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紙の本
雪の炎 (光文社文庫)
著者 新田 次郎 (著)
魔の山・谷川岳を男女5人のパーティで縦走中、リーダーの華村敏夫だけが疲労凍死した。兄の死に納得のいかない妹の名菜枝は、遭難現場に居合わせたメンバーに不審を抱き…。真相に迫...
雪の炎 (光文社文庫)
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商品説明
魔の山・谷川岳を男女5人のパーティで縦走中、リーダーの華村敏夫だけが疲労凍死した。兄の死に納得のいかない妹の名菜枝は、遭難現場に居合わせたメンバーに不審を抱き…。真相に迫るごとに、奇異な事実が次々と明らかに!【「TRC MARC」の商品解説】
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流行作家としての新田次郎の姿
2017/04/19 05:34
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
改めて考えると、新田次郎作品で完全なるフィクションって初めてかも・・・。
ずっと、実話ベースのドキュメンタリー小説ばかり読んでいたかも。 それくらい、自分の中の新田次郎のイメージを覆される作品だった!
しかも雑誌『女性自身』にもともと連載していたものを全面的に改稿したものとのことで・・・ゴシップ週刊誌だと思っていたけれどそういうのも載せるんだ、ということでびっくり。 だから主人公を女性にしたのか!、ということも驚きのひとつ。
ほんとに新田次郎って、その当時の流行作家だったんですね。
谷川岳に向かった男女五人の混合パーティで縦走中、リーダーの華村敏夫だけが疲労凍死(今ならば低体温症での死亡)した。 ずっと山をやってきて、その危険性も十分承知しているはずの兄が一人だけ死ぬなんて・・・と納得のいかない妹の名菜枝は、遭難現場に居合わせたメンバーに不審を抱き、関係者に接触を図る。 更にはその遭難事件に興味を持つ謎の外国人が現れて、名菜枝は自分が今までまったく知らなかった山の世界に足を踏み入れることになる・・・という話。
さすがフィクション。 山、遭難を題材としていながらも、これまで読んだことのある<ベースは実話もの>とは文体からして違うような。 勿論、登山ルートや行程などは現実のものと差はないですが。
実在の人物の心情は安易には語れないけど、架空の人物ならばどう思おうが、どういう台詞を言わせようと自由だろう、という感じなのか、登場人物たちがやけに生々しい。
しかも読者の大半が女性であることを意識しているためか、“甘ったれた口調で他の人に話しかける女”や、“お嬢様育ちという割に、ちゃっかり打算的”みたいなタイプに非常に厳しい評価を! これって当時のフェミニズム?
それとは対照的に、凛々しき女性の代表として登場するのが主人公の名菜枝。 けれど彼女にも「自分はなんて執念深い女なのかしら」と内省させつつも、兄の死の真相を追う手綱は緩ませない。
ふーん、こういうのが当時の<よくある恋愛パターン>なのかなぁ。 すぐ結婚とつなげるところには時代を感じるけれど、それ以外は意外とそんなに変わってないかも・・・。
あらすじ紹介のところに“産業スパイ”という単語があって、さすがにそれってどうよと思ったのだけれど、社会人山岳会というものの成り立ちを考えたらありえない話ではないな、と納得。 そこにはこれまでのノンフィクションで積み上げられた取材力からこぼれたらしきリアリティが。
なんだかんだで結構一気読み。
ミステリという観点からいえば謎は途中でわかってしまって、後半は関係者がそれを認めるかどうかにかかってくるだけになってしまうのだけれど、その“裁判”を山でやるとか、人間ドラマ寄りになるところが新田次郎の本質はミステリ作家ではないとわかって面白かったです。
いろんな意味で、興味深いものがたくさん詰まってた。