紙の本
人も自然も、なるように
2023/12/22 22:41
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投稿者:くり坊 - この投稿者のレビュー一覧を見る
何年か前、別海に行った際、チーズを買いに川崎牧場に寄ったら、娘さんが作家と知り、そこから本作者の作品を読み始めた。命の大事さ、それは人間も他の動物も、植物も、自然全てにとって同様であり、脈々と後世に伝わっていく。その中で、一見、人間の力は、自然に及ばないが、それでも自然に対して、何らかの関わりや影響を与えるのも事実で、共生していく事を感じさせられる。最近、熊や鹿の被害も大きいが、どちらが悪いとかでも無く、それも自然の中での出来事と感じる。そして、人も自然も、なるようになっていくんだと思う。
紙の本
凄惨な出だしに反し、全体として北海道という厳しい環境の中で逞しく生きて来た人間と馬との抒情詩的作品でした。
2018/12/23 20:38
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投稿者:ナミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
凄惨な出だしに反し、全体として北海道という厳しい環境の中で逞しく生きて来た人間と馬との抒情詩的作品でした。後半が大きな事件や出来事に乏しく、少々物足りなさを感じるものの、あくまでも酪農業を営みながら執筆する新人作家の気負いのない作風には好感が持てる。馬に向ける視線の温かさ、厳しい自然と共存していこうという姿勢が感じられるのも嬉しい。標題に用いられた「颶風」<注-1>という言葉を良く知っていたなと感服。
別海町で酪農(緬羊飼育)を営みながら執筆する著者のデビュー作で、2014年三浦綾子文学賞受賞作。
紙の本
3世代にわたりつながるもの
2018/10/23 19:26
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投稿者:やす - この投稿者のレビュー一覧を見る
はじめはこの話はどうなるのか、とても心配しながら読み進めた。
馬事文化賞受賞作品とのことで、映像化に耐え得る作品なのか、映像化した場合のスケール感などを考えつつ読んでいったが、一般受けする映画にはなり得ないない作品だと思うに至った。
しかし、それぞれの世代の話を効果的に描くことで、時代毎の背景を対比させつつ表現することで、面白い映像作品にもなり得ると感じた。
オヨバヌものへの畏敬の念は、いつになっても忘れてはいけない。何事も征服できると思いあがることは、人間の大いなる勘違いであると知らしめられた。
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違う本を目当てに本屋に行ったのだが、表紙に馬の絵があって、帯に”JRA賞馬事文化賞”とあれば、こちらを買わない手はない。
明治の時代、東北の寒村から北海道に渡った男の、その母から続く6代に亘るお話。
全編に馬が絡むが、表紙の絵には魅かれるよね。
今年は『北海道』と命名されてから150年目にあたるということで、先日、式典も行われていたが、北海道開拓の歴史を紐解けば、『昭和時代でさえ、開拓民は縄文時代さながらの暮らしを強いられたことが分かります』との記述があり、明治の開拓民の厳しさは恐らく今の我々の想像を遥かに超えるものであっただろう。
そうした時代の中、雪山で遭難し乗っていた馬を喰って生き延びた母から生を受けた捨造が、その馬の血を引く馬とともに北海道に渡るところから始まる第一章。
根室の地まで流れ、そこで大地を拓き生きる捨造。そこにはいつも畑を耕し昆布を運ぶ馬の姿があったが、世話する捨造と馬たちの姿を見て、孫の和子もまた馬とともに生きる第二章。
時代は飛び、そのまた孫のひかりが年老いた和子の記憶をきっかけに、捨造・和子の代に孤島に残した馬を訪ね、家族と馬の系譜を収束する第三章。
6代に亘るお話を240頁に収める大胆な省略の中で、焦点が当たるエピソードの描写が際立つ。
鬱蒼とした森の佇まいやそこに生きる動物たちの息遣い、吹きつける海からの風、全てを覆い尽くす濃い霧といった彼の地に特有の自然が目に浮かび、その中で、どんな境遇でも生き抜く馬たちが健気。
物語に引き込まれるとともに、在来馬や近代化の過程における馬匹改良に触れられた箇所はとても興味深く読んだ。
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この中篇のどこに圧縮されていたのかと驚くほどに力強く、壮大。
人の力が及ばぬ厳しい自然を前にしては何事も及ばず、ただ静かに畏怖の念を抱き、生きる。
ひかりが見た光景は私の心にも焼きついている。
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手に取ったのは、JRA馬事文化賞受賞作だからではなく、この本に呼ばれたから。
明治、昭和、平成に渡って描かれる、馬と人の物語。
とくにミネと和子の話には圧倒されて、これであれば240ページではなく、もっと長編にできたのでは?
と思ったけど、そうすると「人の話」になってしまう。
あくまでもこれは、馬と人の関わりの話、そして人間が及ぶことのできない、自然を描いた話。
だからこの分量でいいのだと、ひかりの話を読みながら思った。
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明治-昭和初期-平成
福島-根室-十勝
馬と共に生きた、ある家族(一族)の物語
オヨバヌトコロ
人智を超えた世界がある
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生き延びるための行動が極めてリアルに熱く書かれていて(手紙として書き残せるかは突っ込んだらいけない部分)、小説としての凄みを感じた。
そこで終わらず、世代を重ねて現代に至る展開も面白い。ユルリ島にも興味がわいた。
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北海道 道東の酪農家で育ち、羊飼いをしていた著者が描く、馬をめぐる骨太な物語。
6世代に渡る物語だが、章立ては明治の開拓移住前の女、昭和のその孫娘、平成のそのまた孫娘と3人の女性を中心に書く。
家族と馬の物語であり、根室の土地の物語でもある。
道東のあの土地に暮らした生活体験に根ざした魂が感じられ、非常に読み応えがあった。
人間は自然のちからに「及ばぬ」。及ばぬ、と思うのは常に人間が自然に挑んでいるからこそであって、他の動物はそうではない……というのが、キーになっている。著者はインタビューで生活から感じたことと述べており、なるほど書き方が実感あってのものと見え、とても魅力的だった。
6世代分が文庫1冊になっているので、当然、書きたいところしか書いていない感はある。大河作品にもできる素材だと思った。
迫力があり面白い。
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開拓期の北海道を舞台にした、馬と人との物語。
馬への愛情と過酷な暮らしのコントラストが強烈。
無人島で人と馬が心通わせる場面が感動的だった。
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馬と人の、何代にも渡る物語。
明治時代、東北地方でのミネの壮絶な体験とそれを知る捨造。
昭和戦後、根室地方での捨造と孫の和子の、馬との生活。
平成、大学生のひかりが祖母和子のために動く、そして出会った馬との交感。
短編のように、次の時代に移る話に戸惑うものの、最後まで読んで、長い長い物語を読んだような満足感があった。
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半年程前に著者の「肉弾」を読んで以来、著者の作品は2作目の読了となりましたが、またステキな一冊と出会うことが出来ました。
明治から平成までの約120年に渡る時の流れと共に6世代もの間の人と馬の関わりを描いた物語。
3章で構成されていましたが、それぞれの章で描かれる人と馬は歴史を紡いでいきます。
時は明治、場所は東北。
離乳が済んだ頃に小作農家へ養子に出された捨造は18歳の青年へと成長し、時をみて生家である庄屋へ赴き母を訪ねる。
捨造の母は家の奥の部屋から外へ出ることも無く、気がふれたかのような生活を送りながら捨造との僅かな時間を楽しみに過ごしていましたが、ふと目にした新聞記事にて捨造は見たこともない北海道の開拓の旅に出る事を決意し、母にその事を告げる。
捨造への餞別として母が託した紙に書かれていたのは、庄屋の娘ミネと小作農の吉治の許されざる恋から始まるストーリーは吉治とその子を宿したミネ、吉治の愛馬アオが駆け落ちし愛を遂げようとする姿であり、母親の過去と自らの出生の秘密。
激怒したミネと父親の命により追い詰められた吉治とミネ。
ミネと腹の中の我が子を救おうとした吉治は「逃げれっ!生き延びれっ!絶対にっ!」と叫びながらまさにその身を挺す。
アオにしがみつき、逃げ出したミネは山で雪崩に遭いアオ共々雪の中へ閉じ込められる。
誰も助けに来ない閉鎖された僅かな雪の隙間で骨折したアオと共に命の火が消えようとする中、アオに自らの血を与え、自らはアオの血肉を喰らい、生き延びたミネとその後生まれた捨造。
《この子のからだはアオのからだからできている》
《私の子で、吉治の子で、そしてアオからできた子》
こんな展開で始まった第1章で既に本作にのめり込むことに。
続く第2章では、北海道の根室地方に移り住んだ捨造が馬を飼いながら暮らし、孫の和子が捨造から馬の育て方を習いながら愛馬ワカを育て生活する姿が描かれています。
そこで起こる哀しき悲劇。
地震により崩壊した花島に大切な馬達が取り残され、どうすることも出来ず、徐々に生活が苦しくなってきた家族は和子の母の出生地でもある十勝平野に移り住むことに。
そして終章となる第3章では脳梗塞で倒れた和子と孫のひかりの時代へと進む。
奇跡的に意識を回復した和子が発した「馬ぁ、あれ、まだおるべか」。
大学生となっていたひかりは幼少期に和子から無人島に取り残された13頭の馬の話を聞いていたことを思い出し、祖母のタンスからミネが書いた手紙を見つけ、何とかその馬の子孫を救えないかと花島へ向かう。
最後の一頭となって生き延びていた馬との再会。
時を超えた感動作でした。
説明
内容紹介
生命は結ばれ、つながってゆく--人と馬、6世代にわたる交感の物語。
明治期、東北。許されぬ仲の妊婦ミネと吉治。吉治は殺されミネは逃げる途中、牡馬アオと雪洞に閉じ込められる。正気を失ったミネは、アオを食べ命をつなぎ、春、臨月のミネは奇跡的に救出���れた。
生まれた捨造は出生の秘密を知らぬまま、座敷牢で常軌を逸しているミネを見舞い暮らす。アオの孫にあたる馬と北海道に渡ることを決心した捨造は、一瞬正気になった母から一切の経緯が書かれた手紙を渡され、今生の別れをする。
昭和、戦後。根室で半農半漁で暮らす捨造家族。捨造は孫の和子に、アオの血を引く馬ワカの飼育をまかす。ある台風の日、無人島に昆布漁に駆り出されたワカとほかの馬たちは島に取り残される。捨造と和子はなすすべもない。
平成。和子の孫ひかりは、和子に島の馬の話を聞かされていた。ひかりは病床の和子のために島にいる馬を解放することを思い立ち、大学の馬研究会の力を借りて、野生馬として生き残った最後の一頭と対峙するが……。
内容(「BOOK」データベースより)
明治の世。新天地・北海道を目指す捨造は道中母からの手紙を開く―駆け落ち相手を殺されて単身馬で逃亡し、雪崩に遭いながらも馬を喰らって生き延び、胎内の捨造を守りきった壮絶な人生―やがて根室に住み着いた捨造とその子孫たちは、馬と共に生きる道を選んだ。そして平成、大学生のひかりは祖母から受け継いだ先祖の手紙を読み、ある決意をする。6世代にわたる馬とヒトの交感を描いた、生命の年代記。
著者について
●河崎 秋子:羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊飼育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ緬羊を飼育・出荷。2012年「東陬遺事」で北海道新聞文学賞(創作・評論部門)受賞。2014年に三浦綾子文学賞を受賞した『颶風の王』を15年KADOKAWAより単行本として刊行。同書で2015年度JRA賞馬事文学賞を受賞した。近著に『肉弾』がある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
河〓/秋子
羊飼い。1979年北海道別海町生まれ。北海学園大学経済学部卒。大学卒業後、ニュージーランドにて緬羊飼育技術を1年間学んだ後、自宅で酪農従業員をしつつ緬羊を飼育・出荷。2012年「東陬遺事」が北海道新聞文学賞(創作・評論部門)を受賞し注目を浴びる。14年「颶風の王」で三浦綾子文学賞を受賞。翌年7月同作が単行本刊行され、デビューとなった(15年度JRA賞馬事文化賞受賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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友達に借りて読んだ作品。
明治時代の話で、文体も読みづらそうと思ったけど…読みやすく、内容にもグングン引き込まれていった。捨造の母が雪崩被害に遭い、馬と約1ヶ月ともにするシーン…自分には衝撃的すぎて、一生頭から離れることはないだろう。自分だったらどうするかと考えるだけで胸が苦しい。
第2章のお爺さんになった捨造が海にお酒をまくシーン…捨造の立場になって、色々な大切な存在をなくしたことを思うと本当に悲しい。切ない。
結果的に、孤島で一頭で生活する鹿には、最期までたくましく生きてほしい。
この作品読んで、本当に良かった。友達、ありがとう!
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淡々としているのに、どこか圧のある文章だったな……。東北、北海道の厳しい冬を感じる。
こういう作家がいたんだなあという驚き。
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極寒の、根室の海風を頬に感じるような、力強い文章。北海道の自然とそこに暮らす人達の過酷な日々。及ばぬものを受け入れ、ただ生きる人達。
身に迫る、心揺さぶられます。