明日の風が吹く。
巻末、第二次大戦後の回想で彼女はある男性と口論になる。
これはどこの国にも言えることで、そしてどんな小さな社会にも言えることかもしれない。
「ちゃっかり自由の恩恵を受けておきながら自分の国をけなすあんたみたいな人に用はありませんよ」
なすべきことをなして、誰かを貶めようとすることなく、真っ直ぐに生きたい。
人は一面だけではない。
様々な面を持っているから面白い。
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『メイド』という職業、階級なども含め誤解していたことが多々あったという気にさせられました。
メイドモノの小説を読んだ直後だったけれど(だからこそこの本に手を伸ばしてしまったわけで)20世紀初頭のイギリス貴族の奥様付きメイドの明と暗、表と裏、虚像と真実を読むことができ大変楽しいひとときでした。
それにしても、メイドイコール使用人ではなくかなりハイソな人品骨柄。
格差社会云々はもうとっくに慣れっこだけど、こんなお屋敷もあるんだとびっくり。同時にこんな貴婦人もいたんだぁと。ノンフィクションだから恐れ入る。