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投稿者:エムチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
だから、幻想短編集といわれるのでしょうか。いえ、ファンタジーというと、もっと明るい感じだし。どれも、かなり、インパクト大きいです。それと、重い感じがします。
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魅了される色濃く美しい文章で、昏く深いところから浮かび上がってきた見たくない気持ちをまざまざと見せつけられた気がしました。
厭ではなく、深淵を覗いているように。
じわじわと染み込んでくるものから、ラストでくるっと世界が変わるものまで様々。
皆川さんの世界は、今より前の時代を舞台にしていても普遍的な感情の気がします。でもそれがこんなにも美しい物語に昇華されているので読みたくなります。身体的にも精神的にも、残酷だけど。
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2001年に集英社文庫から刊行された幻想短篇集が復刊。
皆川博子の短篇集の中でも『結ぶ』と並んで評価の高い1冊で、入手困難が解消されたのは嬉しい限り。また、巻末の解題によると、『愛と髑髏と』も2020年に角川文庫から復刊するようで、そちらも待ち遠しい。
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表題作含む8編短編収録。皆川博子さんが紡ぐ幻想的な物語は絢爛豪華な闇色。死と血と官能に彩られた美しい漆黒の花が誘うように咲き乱れ、蔦が繁るようにして物語を織り上げる情念が読み手を絡め取る。どの作品も絶品。甲乙付け難いけれど「文月の使者」が一番のお気に入り。一度読んだらもう戻れない皆川ワールド。暗黒耽美な世界をぜひ。装丁も美しく、飾りたくなってしまう一冊。
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幻想文学とはどんなかな、と気軽に手に取ったものの、最初の二行
「指は、あげましたよ」
背後に声がたゆたった。
からもうにおい立つ霧、湿気、妖しい気配に呑まれる。
大正~戦前くらいが時代設定らしいけれど、お金持ちのお話が多くてそのゆとりある暮らしと文化が、相応しい格式と美しさを持つ文体で丁寧に綴られている。お妾さんにお手伝い、乳母等が大勢という現代の私たちには馴染みのない暮らしがにおいや光を伴って目の前に易々と立ち上がってくるその力量、畏怖の念を抱くばかり。
しかしそんな確かな生活の描写がむしろ話の妖しさ、危うい官能(直接的な表現はないのに!)、夢とうつつ、死と生がぐるりぐるりと交じり合う恐ろしくも心地よい感じを演出しているのが本当にすごいところなのだろう。
私は「花溶け」がロマンティックで特に好きだけど、どのお話も美しく気がくるっていて素敵。
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皆川博子二冊目。前回読んだ『倒立する塔の殺人』よりも幻想色が強くて読みづらかったけど、それに退屈さを感じることは全くなく、重厚感のある短編をそれぞれ深く味わうことができた。
どのお話も戦前の近代日本を舞台にしたものだから現実味のない感じにはならない。むしろ現実の中に潜む異質がその幻想をより一層濃く仕立て上げている。とある中洲を舞台にした「文月の使者」から始まり、その後の数話は中州から離れるが、最後の二篇で戻ってくる。そして最後に収録されている表題の「ゆめこ縮緬」ではこの短編集がまさしく一つになるという仕掛けがあって思わずぞくりとしてしまう。
物語自体は純粋な美しさはない。登場人物たちは己の欲を満たすために動き、生死が交差する話が多い。けれど、皆川さんの紡ぐ言葉は美しい。語彙が豊かで艶っぽく、かつ繊細に一つ一つの描写を表している。その対比が、この物語の中毒性のような部分を生み出しているのではないかと思う。
中でも「影つづれ」と「桔梗闇」が好きだった。玉藻前は知らなかったけれど、その伝説について語る「影つづれ」には引き込まれた。
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文月の使者/影つづれ/桔梗闇/花溶け/玉虫抄/胡蝶塚/青火童女/ゆめこ縮緬
皆川博子は面白い。と聞いたばかりの時に見つけた文庫新刊。しばらく迷ったけど読んでみた。
読み終わるのに思ったより時間がかかる。文章がスッと入ってこない?
なぜだろう
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甘い毒を含んだ、絢爛な幻想短編集。どれをとっても酔いしれるような気分にさせられる作品ばかりです。作中に引用されている西城八十の詩などもまた雰囲気をより一層引き立てて、くらくらしそう。一気に読んでしまうのはもったいないし、毒が回りそうでもあります。少しずつ読むのがおすすめかも。
全部好きだけれど、強いてお気に入りを選ぶなら「青火童女」かなあ。玉緒の魅力にもやられてしまったのですが。過去と現在と未来が絡み合う物語の中、どこをとっても凄まじいばかりの情景。そこに居並ぶ人形たちが美しくも恐ろしく、ひどく魅せられました。なんだかもうここから抜け出せないような心境です。
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美しかった。どこまでが現実でどこまでが幻想なのか分からない世界観。
文月の使者、玉虫抄が好きだった。
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これで皆川作品は4冊目の読了となりました。
初読みは昨年の1月、読み終えてとても理解出来たと言える境地に達せなかった自分の日本語力の未熟さと読解力の乏しさに打ちのめされたのを昨日のことのように覚えています。
それから約1年半が経過し、その間に300冊前後の本を読んできましたが、まだまだ追いつかないです。
時代設定は大正から昭和初期、8編の短編がおさめられています。
○文月の使者
○影つづれ
○桔梗闇
○花溶け
○玉虫抄
○胡蝶塚
○青火童女
○ゆめこ縮緬
どの作品も現実と幻の境がわからない程にどこか霞がかかったような趣があり、未熟な私にはまだまだ理解するまでには至りません。
それでもページを捲る手が止まらないのは、自分の中に皆川作品を読み込める力を求めるある種の欲望のようなものがあるのだろう。
幻想的な世界観、私が知らない言葉の魅力、日本語の、日本文学の深さに酔いしれました。
説明
内容紹介
ミステリと綺想の女王が紡ぎだす、禁忌と官能に満ちた世界
愛する男を慕って、女の黒髪が蠢きだす「文月の使者」、挿絵画家と若い人妻の戯れを濃密に映し出す「青火童女」、蛇屋に里子に出された少女の記憶を描く表題作他、密やかに紡がれる8編。幻の名作、決定版。
内容(「BOOK」データベースより)
闇に包まれた中洲を舞台に、生者と死者の黒髪に秘められた恋を紡ぐ「文月の使者」、奔放で美しい継母に、少年が見世物小屋で見た原色の記憶を重ね合わせる「桔梗闇」、挿絵画家と若き人妻の交流を濃密に炙り出す「青火童女」、蛇屋に里子に出された少女が垣間見る血族の秘密を描く表題作など、大正から昭和初期を舞台に綴る、官能と禁忌に満ちた8篇。「日本屈指の幻想小説集」と名高い名作を、詳細な解題を収録して完全復刊。
著者について
●皆川 博子:1930年旧朝鮮京城生まれ。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁・旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(長編部門)を、『恋紅』で第95回直木賞を、『開かせていただき光栄です‐DILATED TO MEET YOU‐』で第12回本格ミステリ大賞に輝き、15年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。著作に『倒立する塔の殺人』『クロコダイル路地』『U』など多数。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
皆川/博子
1930年旧朝鮮京城生まれ。73年に「アルカディアの夏」で第20回小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁―旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞(長編部門)を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU』で第12回本格ミステリ大賞を受賞した。2012年には、その功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、15年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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夢見る子のより合わせた糸の紡いだ織物は、禁忌と官能の香り立ち込める幻想と悪夢の紋様を描く。
「文月の使者」皆川文学に出る黒髪を惚れた男に伸ばす化生は女とは限らない。これは試験に出ます。
「影つづれ」玉藻の前に惹かれる少年は、無垢か魔性か。
「桔梗闇」愛憎入り混じる疑似母子?姉弟の心中ってのも皆川文学ならでは。
「花溶け」愛されはしないし、愛しもしない。こんなにも壊し尽くされてしまったのだから。
「玉虫抄」収録作で一番好きな雰囲気だったな…。何度死に直しても、あなたの小指が、欲しい。
「胡蝶塚」異母兄の親友、絶対同性なんだろうな。
「青火童女」皆川先生にしてはドストレートにSMってか…性に対して貪婪な少女ものでびっくりした…。
「ゆめこ縮緬」虚構に逃げ込み、目を瞑って、燃え尽きるように、消えてしまいたかった。そんな女に、誰がしたのか。
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脳をフル稼働させて必死で読んだ…
幻想小説と時代小説が融合した風のこの作品集、中々骨が折れました。
暗喩がたくさんで理解するのに一苦労。この台詞は誰?と行きつ戻りつ。
それぞれ独立した短編のはずだが、一部共通して登場する「中洲」という場所を通じて連作っぽい感じもある。
川はあの世とこの世を分かつ象徴だが、では中洲はどちらに属するのか?虚実あいまいでない混ぜになった異界めいた物語「文月の使者」に蛇の生臭さと不誠実さ漂う「ゆめこ縮緬」、中洲を通じ捩れた時空が繋がる「青火童女」。
シャガの根が湿気った家の畳の下に蔓延っている様子に寒気がする「胡蝶塚」、古代中国の妖狐伝説を題材に取った「影つづれ」、切った指が玉虫に変化するという衝撃「玉虫抄」…あたりも印象深い。
地蔵が生えるという未知の描写ではじまる「桔梗闇」は艶かしく息苦しい。
「花溶け」は漆喰で壁に塗り込められたように身動きが取れず、登場人物がみんな嫌な感じ。
「影つづれ」の壁の向こうの声は誰だ?
これまでに読んだ皆川博子先生の作品とはまた違った、格調高く嫌らしい魅力が詰まった一冊に感じた。
1刷
2021.6.30
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なんとも言い表せない複雑な気持ちで読み終えた。理由の分からない妖しい夢を見たみたいな、ひとときの幻想に足を踏み入れたような短編集だった。
聞き慣れない言い回しも出てくるし、生者と死者の境目が曖昧で、すぐあちら側の世界に連れて行かれそうになる。それなのにとても読みやすい点に驚く。
幾人かの登場人物に業の深さを感じて、重さを静かに受け止めていく読書だった。八作品、読み進めるほどにハマっていく深みがあり、どれが良いというのが選べない。それぞれ主人公の見えている景色が違って、それぞれの地獄がある。
いくつか同じ中洲を舞台にした話があるのが良かった。いろんなモノやヒトが集まってくるその土地を覗いてみたい気がした。
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「文月の使者」が印象的だ。中洲の煙草屋で話をしているだけなのに、男なのか女なのか、生者なのか死者なのか、境界が分からなくなってきて、どうにも妖しい。
他の話も、ただぼんやりと読んでいても話が頭に入ってこない。流れるような美文なものだから騙されているような気分になってくる。なんとも妖しい一冊だった。