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紙の本
永遠の騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ
2006/06/06 17:04
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:桑畑三十郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
窶れ顔の騎士、後に獅子の騎士と自称するドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャ。愛馬ロシナンテにまたがり、サンチョ・パンサを従えて、魔法にかけられ醜い農婦の姿にかえられた愛するドゥルシネア・デル・トボーソ姫を救うため冒険を続ける。バカバカしいことを大真面目にやる姿は映画「男はつらいよ」に通ずるおかしさがある。
前篇でつじつまのあわないところを、後篇で登場人物が指摘するという、欠点を逆手に取った、おきてやぶりの方法に作者の余裕みたいなものも感じる。
ドン・キホーテはサンチョに、目的を達成すればインスラを統治させると約束していたが、後篇(下)でサンチョは念願かない、めでたくインスラの太守となる。しかし、あれだけ望んだ太守であったが、いざなってみると食いたいものは食えず、退屈な裁判の仕事ばかり。しかしここでサンチョは、大岡越前ばりのみごとな裁きをみせる。ドン・キホーテと旅をしていたときは、たよりなく、ことわざばかりしゃべるお調子者であったのに、まるで別人である。
しかしそんなサンチョに難問が。「橋を一方から他方へ通行する者は、事前に、行き先と、行く理由を、誓いを立てた上で陳述すること。正直に述べれば通行を許す。嘘をつけば絞首台で容赦なく絞首刑に処す」という定めのところに、ある男が、自分は絞首台に死にに行くと誓った。そのまま渡らせると、嘘をついたことになって死刑になるが、死刑にすると嘘をついてないことになり矛盾する。まるでゲーデルの不完全性定理だ。さあ、どうする、サンチョ? どんな裁きを見せるのか楽しみにしていたが、結論からいうとちょっと期待外れだった。ここであっと驚くような解決法を出していれば、ドン・キホーテより、サンチョ・パンサのほうが歴史に名を残していただろうに、残念だ。
なにはともあれ退屈なインスラの太守より、自由な風にもどることを望んだサンチョは、太守をやめ、またドン・キホーテと冒険を続ける。ドン・キホーテはサンチョに言う。
「天から授かったもので、何が貴いといって、自由ほど貴いものがあろうか。海が、陸が、秘める財宝が多々あれど、自由に比べうるものはない。自由のためなら、名誉のためもそうだが、命を賭けてよい。」と、
さあ、ドン・キホーテは愛するドゥルシネア・デル・トボーソ姫に会えるのか? 冒険は悲劇的結末へと進んでいく。読み終えてなんともいえぬ寂しさが襲ってくる。