紙の本
musica celeste
2019/02/22 22:23
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
従来のジョバンニではなく、カムパネルラの視点で語る「銀河鉄道の夜」ということで期待して読んでみましたが、童話というよりは「宮沢賢治論」の一冊です。(“混線”ということで、「春と修羅」などの心象スケッチに断章が織り込まれます)
「銀河鉄道の夜」の成立過程かど興味深い部分もありましたが、残念ながら私が期待していたような内容ではありませんでした。
なおmusica celesteとはイタリア語で<妙なる調べ>、本書に出てくる言葉ですが、原作である「銀河鉄道の夜」に相応しい表現ではないかと思います。
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物語と思ったら銀河鉄道の夜を深く読み解く本でした。
取材班とカムパネルラと中原中也(本の中では宙也)が物語の中の説明や年譜を基にした解説をします。
童話しか読んだことがなかったので、実の宮沢賢治さんの姿を見ることができて楽しかったです。
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長野まゆみの最新作は、名作『銀河鉄道の夜』と宮沢賢治をモチーフにした幻想小説。
カムパネルラの視点から見た『銀河鉄道の夜』という設定は面白い。そこに宮沢賢治の詩やエピソードが絡められている。但し、宮沢賢治に強い思い入れがある読者の方がより楽しめるのではないかなぁ。
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ちょっとよくわかりませんでした。
宮沢賢治の童話や詩って
ちょっとぼーとしていて
クリアではないというかぼやっとわからない
部分があるけれども、なんとなく気持ちいいというか
いい感じというところが好きなのですが。
そこを分析するような手法で、しかももっとよくわからない
状態になっている感じがして、ちょっとあまり
よくわからない内容だったと思います。個人的には・。
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初出 2017〜18「文藝」
デビュー30周年記念小説と銘打たれているが、
小説の形をとった『銀河鉄道の夜』の創作過程と背景の分析と、それに関わる中原中也論と言うべきか。
ジョバンニは生還するのに、なぜカムパネルラは帰らなかったのか、その理由を知りたいというのが動機で、銀河通信の記者松本がカムパネルラにインタビューするのだが、時にカムパネルラを遮って自分の意見を述べ、中原"宙"也が割り込んでくる。ジョバンニは少年期の賢治で、カムパネルラは青年期の賢治なのだという。
それにしても「銀河鉄道の夜」の原稿が第1次〜第4次まで残っているとは知らなかった。
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題名はカムパネルラ版ということだが,中原中(宙)也氏、宮沢賢治の恋愛事情を語るといった程.中原中也がかなり出張ってきて,銀河鉄道の内容を詳細に検証している割に,印象が少しぼやけた感じがした.というより,題名から受けた印象とかなり違った.
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「銀河鉄道の夜」をカムパネルラ視点で読み替え、と思って読むと、思っていたのと違う…ということになる。
先に出た『銀河の通信所』の続編、あるいは語りつくせなかったことの拾遺版といった感じだ。
“銀河通信”の記者が、カムパネルラの魂と交信して、「銀河鉄道の夜」を語り直してもらう企画という形をとる。
小説に分類されているが、作者の宮沢賢治研究のまとめの書だと思う。
素人の妄想は妄想で終わるが、作家はこうして考察を尽くした結果、作品に昇華出来るのだから素晴らしい。
作者は、「銀河鉄道の夜」は少年二人の物語であるのに、ジョバンニだけの視点で描かれるのは不公平との思いを抱いたらしい。
賢治は病などの理由で、作品を完成できなかったと考え、少しでも補完したいとの思いがあるようだ。
また、現実世界に戻ったジョバンニと違い、カムパネルラは“神視点”“俯瞰”で、生きているジョバンニには見えないものを見ることができ、語れる。
そうやって作品を読み解こうというのである。
作品は、「銀河鉄道の夜」の目次にしたがって、少しの引用文の後、カムパネルラの心情などが語られるが、ときどき【混線】と称して、N氏が割り込み「銀河鉄道の夜」ではなく、宮沢の恋を語りたがる。
長野氏は中原中也に傾倒し始めたのだろうか。
自分で読み解くには難解な賢治の詩を、背景を踏まえて載せてもらえるのはありがたい。
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あぁついに読み切ってしまった。
とても素敵で読み終わるのがイヤで随分時間をかけて読みました。
単純にカムパネルラ視点の銀河鉄道の夜かと思いきや、物語の登場人物であるカムパネルラが著者である宮沢賢治を賢治先生と呼び、解説してるんです!
また解説者は他にもいて、中原宙也と言うんです。これまた飄々とした雰囲気が素敵。
宮沢賢治好きな長野まゆみだからこそ書ける作品だなぁと思いました。
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小説の形をした宮沢賢治(と中也)研究。
賢治の心象スケッチ(詩)や原稿メモを読み解いく。後世このように恋心を暴かれるのはつらいことだなぁ。
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表紙と装丁がとっても素敵。
宝箱みたい。
そして、帯に書かれた煽り文が、
なんだかどきどきしました。
ジョバンニの旅は終わっても
カムパネルラの旅は続く…
内容は、そうだな、と思うところもあれば。
どうかな?、と思うところもありました。
まぁ、そういうところも含めて私は面白かったですけど。
自分の中だけにある銀河鉄道の夜の世界が誰にでもあるでしょうから、それがちょっとでもこわれてしまうのが嫌な人はあんまり読まないほうがいいのかも。
と思いました。
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カムパネルラの視点から、「銀河鉄道の夜」を語り直す…だけでは終わらなかった。
もっとファンタジーで、きらきらしたかんじかと思っていたのですが、中原中也(宙也?)さんの電波妨害による宮沢賢治という人の解釈とか、なんかもう小説というよりは論文みたいでした。
読後感としては、カムパネルラよりも中也さんの印象が強かった…
これはこれですごく面白かったですが。
ジョバンニが幼い頃の宮沢賢治の姿であり、カムパネルラは青年時代(恋をしていた頃)の自己投影、という説は、なんというか、そんな見方があるのかと、もう一度、「銀河鉄道の夜」を読み直したくなりました。
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銀河鉄道の夜を介した、宮沢賢治の紹介本。
手に取ったきっかけは、装丁の美しさから。
銀河鉄道の夜のリメイクを期待していたが、
カムパネルラを交えた上の、
考察・評論という内容に少しがっかり。
けれど、宮沢賢治史と重ねた考察は面白く、
改訂を重ねるごとに移り行く内容に、
彼の心情を近くで感じているような不思議な感覚がある。
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紀元前2200年に生きた人や
紀元前1000年に生きた人がいて、
彼らはそれぞれの時代に正しいと思ったことを述べ、
その考えを史実として書き留めました。
それが歴史であり地理であるとその人はいいます。
つまり歴史も地理も、
その時代を生きる人のためにあるのです。
神々が本当に存在したのかどうか、
岩が天から降ってきたのかどうかを、
後世のぼくたちがとやかく云うことに
あまり意味は無いのです。
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初期形第三次稿では、
歴史と地理について、このような語りがあったという。
星座だって同じだろう。
星を平面と捉えて線で繋いだところで、
実際の奥行きは計り知れないのだから。
表現は違えど、彼が描く自由はたしかに遺されている。
本書を通して、改訂の過程を楽しむという、
銀河鉄道の夜の新たな読み方を知った。
また、所々の 春と修羅 の引用も物語を煌然とさせる。
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薔薇輝石や雪のエッセンスを集めて、
ひかり気高く輝きながら
その清麗なサファイア風の惑星を
溶かそうとする明け方の空
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純粋で幻想的な描写でありながら写実的、
光の筆で描かれる景色は、
触れた瞬間、それまで文字だったことを忘れるほどの、
恍惚さと儚さを併せ持つ。
宮沢賢治を作家ではなく、芸術家と感じる美しい一節。
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カムパネルラからの視点からの銀河鉄道を紐解く……という形だが中原中也が俺の方が宮沢の事をよぉく知っているんだぜとインタビューに乱入してくる。
むしろ中原中也が途中からメインの語り手になりつつある。
しかし、太宰治さんの「モ、モ、ノ、ハ、ナ」があって何度みてもこれは笑ってしまう。
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「銀河の通信所」の続編みたいな。でもそれに比べて読みにくさは減った感が。カンパネルラ目線を借りて、宮沢賢治氏自身の内面を(主に恋)抉り出す感じ。著者様のファンだけど、その好きな作品を読んでいる感が薄いのがちょっと。「賢治先生」みたいのを期待していたんだけどな。装丁の美しさは流石。文庫版でなく、単行本で装丁ごと作品を楽しむのが正解だと思います。
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推敲段階の銀河鉄道の夜から読み解く宮沢賢治の心境みたいなものをカムパネルラが語る。
途中で中原中也なんかが出てきたりして、友人としての視点で語る。
作者の私生活と作品の対比がわかり、それはそれでなるほどなと思うのだが、もう少しほかの作品も含めて読み込んでいればもっと楽しめたと思う。