紙の本
まとめ本としてはわかりやすい
2015/10/01 15:36
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投稿者:arima0831 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年末くらいから「イスラム国」関連書籍が山ほど出版された。
本書はそうした一連の書籍の中でも比較的早い、昨年の年末に出たもの。
基本的には「イスラム国」なる国がどういう経緯で成立して、どのような事件を引き起こしてきて、どのような内部構成で成り立っていて・・・という概要をコンパクトにまとめている。
この段階では人質として拘束されていたのは湯川氏のみ。後藤氏の話はまだ出てきていない時期なので、その後事態は推移しているのだが。
現地に強いジャーナリストの手になるものなので、一連の情勢はコンパクトにうまくまとまっている。
解説としては必ずしも詳しくないし、特に深い洞察もないのだが、全体の流れをざっくり追いかけるには良い。
特に昨年末の段階ではこういうまとめ本も他にほとんど出ていなかったから、全体の流れが概観できて便利な本だったはずだ。
現状ではちょっと旬が過ぎた感はあるのだが、わかりやすいまとめ本をサックリ短時間で、という場合にはよろしいかと。
紙の本
「イスラム国の正体」は分かりませんでした
2014/12/30 15:04
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投稿者:キック - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、イスラム国の発生から、イスラム国が広大な領地を支配した現在に至るまでの、イスラム国を巡る中東(特にイラクとシリア)の動向・情勢が詳述されていて、イスラム国と周辺の動向を手っ取り早く知るには、適している本です。
ただ、本題の「イスラム国の正体」に迫っているとは、とても言えません。つまり、本書にはイスラムにかかる基本知識(シーア派とスンニ派の違い、イスラム過激派とは等々)の解説もなく、表面的な説明に終始。本書を読んでも「イスラム国」を深く理解することはできません。表題は「イスラム国を巡る最新情勢」とすべきだったのではと思います。
一方、オバマのイスラム国に対する認識の浅さ・甘さや、リーダーとしての決断力のなさが浮き彫りとなっています(第4章)。イスラム国の台頭を招いた一因は、優柔不断な「オバマ」にあることが理解できました。現在、米軍等による空襲が一定の効果を上げ、さらにクルド族が最前線で踏ん張っているとはいえ、米国が地上部隊を派遣しない限り、イスラム国を掃討できないのではないでしょうか。
本書によると「アメリカは自分たちのために対外政策を決める(111ページ)」とのこと。話は逸れますが、仮に尖閣有事が発生しても、中東問題でさえ弱腰のオバマが米軍を動かすことはないだろうと思いました。
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事実と出来事が時系列に淡々と並べてある印象だった池内恵さんの「イスラーム国の衝撃(http://booklog.jp/users/junjinnyan/archives/1/4166610139)」に比べて、読みやすいといえば読みやすい。著者がジャーナリストさんだからでしょうか。奥様がシリアの方というのも無関係ではないと思うが、私見がわりと盛り込まれている印象で、鵜呑みにしていいのかよくわからない。読みながら「アメリカの軍事介入もやむなしか…」という考えに誘導されてしまうところもあって、ちょっとブレーキかけました。とはいえ、イスラム国をめぐる現地の状況は分かりやすく描かれていると思う。
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イスラム国に対する著者の憎悪はひしひしと伝わってきた。ただ、色んな情報を持っていてもその殆どが伝聞か欧米メディアからの引用(恐らく)で、イスラム国を非難する理由も残虐だから、非人道的だから。イスラム国がどうしてそういう経緯に至ったかを著者自身細かく説明しているのに、殆ど知っている知識を書いただけになっているように感じる。アメリカがイスラム世界を理解してかせずしてか軍事介入を繰り返し、アメリカ国民のブーイングで中途半端に投げ出し現場は余計に大混乱。イスラム世界におけるスンニ派を虐げるシーア派の構図は部外者の想像以上に恐らく残酷なもので、イスラム国の発足も本を辿ればシーア派優位の現状を覆しスンニ派に人権を取り戻すこと、それが延いては、或いはその為の方法としてイスラムの国だったのではないかと思う。
それを無視したような、人を沢山殺しているから悪い人たち的論述はいかがなもんだろう。
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2014年、突如国際社会に名乗りをあげた「イスラム国」本書はイスラム国が成立した経緯と目的をレポートしたものである。
ISIS(誤解を生むので、イスラム国は使わない)は、2003年のイラク戦争後に、駐留米軍に怒濤のテロ攻撃を行っていたヨルダン人のテロリストである、アブムサブザルカウィを中心とする過激派を母体として組織された。
2004年にはアルカイダ指導部に忠誠を誓い、自身をイラクにおけるアルカイダ代表であることを表明。
当時、イラク国内においてもシーア派が掌握するイラク政府軍から過酷な弾圧を受けているスンニ派の住民たちに手引きされたことが契機となり、イラク国内で勢力を伸ばすこととなる。
旧サダムフセイン政権時代の軍人や官僚・有力者もイスラム国に合流したため、
イラクの政府軍や治安部隊を各地で撃破。
60万もの軍人を有するイラク政府軍は各地で簡単に敗走し、ISISに領土を明け渡すことになった。
その後、さまざまなイスラム過激派勢力を配下に加え、強力なネットワークを築いていき、とくに世界各国からアサド独裁政権との闘いにやってきたイスラム系外国人義勇兵たちと深く結びついている。
隣国シリアで起きた内戦では、政府軍とシリア自由軍が対立する中で勢力を伸ばし、支配地域を増やし、現在のようにイラクからシリアにまたがる広大な地域を支配することに至った。
ISISは、七世紀のイスラム草創期を理想とし、当時のようなイスラム共同体への回帰を主張する時代錯誤な過激派グループである。
真のイスラム法に則った世界唯一のイスラム国家だと、自分たちをみなしている。
そのためには、既存の国境など超越して統一すべきものと考えており、かつて西欧列強が分割して決めた現在の中東アラブ国家を認めていない。
アメリカがイスラム国の存在を危険視した最大の理由は、イスラム国がイラクとシリアで台頭することで、その支配地域が国際テロの震源地になることでした。
しかし、ISISはインターネットを活用し、自分たちの主張をウェブサイトやSNSで発信しており、とくにツイッターFacebook、YouTubeといったメディアをつかって、自分たちに興味のある人間と直接つながり、理念を共有している。
今や、世界中の各個人がイスラム国と簡単につながることが可能となっているのだ。
アラブ世界の若者や欧米のイスラム移民社会の若者が、欧米社会批判のSNSにアクセスした場合、簡単にそうしたイスラム国への勧誘に誘導される危険性をはらんでおり、義勇兵としてシリアに入国する若者が後を絶たない。
現在、ISISは次第に自由シリア軍やクルド人人民防衛隊とは各地で対立するようになり、次第にイスラム社会の中でも孤立を深めている。
今後中東情勢はどう変化していくのか?混沌とした中東情勢を探るための入門書としてはオススメです。
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この人は、奥さんがシリア人だって。
もうちょっと、広い視野から、ISISを分析してほしかった。歴史全体からみて、ISISがどういう位置づけになるのか、とか。
2016.04.24.
ニコニコ動画?かな。
16 Oct 2015 モーリー・ロバートソンと話してるのを聞いた。奥さんがシリア人、と聞いて、あれ?以前、読んだことある、と思って確認した。
すげえ詳しいね、やっぱり。
シリアで起こってること、複雑すぎて・・・・・話についていけなかった。
樽爆弾がすごいって。
ISISはもともとイラク発祥だけどシリアへ行って勢力つけたから、またイラクに戻ってきた。みたいな。
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p188:
イスラム国は……たとえばアサド政権側の手にあったイラク中部の天然ガス田を奇襲して制圧するといった戦果を挙げています
・きっと誤りを含んだ記述だとはおもうが,この部分が間違いだといいきれるほど,情報知識をもちあわせてはいない。
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シリア国内の混乱に乗じて、突如現れた「イスラム国」。
彼らが「国」を自称するのは、真のイスラム法に則った世界唯一のイスラム国家だと、自分たちをみなしているから。
本書は、謎の武装組織集団である「イスラム国」とは何者なのか、その実像に迫った一冊です。
詳細なレビューはこちらです↓
http://maemuki-blog.com/?p=5767
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ISISがどこから来たのか。どうしてここまで来たのかについてよくまとまっている。序文の「イスラム国の存在は、今や世界のテロ問題になっていますが、それよりもむしろシリアとイラクの国内問題です。そこは敵味方が入り組んだ非常に複雑な事情があります。」と、「こうしたイスラム国を相手に、平和的な交渉で妥協することは、まず不可能です。イスラム国はその性質上、妥協というものはしません。彼等と平和的に共存するとすれば、彼等の絶対的な統治を認めて、世界中がその下に屈服するしかほうほうがありません。つまり、イスラム国との平和的共存は無理なのです。」第7章結びのこの文章に尽きる。
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ISは支配地域で数百人単位の集団処刑を行ったが、内戦の犠牲者の大多数はシリア政府軍の爆撃で亡くなっている。
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距離的にも文化的にも遥か遠い世界である中東諸国。2014年ごろに日本人が拉致され残虐な手法で処刑される映像がネット配信されて以降、イスラム国という言葉を聞くと極端な残虐性を持つ「イスラム教過激派集団」という認識が一般的になった。他にもアルカイダやヌスラ戦線など、我々からは一括りに前述の様なイスラム教の過激派として捉えられている。実際にどの組織とどの組織が誰と手を組んで誰相手に戦っているのか、正確に答えられる日本人はそう多く無いと思うし、名前ぐらいは聞いたことのあるビンラディン、ザワヒリ、ザルカウィ、一体誰がどの組織を率いているかまで認識できている人は多く無い。日本人が英語圏の人たちの見分けぐらいはようやくできても、立派な髭を生やした中東の男性を見分けるのは難しい。何故なら我々の生活にイスラム世界はまだまだ遠い世界だからだと思われる。名前の付け方も違えば、聞き慣れない言葉の様で中々頭に入らない。
その様なイスラム社会において残虐な処刑を初めとして世界中を震撼させてきたイスラム国(ISISやISILとも)ではあるが、一時期はイラクやシリアにまたがりかなり広範囲な地域を支配下に入れ、正に国際的には誰も認めないが、イスラム社会に領域に縛られない国家「イスラム国」として君臨してきた。元はと言えばシリアのアサド独裁政権(シーア派)に対する反政府組織として、他の勢力とも同じ敵を持つ集団の一つであったが、反政府組織がアサド政権妥当を最優先するのに対して、イスラム国はイスラム教の絶対的な教えを最重要視し、的対するアサド政権妥当を主目的とはしていない。だから反政府組織側でも主義主張を異にする勢力と時に対立してきた。当然アサド政権側から見れば、敵同士が勢力を削り合うのは自分たちにとって有利であるから黙認を続ける。その間に実戦と武器の強奪で確実に力を蓄えていったイスラム国は、前述の様な強大な勢力になっていくのである。ここまで書いていても、様々な国や宗派の利害関係が複雑怪奇に絡み合い、我々には中身がよく見えない所以だ。
かつてその様な力を持ったイスラム国ではあるが、現状はといえば数年前にアメリカの軍事作戦により主導者のザルカウィや後継者のハシミなどが次々と殺害され、一時期ほぼ壊滅状態と思われたが、元々中東の武装勢力の勃興は激しく、一時的に分散して散らばった状態にあるだけとも言われている。
こうした勢力の動きに大きく影響する、アメリカ、トルコ、イスラエル、シリアの動き次第では、またいつ何処から類似の勢力が出たり、息を潜めているイスラム国が表に出てくるかわからない。先日始まったハマスとイスラエルの戦争が大なり小なり刺激となって何かが起こりそうな嫌な予感はする。
本書はそうした中東情勢やイスラム社会の複雑な関係性をイスラム国中心にわかり易く伝える内容となっており、ニュースに飽きたときも、ニュースの理解度を上げるためにも一読の価値がある。
最後に念のために記載されているが、イスラム教自体がこの様な過激思想である筈もなく(一時期はメディアもイスラム原理主義=過激派の様な呼び方をしてしまっていたが)、あくまで平和を愛する宗教であり、一部の過激思想とそれに魅せられる世界各国の義勇兵こそが問題であるとする。