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「オオトリケイスケ」をネット検索すると鳳佳輔が出てしまうくらい知名度の低い幕末の志士大鳥圭介。私も今まで全く知らなかったです、すみません。
こういう歴史の波の中で埋もれてしまいがちな人を描かせたら伊東潤の右に出るヒトはいなだろう。解説的な描写が多いのでドラマチックな展開が好きな人には物足りないかも知れないけれど、だからこそかえってあの爆裂悲劇的戦いがリアルに思える。
彼らはなぜ負けると分かっている戦いに殉じていったのか、武士の矜持とは…今のこの日本は彼らが流した血の上に成り立っているのだ、と改めてしみじみと。
「武士」というのは身分ではなく「生き方」そのものなのだ、ただそれだけなのだろう。
そして「勝つための戦ではなく負けぬための戦をするべきだ」という言葉に本当の武士の「生き方」を見た気がする。
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戊辰戦争、箱館戦争を戦い抜いた、大鳥圭介の物語。
武士の義が一番だった世の中で、
こんなに柔軟で、身分なども念頭になく
未来の国のことを考えていた人が龍馬の他にもいたなんて…。
私の中の、見つけた感がハンパないです。
もっと保身ばかりの、考えがグラグラな人だと思ってましたから。
この伊東潤さんの大鳥圭介像にゾッコンです。
幕府軍の敗戦、他の物語でも、何だかあまりにも
あっけない感じがしていましたが、
こんな色々が重なって、不運な方不運な方に
どんどん行ってしまっていたんですね。
それを言い訳にしない、大鳥圭介。
人のせいにもせず、逃げる者も恨まない。
どんな場面でも諦めずにとことん考え込むこの姿勢。
…この頃仕事で、無理無理、出来ないを連発していた私。
深く反省です。諦めなければどこかに突破口がと
敗戦敗戦でも諦めない大鳥さんに教えられた気がします。
しばらく、「たまるか、たまるか」を
口癖にしていこうと思う一冊です。
どんな幕末の物語を読んでも、土方さんは格好良い。
でもこの物語の大鳥さんは脇の土方さんより
男らしく感じました。
この物語を読んでから、五稜郭に行けばよかったです。
土方さんの写真に「イケメンだ~~」と
ミーハー気分で見学したのは不謹慎でした。
こんなに多くの、こんなに思いの詰まった場所。
改めてまた訪れてみたいです。
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幕末、明治維新にかけての本はかなり読んできたが、大鳥圭介が主人公のものは初めて。
戊辰戦争後の大鳥圭介がいかに生きたかを詳細にまだ書いて欲しかった。
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久々に涙させられた作品だった。大鳥圭介が土方歳三から「お前たちは生き延びろ」と言われるシーンは圧巻だった。通勤電車で計らずも落涙…
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死んでたまるか 諦めない大鳥圭介の覚悟
2015/4/8付日本経済新聞 夕刊
大鳥圭介といえば、『燃えよ剣』(司馬遼太郎)では、実戦経験がないにもかかわらず、仏式幕軍の将校にまで登りつめたことを鼻にかけ、土方歳三のことを「あれは剣術屋だよ」と見下す、敵役的存在。本書はその大鳥を主人公とした初の長篇(へん)。
2人のどちらが格好良く描かれているかといえば、それは土方の方で、しかしながら、そこには作者の周到な計算がある。
決してブレない土方は、苦悶(くもん)しつつも官軍と戦う大鳥を映し出す鏡であり、やがてその鏡に映っている大鳥の像は、次第に土方を脇へと追いやり、実像として(ヽヽヽヽヽ)の主役の座を勝ち取っていく。
両者の違いは、滅びの美学=死地を求める土方と、決して諦めない=敗北を喫しても生を続ける覚悟を決めた大鳥との差異だ。
先日、東日本大震災4周年のニュースで、母親を見捨てざるを得なかった女生徒が、犠牲者たちの祭壇の前で、自分の心情を朗読するのを見て、涙が止まらなかった。そして同時に、思わずこれだ、と本書の大鳥を思わずにいられなかった。生き残る側を引き受け、負の力を正に転換した時、見えてくるのは何か。堂々たる傑作である。
(縄田一男)
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戊辰戦争時の大島圭介が主人公、土方との関わりや蝦夷五稜郭までのなりそめが理解出来た。相変わらず勝海舟の生き方(長い物に巻かれ、人柱として影で操りはっきりしない志)が理解出来ず何故偉人たるのか?も理解出来ない。大島も結局生き永らえ土方の男気の域まで達せず期待外れ。
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大鳥さんが主人公です(^-^)珍しく?土方さんとの関係が良好に書かれてます(笑)そして勝さんがラスボス感だしてます。あとは中島さんのマント翻す姿が格好よかったな(*^^*)
大鳥さんの「南杞紀行」がベースとして大きいようで会話として話が進むというよりは、こう行動したっていう感じで話が進みます。
せっかく大鳥さんが主人公なので、もっと伝習隊の皆が出てきて会話して欲しかったですね。
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さほど名前の知られていない大鳥圭介(兵庫県民の俺も知らなかった)を主人公とした戊辰戦争物語。あくまでもフィクションなんでしょうけど、実直で真っ直ぐな主人公の生き方には素直に感動します。これを読むと薩長の有名人達が悪者のように思えてくるから不思議です(笑。機会があれば、薩長側から見た戊辰戦争の物語を読んでみたい。
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大鳥圭介が主人公。
名前は勿論知っていた。が、あくまで脇役の人かと思っていた。読んでみてもその印象は変わらない。戊申戦争で突如表舞台に飛び出てきたが連戦連敗、時の流れにそのまま流され函館戦争で降伏する。
土方歳三の上官にして榎本武揚の部下、それ以上でもそれ以下でもない。伊東潤が描くんだからそれなりには面白かったけどね。函館戦争を詳しく描いた小説は読んだことなかったから、その点は興味深かった。司馬遼太郎も描いてないよね。
鳥羽伏見の戦いから宇都宮を経て東北戦争~函館戦争まで幕府軍は連戦連敗だった。モチベーションを維持するのは大変だったろう、そこは偉い。板垣退助と同じく明治以降は文官になってしまった事が余り記憶されていない所以でしょうか。まだまだ幕府にも逸材はいたのでしょうね。伊東潤さん、頑張ってください。
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戊辰戦争を戦い抜く旧幕府軍の話。
今まであまりこの時代の小説を読んだことがなく、戦いの変遷は目新しく読めた。
しかしながら、幕末の人間模様や戦国時代の派手な合戦とは趣が異なる。旧幕府軍はひたすら負ける。負けて負けて、逃げて逃げる。タイトル通り「負けてたまるか」の精神でひたすらねばるが、ストーリーとしてはやや単調。
戦争も、そもそも戦死者10人が大打撃を与えたり、重要人物が榴弾とかで被弾をしていったりと、史実にそっているとはいえ、いささか味気ない戦闘シーンであった。
戦闘方式の変更も、個の名誉を重んじる時代の終焉のひとつの背景なのだろう。
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幕末、旧幕臣である大鳥圭介を主人公に、戊辰戦争を五稜郭落城まで追ったもの。
大鳥の目からは、奥羽越列藩同盟を戦った各藩は会津も含めて日和見に見える。
むしろ、祖国軍籍を離脱してまで五稜郭まで同行した旧幕軍事顧問のフランス軍人たちの方が、余程筋が通っている。
大鳥が嘆くこと、頻りである。
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こういったことが、こういうメンツでおこりましたよ~っていう内容。
会話とかもあるけど、…う~ん。単調かな?
足早に物語がすすんでいく。
大鳥さんが地味なのかな…?
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幕末、徳川家は薩長を中止とする新政府軍に恭順の意を示すが、一部の幕臣たちは反発。彼らは新政府軍に武力抵抗を決意し、東北・北海道を戦場とする内戦が勃発する。この内戦の中心人物であったのが大鳥圭介。滅びの美を称える武士道の時代において、フランス式軍組織を学んだ彼は敗戦を経験しても、被害を抑え、次の戦いに備えることを重視する異色の指揮官だった。
ということで、彼は「死んでたまるか」「たまるか」と叫んでは敗戦に敗戦を重ねつつも、逃走しては新たな戦いにチャレンジする。これだけ負けまくる人物を主人公にする小説も珍しい。大鳥の負けっぷりの極めつけは、函館で政府軍の軍艦を奪おうとするところだろう。
数少ない自軍の軍艦を政府軍の軍艦に接近させ、決死隊を送り込み、その軍艦を乗っ取るという作戦を大鳥と盟友榎本武揚が企画。が、敵艦に飛び乗った決死隊は射殺され、逃走する自軍の軍艦は燃料切れで沈没する。軍艦をプラス1にする目論見が、マイナス1になるという冗談みたいな負け方だ。
この小説が敗者の美を描く目的なら、負けっぱなしでもいいのだけど、大鳥は戦死することなく、明治政府の官僚となって、生き続ける。この人の「死んでたまるか」というモットーが生き残った彼を肯定するのだが、多くの仲間を死なせてしまった敗軍の責任者としての苦悩をもっと掘り下げてほしかった。
主人公の大鳥圭介よりも、知略で政府軍と対決した勝海舟、死地を探しながら勝利を求めた土方歳三の2人の方が主人公っぽい。
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「死んでたまるか」
幕末の幕府側の旗本として函館で最後まで戦った大鳥圭介を主人公とした小説である。
フランス陸軍の軍学知識を活用してよく戦ったが、北関東から東北、最後は函館まで、これほど戦闘で負けに負けた人物も少ないのではないか。最後まで戦ったが生き残り、その才能を買われて明治政府内で出世し男爵にまでなっている。
一般的には大臣となって子爵に叙せられた榎本武揚の方が有名であるが、榎本は海軍、大鳥は陸軍であり、函館では早々と戦艦を失った榎本は活躍の場が少なかったように思う。
途中何度か出てくる勝海舟がまた面白い。いったいどれだけ幕府の金を持っていたのか知らないが、何度となくあちこちに資金援助している。幕臣たちが気概を持って生きていけるように適当なところで戦いをやめさせようとするが、土方歳三をはじめ徹底抗戦を叫ぶ連中にはその声は届かない。
結局、函館でにっちもさっちもいかなくなり黒田清隆がいたおかげで命を長らえることができた。かつての同学の士とはいえ、戦う相手にも一目置かれ、理解されるというのはやはりかなりの人物であったのだろう。
タイトルの「死んでたまるか」はどちらかと言えば「負けてたまるか」という大鳥の気概であり、その一方でフランス陸軍の「いけるところまで行き、しかるべきところで死ぬ。」と言う覚悟もあったのはいかにも武士らしい。
エピローグで彼は日本の近代化に力を尽くし、晩年には後進の指導をして大学の学長にもなっている。日本をなんとかしようとして戦ってきたこういった人たちが明治以降の日本を作ったことが感慨深い。
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大阪人の俺にとって、オオトリケイスケは京唄子の相方、というイメージが先行する。この小説の主人公、維新や明治時代に活躍した「大鳥圭介」にはそういう意味でも印象に残りにくい人物なのである。
とはいえ、伊東潤が長編の主人公に取り上げるのだから、きっと魅力的な人物なんだろうと思い読んでみたんだが…。
なんだか、徹底的に負ける人だなぁという印象しか残らない。戦に弱くても、例えば粘り強さとかしたたかさとか、なんかそういうところがあればもっと読ませるのだけど、小説の主人公にするには、華も色も少ない人だと思えてしまう。
土方や榎本の小説はたくさん出てるから、ここは趣向を変えて「大鳥圭介」って趣旨もあたんだろうが、主人公として盛っても、土方・榎本・勝、果ては最後に出てくる黒田了介の方が印象に残ってしまうんだから…
大鳥圭介、って人はホント負けっぷりだけが見事な人なんやろなぁ。ポテチン