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イギリスの湖水地方で牧羊を営む傍ら、ユネスコのアドバイザーも務めるジェイムズ・リーバンクス氏の著書。
リーバンクス氏は、湖水地方で代々羊飼いを営む家系に産まれ育つ。幼少の頃から家業を手伝い、義務教育をリタイヤして家の後継ぎとなるのだが、もともと読書好きで教養があった事から大学入試を勧められ、オックスフォード大学へ進学してしまうという、少し変わった経歴の持ち主である。
羊飼いと聞いて何とも牧歌的な仕事だなと想像してしまったが、作品の中に登場する夏の飼料作りや冬の自然の過酷さ、そして優秀な群れを維持するための交配技術など、意外と大変な職業だと知った。また湖水地方はその美しい景観によって、非常に人気のある観光地らしいのだが、暮らしてみないとわからない厳しさがあるという面では、自分の住んでいる北海道と似ているのかもしれない。
本作には彼の日常の様子や、仕事に対する姿勢が随所に描かれている。世界中が生産性重視の方向に傾きつつある現代で、伝統と持続可能な生活を守るリーバンクス氏の価値観にとても感銘を受けた。いつの日か彼の農場を訪れてみたいものだ。
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まさにピーターラピットの湖水地方としかイメージのないw足しにとって、新しい、そして現実的なストーリーを教えてくれる本だった。
読むだけで知れることは非常に限られてはいると思うけれど、それでも具体的に羊飼いの日々について知る機会はそうないので、なんだか少し彼らの生活に密着できたような気がした。
いろんな生き方があると改めて思う。
血を見ることがない日々を送る私はおそらく、彼らにとってこの自然界や命についての全くの無知な存在なんだと思う。本当にそう思う。
学校で勉強できることがどれだけ限られているか、学校で学ぶことはもちろん大事だけれど、もっと大きい視点からこの世界について学ぶ機会はとても大事だと思った。
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羊飼いの現実を教えてくれる。ファーマーは良い羊だけを残してあとは市場に流す。それによって、来年生まれる子羊は良い血統になっていく。湖水地方のファーマーたちは帰属意識を持っていて、フェルで生活する厳しさから生まれてくるのだそうだ。都会で便利に暮らす人々にはもつことはない。この帰属意識は著者が死んでも続いていくもので、それがなんとも素晴らしい。
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むちゃくちゃおもしろくて、途中で本を置くことができず、久しぶりにガツガツと貪り読んだ。
タイトルだけ見た時、牧羊とか酪農に興味のある人向けのニッチなニーズを狙った本なのかなと思ったけど、この本が訴えていることはもっと時空的に広範囲にわたっていて、何よりも今後の社会の在り方を考える上で外せない問題点を指摘していると思う。私は全然知らなかったけど、サンデー・タイムズやAmazonでベストセラーになったというのもうなずける。
まず、導入部の「Hefted」の章で、著者の言わんとすることと、その展開の仕方にすっかり魅了されてしまった。最近とみに思うけど、英語圏の人の論理の進め方はほんとにうまい。導入部でちょっと笑える具体的なエピソードをちりばめながら、端的にこの本がどういう方向へと進むかを伝えている。この章だけでも独立して完成されていると思った。始まりから数ページにして、すでに激しく心揺さぶられてしまった。
「Heft」という語は、イングランド北部の方言だそうで、羊たちを高原の牧草地に慣らし、定住させる、という意味だとか。湖水地方の厳しい自然の中で育つ羊たちは、子羊のときに母羊から自分の属する場所、属する山を教え込まれて育ち、決してほかの場所に移動しないんだそうだ。その帰属意識は非常に強くて、1、2年ぐらい別の場所で過ごさせても、元の山に戻すと、羊たちはまっすぐに自分の居場所へ戻っていくという。
著者の経歴を見ると、オックスフォード卒、となっていたので、読む前に私は勝手に、幼い頃から勉強好きで頭が良く、一流大学を出て一流の頭脳労働についたが、都会生活に疲れ果てて故郷の村に戻って父の仕事を受け継ぐ話なのかな?と予想したのだが、途中で、事実はそれとはまったく逆だと分かった。彼ははじめから自分の生まれた場所と家族の仕事に強いアイデンティティ、帰属意識を持っており、それはまるで土地の羊たちと同じくらい確固として彼の中にある。実際、高校の卒業資格試験には落ち、ドロップアウトし、嬉々として家業を手伝い始める。(途中で学校をやめて家業を継ぐことは当時土地の人間にはごく普通のことだったようである)
ではオックスフォードはどこで登場するのかというと、その後彼が直面した様々な諸問題からの逃避というか、解決策というか、選択肢を広げる方法、みたいなものがオックスフォードを目指すことだったようです。
そこへ至るまでの学問への「目覚め」の過程も感動的。
私自身は田舎暮らしを当然のように「未来のないもの」と切り捨てて都会に出た典型的な人間だったので、逆の人もいるのか、と本当に驚いた。
湖水地方には大昔に一度訪れたことがある。
友人がツーリスト・インフォメーションに置かれていたハイキング案内を見つけて、二人で2コースくらい歩いたが、この案内書が素晴らしかった。手書きの、簡単だがなんとも言えずほのぼのとしたタッチの地図が描かれていて、この地図がないと進むのをためらってしまうような、狭い農道や石垣で区切られた草原を歩くことができた。途中で、まさにピーターラビットそのものの野ウサギも見た��
その時の私は著者がたびたび俎上にあげる「典型的なツーリスト」の一人で、確かに、地元の人たちがどのように暮らしているのか、ましてや羊飼いの暮らしについてなどは、その旅行では一度も考えなかった。
羊を見ても背景の一部にしか見えず、羊飼いというのは「アルプスのハイジ」のペーターで、一日のんびり草原で寝ている子供、というイメージで、まさかあの美しい湖水地方の風景を何世代にもわたって作り上げた人たちだという認識はもちろんなかった。
でも、地図を頼りに、ところどころにある小さな石段を登って石垣を超えながら、「この石垣と石段は何のためにあるんだろう? 石段は地元の人が自分たちのために作ったはず」と思ったのを強く覚えている。
この本を読むとあの石垣を作り、メンテしている人たちの暮らしが生き生きと描かれている。
ほんとにおもしろかった。
著者の仕事への愛をひしひしと感じた。
でも想像を絶する大変さ。
羊飼い=ペーターののんびりしたイメージはあっという間に消え去った。(そういやペーターも、羊に危険が迫った時はキリッ!となってテキパキ働いていたけども)
著者をオックスフォードへと導いていった根本原因である社会の趨勢というか、効率社会の波、そういうものばかりを優先すると、あの風景はあっという間になくなってしまう、という危機感は、耕作する人のいない田畑を持て余している故郷を持っている私にとっても目をそらしている事実でもあり、考えるのが恐ろしいことである。
よく「手つかずの自然」っていうけど、そういうのは、ほんとは人の手がきちんと入っていて保たれるものなんだよなぁ。でも、私は農作業のことは何ひとつ知らないし、最低限どんな手入れが必要なのかもわからない。
<おまけ>
著者のツイッターにアップされている羊(たぶんハードウィック種)の顔を見て、「何かに似ている!」と激しく思った。
なんだっけ?と考えていたのだが、分かった!
「カードキャプターさくら」の「ケロちゃん」にそっくり。キュートで、極寒の冬をものともしないたくましさを持つ生き物とは思えないおトボけ感。
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イギリス湖水地方の600年以上続く家系の羊飼い。
オックスフォード大学で学んだ著者が、一家の歴史と生活を、
厳しくも豊かな地域の自然と共に綴る。
Hefted 夏 秋 冬 春
イギリス湖水地方は世界有数の観光地であると同時に、
地域に住む者たちの生活の場でもあります。
特に、遥か昔から営まれていた羊の放牧。
羊飼いの家系に生まれた著者による、地域の歴史、家族の歩み、
共同体の有り様、そして羊と共に歩む生活等を綴っています。
夏秋冬春と、巡る季節の中で営まれ、語られるのは、
牧歌的なんて言葉が夢のような、実際の厳しい羊飼いの生活。
羊に寄り添うことの過酷さ。その中での祖父との絆と祖父の死。
中等学校を中退してからの自暴自棄、父との諍いと和解。
読書による開眼がオックスフォード大学へ至る道を築く。
ロンドンでの職務体験で、過酷な生活の都市住民の、
風光明媚な場所に逃避したい気持ちを知る。
口蹄疫の悲劇と再生。農場はすべての始まりであり、終わり。
父の病と子どもたちの成長。そして繰り返される四季と生活。
Heftedは、羊の群れをフェルの共同放牧地に定住(ヘフト)させると
いう意味だそうですが、湖水地方の住民たちの帰属意識であるとも
考えました。著者自身も大学で学び、外の世界を知り、
ユネスコの仕事をこなしながらも、農場へ戻り、羊と共の生活を
送る日々。そこが自分の場所だから。私の人生だから。
羊飼いの仕事と生活の詳細と、どんな土地であろうと
生活する者たちの歴史と有り様を知ることの大切さを
教えてくれる、奥行きの深い内容で良かったです。
また、ビアトリクス・ポターの伝記を読んでみたいとも、
思いました。
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なかなか読み進めるのが難しかった。羊飼いは血統を混合させて優れた羊を育てることに非常に苦心していて、世間から優れた羊を育てたことへの評価や尊敬がある。貴族社会や血統書を重要視する文化はこうした家畜を育てることから育まれたものなのかな、と感じた。羊飼いの日々の暮らしが詳細に描かれていてハイジ好きとしては興味深かったが、世界観が少し暗め。祖父と孫の関係性が近く、父と子はライバル視してしまう。自分が子どもを産んで父になり、また実感していく家族の関係性も面白い。
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イギリスの湖水地方で伝統的に羊飼いをしている家庭にうあまれた著者による羊飼いの生活の話。
季節ごとに羊飼いが何をしないといけないかという話と著者の家族や著者の半生が語られる。
オックスフォード大学に一年発起して合格する話は面白かった。
著者は羊飼いに誇りをもっており、これからの羊飼いのあるべき姿を探っている。同時に工業化社会や資本主義社会に対するアンチテーゼの提案ともなっている。オックスフォードで学んだ著者がこのような作品を書いたことの意義は深い。次回作も早く邦訳が出て欲しい。
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私は小川のそばに横たわって手のひらで水をすくい、一気に咽喉の奥に流し込む。これほど甘く純粋な味の水はほかにない。
それから仰向けになり、悠々と流れる雲を眺める。フロスは小川で水浴びして体をひやす。一方、のんびりと過ごす私を見て驚いたタンは、体に鼻をすりつけてくる。動いていない私を見たのは、きっとこれが初めてだろう。それにいま、タンは人生で初めての夏を経験しているのだ。
私はひんやりとした山の空気を吸い込み、空の青に白いチョークの線を引く飛行機を眺める。
雌羊は岩山を登りながら、うしろの子羊に呼びかける。
ほかに望むものなどない。これが私の人生だ。
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エッセイという感じ?かと思ったら、羊飼いとして生きた人々の長い物語を読んでいる気分になった。
この本を取らなければ知らない事を知ることができたと思う、例えば羊の品評会がある事、そこでそれぞれの農場が評価される事、群単位での売り買いもある事、そして羊が思ったより自然に死んでしまう事、繋がりが何よりも大切な事など。
単純に読み物として面白かった、、下手に押しつけの考えや少しの虚栄心のかかった文章もなく、淡々と事実と事象を書いてくれて、非常に読みやすかった。
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読み始めてから心の中がざわついてしょうがなかった。
理由は訳者あとがきと解説を読んで腑に落ちた。
都市生活を楽しんでいると思っているが、心の奥底では、何かが足りないと感じているのだ。
表紙に惹かれて手に取ったが、思わず、これまで読んだ本の中でもかなり上位に来る本だった。
訳者あとがき
「私たちが本書から受け取るのは、現代の生活から失われた、圧倒的な生の息吹である…私たちはあらためて自らの生き方を問い直すことになる」
解説
「著者は、多くの人が『こう生きたい』と心のどこかで願っている生活を静かに継続させている。その事実は、ある種の憧憬と共に、人の心をゆるやかに温めてくれるのだ。」
訳者と解説者の文章も好きで、
読みたい本がまた増えてしまった。
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イギリスのシェフィールドという街に半年ほど滞在したことがある。シェフィールドに滞在する前にもイギリスに行ったことはあったが、仕事でロンドンに行っただけのことであり、ロンドン以外の街、また、イギリスの田舎の光景を目にするのは初めてのことだった。それは、目を奪われるとても美しい光景だった。
シェフィールドの郊外には、ピークディストリクトという名の国立公園が広がる。街を出るとすぐに緑に覆われた丘陵地帯が広がる。日本のような深い森はあまり多くなく、牧草地帯だ。そこに、羊が放牧されている光景もよく見かけた。日本にはない美しい光景をとても好きになった。
シェフィールド滞在中に、本書の舞台になっている湖水地方に小旅行に出かけたこともある。ピークディストリクトと同じく、とても美しい場所だった。
本書は、湖水地方で羊を中心とした牧畜を営む筆者が、湖水地方で牧場を営むことがどういうことなのかを、四季に渡っての、また、子供時代から今までの経験を綴って示した本だ。そこには、激しい喜怒哀楽の全てがある。
私がピークディストリクトや湖水地方で見かけたのは、のんびりと草を食む羊たちの群れだった。その群れを維持することが、どれだけ大変なことなのかを初めて知ることが出来た。
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#読書記録 2023.1
#羊飼いの暮らし イギリス湖水地方の四季
#ジェイムズ・リーバンクス
#ワシントン・ポー シリーズのミステリを読んで、湖水地方の自然に興味を持ったので本書を読んでみた。自分の中の湖水地方の牧歌的なイメージが覆った。
過酷な自然と対峙しつつ、数百年前から変わらない牧羊の仕事を続ける親子三代の物語。彼らの生活は自然という大きな存在の一部であり、何世紀も続く羊飼いの伝統を守り繋ぐ鎖の一つでもある。
湖水地方の美しい景観や様々な動物たちの様子が、随所に具体的に描かれる。生まれ育った場所への、著者の限りなく深い愛情を感じる。
#読書好きな人と繋がりたい
#読了
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イギリス湖水地方で羊飼いを営む暮らしを、自分の生き方と共に祖父母、父母、また妻子どもへと続いていく中で語られる。羊へのこだわり、愛が確かにあってそしてそれはまた生産者としての厳しい面も持つ。自然描写も素晴らしく、時系列が記憶の中で蘇るままにあっちこっちと巡るのも、全てが溶け合って満ち足りているような感じでとても良かった。
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自然は美しく人生を豊かにしてくれるけれど、決して優しくはないと感じました。
羊飼いの暮らしは便利、快適、効率的とは言い難い。しかし本を読めば読むほどこの場所での暮らしに憧れの気持ちが湧き上がっていました。
後世へとバトンを繋ぐ役割を担う生き方に、人へ繋ぐだけではなく、見ている自然そのものを守る大きな役割があるのだと思いました。
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なんでこの本を選んだのか全然分からないんだけど笑
羊への愛が深いな。読み手の私まで、羊の事が気になって仕方なかった。
湖水地方の季節の移り変わり、各季節の美や苦、それが羊、羊飼いへ与える影響、わたしが生きている世界とは全く違う暮らしを見れた。
この本選んで良かったな。