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商品説明
就職率100%という高い評価と半世紀を超える歴史を有する5年制の高等教育機関「高専」。等閑視されてきた高専教育の内実、学生側の評価、卒業後のキャリア展開等について、大規模卒業生調査と論考から多角的に迫る。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
矢野眞和
- 略歴
- 〈矢野眞和〉1944年生まれ。東京工業大学名誉教授。東京薬科大学特命教授。
〈濱中義隆〉1970年生まれ。国立教育政策研究所高等教育研究部副部長・総括研究官。
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紙の本
制度設計は慎重にかつ大胆に
2019/01/24 13:08
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投稿者:怪人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昨年、朝日新聞の教育欄で高専に関する連載記事が掲載された。ロボコンで知名度を上げた高専の学生生活を中心に教育内容や教育環境などが8回にわたって紹介されていた。現在の高専生の姿がそこに描かれている。
そのような高専も制度創設50年が過ぎた。この本は高専の教育成果について卒業生へのアンケートデータ等を分析し、とりまとめて評価している。マイナーな存在は今も昔も変わらないが、毎年1万人、卒業生も50万人となった現在、データ数としても十分そろったということかもしれない。それでも同年代の1%の比率でしかない。
50年程も昔の話であるが、当時、高専の授業料は国立大学は勿論、某県では県立高校の授業料より安価であった。当時は教育費の経済性では格別だったといえる。現在は国立大学と公立高校の間のようだ。
高度成長期、産業界からの要請で技術者養成のため理工系の学部、大学の新設増設が相次いだが、さらに、短期間で中堅技術者を養成するため高専制度が創設された。卒業後は企業などから好評価を得て、就職率も高く安定していた。だが、企業に入ってみれば、2年早く大学卒並の技術者として迎えられたが、年齢が若い分安い給料で働くことになり、その差は縮まることもなく過ぎていったようだ。
5年間の一貫教育で完結するというシステムも進学希望には袋小路という隘路を同時にもっていた。技術科学大学の設置や専攻科の設置によって、既成の教育制度路線に繋げることができたことはよかったが、所期の高専の意義が薄れたといえないだろうか。専攻科の2年間は一体どのような意味をもつのだろうか。学士の称号を得るために高校3年+大学4年の教育制度に同調させるための時間とすれば、あまり有意なことでもなさそうだ。年齢主義の学歴社会に組み込まれたということだろうか。
本書では、3つの発見として、高専教育、大学教育から年齢主義的学歴、職業的無資格性を導き、その先にある生涯教育から学習歴社会の道を提案している。確かにそのような方向性かとは思うものの、そのことは教育制度を検討すれば見いだしうる結論ではないだろうか。また、一方で教育制度に限らず、制度設計がいかに難しいことかよくわかる。
大学進学率も50%に達し、比較すべき大学卒も多様化多層化してしまった。学力も能力も千差万別の多数の大学卒になってしまった。もう比較論をしている場合でもなかろう。以前は役目が終わった時点で廃止か大学への格上げで発展的解消すべきかと考えていたが、新たな時代の要請に対応していくために、高専の組織体制をどう活用していくかという方向で、今後の高専制度を考えていくことが賢明で現実的な方策かもしれない。
改めて高専教育を考える良い機会となった。