いつもながら明確な論旨
2020/05/09 14:10
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:2502 - この投稿者のレビュー一覧を見る
前著「日本人の勝算」から更にバージョンアップして、日本という国の置かれた今の状況、その中での日本企業全般に係る課題と今後の可能性をクリアに描き出した名著。エピソードベースの印象論でなく、エビデンスとなり得るデータだけを丁寧に積み上げて論旨を展開していく著者の姿勢には、いつも感銘を受けます。例をひとつ挙げるとすれば、真骨頂は本著236ページ。「日本は労働市場の流動性が低いとよく言われますが、それを明確に示すデータは見つかっていません。」とのこと。日ごろ日本のメディアなどで目にする一般論(日本の労働市場の流動性は低い)も、鵜呑みにするのではなく、かと言って感覚的に否定・肯定するのでもなく、裏付けが得られなかったことは、それとして保留するという一貫した姿勢は見事です。
本書で「monopsony」という言葉を初めて知りました。今の日本にとっては非常に重要な概念だと思います。甚だ蛇足ながら、そのままの外来語として使うのではなく、明治時代の福沢諭吉みたいに、著者が適切な日本語訳を提案して今の日本の世の中に広めてくれないかな、と思いました。
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環境変化に適応する必要をなくすインセンティブを生み出してしまっている国策についての本。尻に火がつかないとやる気になれない人間のサガに知性でどう抗うか。とても難しい
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【求達最適解】
― 分析するデータ ―
データがものをいう。
わざわざデータを人が故意に入力することは面倒なため、自動ログが必要です。
人の行動をすべてクラウドで行えば、ログはできそうです。
メールは完全にクラウドになっています。googleスプレッドシートを使えば表計算はクラウド、究極はOSをクラウドにすればOKですね。
全作業をクラウドにすれば自動ログが完成します。
データを取るとなると精度を増すために母数を増やす必要があり、全データを取れないために恣意的なデータになる可能性があります。全データを取れば例外はなくなり、統計データでもなく、事実そのものができあがります。あとはどういう切り口でソートするかだけです。
エピソードではなくデータから仮説を立てることは基本です。エピソードから入ると事象としては真実であっても、それがよく起きる事象なのか、たまたま起きた事象で真実は別のところにあるのかが見極めることができません。ただ、なぜエピソードに頼るかと言えばデータがないからです。比較検討しようにもデータがないのです。やはり、自動ログが必要になります。データは存在するが、分析されていない、こういう状態でないと一から収集するという途方もない作業と、全データを収集できない事情から恣意的なデータを集めてしまいます。
― 無きプライバシー ―
自動ログとなると、すべて監視されているようで気持ち悪いと思われるかもしれませんが、かなりの部分ですでにデータとして集められ監視されているようなものです。
メール、SNS、携帯電話、GPS、インターネットの閲覧、防犯カメラ、ナビゲーション、クレジットカード、銀行を介したお金の動き、どこにプライバシーがあるのでしょうか。もうすでにないも同然です。すべての動きが把握されている状況です。個人的なデータはそろっていますので、何か事件を起こせばアリバイもなにも関係なく、過去のデータを調べれば簡単に捕まってしまう訳です。悪いことはできません。
企業のデータとなるとまだまだ公に出てきません。犯罪を犯しているわけではないのでメールを検索することもできませんし、上記に挙げたものでは「銀行を介したお金の動き」ぐらいしか見えません。
― 企業価値 ―
確かに中小企業の優遇措置には期限を設けるべきです。5年間がちょうどいいような気もします。6年目からは優遇措置がないので起業した経営者はなんとか5年で優遇措置がなくても成長していける生産性を身につける必要があります。5年で見につかなければ経営が苦しくなり最終的には倒産するというごく自然な淘汰が起きます。非常にすばらしい事業で経営者に能力がない場合、せっかくの事業が消えてなくなる可能性はありますが、事業内容がすばらしければ、また別の能力のある経営者が立ち上げて会社として成長させるでしょう。
― 最適解な中小企業経営者 ―
中小企業の社長が最も裕福な暮らしをしている現状を変える必要があります。家庭の財布と会社の財布が同じ状態で、家族は役員になっており給料が支払われ、車、旅行、外食などはすべて会��の経費として扱い、会社としては利益がない状態(赤字)で税金を払わない、しかも雇われている側は最低賃金で雇われるという状態になっています。雇われる側はいいように搾取されているだけです。
ただ、中小企業の社長もルールに乗っ取って最適な方法を見出しているのであり、雇う側が悪いわけではありません。雇われる側がルールを把握していないことが問題です。あるいはルールそのものが間違っている可能性もあります。ルールが変われば、そのルールの中で最適解を求めていくことが合理的な流れです。ルールを理解せず最適解を求める努力を怠り、給料が安いと文句を言っても意味はありません。
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日本企業にこれから求められるのは生産性1.7倍の向上。
そのためには中小企業の合併による大企業化の推進 (規模の経済によって生産性の向上が見込める)、monopsyの排除 (これによって権力が経営者から労働者に移る)、労働の流動性、最低賃金の向上が必須だと謳っている本。
生産性向上が必要な理由は、人口減少と高齢化によって就労人口は減っていくかつ総需要が減っていく一方で一人当たりの社会保障負担分が増えるため。
現在のGDPを維持するためには労働生産性を向上させる、もしくは労働の参加者を増やす他ない。
私はこの本のおかげで山本太郎やアベノミクスが謳っている量的緩和に基づくインフレ推進、物価の2%向上は人口減少が続いていく日本において有効ではないことを学んだ。成熟した日本において、これから求められるのはいかに生産性を高めていくか。イノベーションによって今までなかった需要を想起していくか。なのだと。
細々した会社を創立していくのはやめよう。
生産プロセスにおいてももっとコミュニティ化して、シェアして、スケールさせていこう。
企業の成長にインセンティブをおいた政策を中心としていこう。
これから外資企業でプロセスを学んだ人材、さらには大企業を経営した経験のある人材は市場で高い価値を確立していくことになる。また労働者も貴重になってくるだろう。逆に中途半端な経営者は淘汰されていく。早めに吸収合併を目標として動いていくのが吉だ。
私ももっと歳を取ったら仲のいい人たちで旅館とかカフェを営みたいと思ったけど、生産性高い方法を考えていかないといけない。それってなんだろうなー。
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菅政権で重用されている理由を知りたくて読んでみたが、ファクトに基づいた分析、主張で、非常にわかりやすかった!
数人しかいない会社がほとんどなんだから、有休消化率が低いのは当然だし、女性を登用する風土なんでない。
全ての元凶は中小企業の定義と優遇策!国際比較をすれば明確!読み書きのレベルが高い国民なのに、最低賃金が低く設定されているので、搾取される仕組みも非常にわかりやすかった。
あとは、どうやって中小企業を中堅、大企業に育てるか。。。
問題が明確だから、中小企業の定義と優遇策、最低賃金を変えれば良いが、、、感情論や、給料を払いたくない中小企業経営者による抵抗が凄い事になりそうだ。。。
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元ゴールドマン・サックス金融調査室長の著者が、データ分析に基づき、日本企業の課題の本質を明かす。
人口減少が進む日本では、企業が強くならなければならない。
企業が強くなるとは、生産性を上げること。
日本は生産性が低い。その理由は、中小企業が多すぎること。
日本は中小企業を優遇しすぎている。
生産性が低い理由は経営者の質の悪さも影響している。
経営者の質が悪い理由は、中小企業が多く、能力が低くても社長になってしまうこと。また、大学でクリティカルシンキングを教えていないこと。
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終始、中小企業の規模の小ささによる日本の生産性の低さ、日本への影響などが書かれている。様々なデータや論文が並べられわかりやすい。
自分の関わりがある企業も、まさに中小企業であり、経営者の高齢化や質の向上が伴わず、苦しんでいることが思い浮かんだ。
今の日本は人口が減る中で、企業数だけが多い。経営者の質を保ち続けることは難しいことは想像に難くない。今後の中小企業改革を進めるために必要な考え方が詰まっている本だと思った。
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論調が明確で良い。日本の農業に通ずる非効率温存体質。イノベーション、成長企業に対する政府支援なき、中小温存、低賃金。打開を期待したい。
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【良かった点】
・企業規模の拡大が生産性の向上につながるという道筋を理解できた
・monopsonyについて知識を得られた
・全ての中小企業を優遇するのではなく、優遇すべき中小企業を選定して政策を打つべきというのには賛同できるが、中小企業の数が特に多い日本では大きな反発も容易に想像でき、実現の難しさも感じた。
【疑問に感じた点】
・同じ主張を繰り返すことが多いので、議論が進んでないように感じる
・企業規模を増やすことを第一に考えた際、個人事業主やスタートアップの立場はどうなるのか
・中小企業優遇政策を辞めれば、現在の中小企業は規模を拡大していくという前提には違和感を感じる。優遇を辞めれば本当に体力のない企業は追い込まれる。急激な人口減少に際し、ある程度の犠牲はやむを得ないという主張だが、その姿勢ではスタートアップ企業の切磋琢磨は生まれないのでは、と感じた。
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日本が世界と比べて劣っている点、今後の日本の経済が上がるために必要なことがわかりやすく書かれている。
日本の経済から自分たちの会社まで落とし込んで考えると面白い
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monopsony、一つの買い手の解消
イノベーションを起こせない企業に補助金を支給しても、効果は出ない。
商工会議所は中小企業の労働者の団体ではなく、中小企業の経営者の団体。
人件費の上昇や非効率的企業の撤退について、どのように考えるか。
現状でデータに基づいて、説明しても現場では感情論となる。教育についてと同じかな。
エビデンスベースよりエピソード従来の中小企業戦略
経験と勘と度胸、年長者がリーダーとなる。
これからの人口減少によって労働人口も減少し、monopsony の力が弱くなり、労働集約型の企業は大きな影響を受ける。何もせずにいても、減っていくのは間違いない。
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低迷を続ける日本経済。私たち(一般市民)の生活が一向に豊かにならない原因は、monopsony(モノプソニー、買い手独占)が強く働いている、いまの労働市場にある。
遡ること1964年、OECD(経済協力開発機構)の加入条件である資本の自由化。この課題(当時の懸念ともいえるが)を払拭するために制定された中小企業基本法。企業の育成を後押しするための優遇措置が、本来市場から退場するべき生産性の低い中小企業をも救済し、延命させることにも繋がってしまったのは皮肉な話し。
人口の減少、少子高齢化社会のフェーズに本格的に突入したいま、再びこの国の経済に活力を取り戻し、豊かな生活を手にするためには、企業の規模を大きくし、労働生産性を向上される以外に道は残されていないと著者は切実に訴える。
本書の中で幾度となく槍玉に挙げられる中小企業の経営者の感想(ホンネ)をお聞きしたいところ。
ただし彼らは合理的に判断し、経済活動をしてきた(いる)のであり、全ての責任は時の権力者である政治家にあることは強く申し上げておきたい。
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日本企業のさまざまな問題の根本に下向き矢印が多すぎる。↑は“格差”のみ、汗。“SINKING” の二種類の意味。興味深いものでした。日本の行く末、心配です┉
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会社の偉い人に薦められた本。なるほと、日本はガラパゴスと思っていたが、データで語るとなんて事はない、ギリシアやイタリアと同じね、と。人口減の日本は社会の構造から変えないといけない。
大企業なんて、と思っていたけれど、大企業はそれだけで教育なり資本なり、知らず知らずのうちに生産性が高くなる行動に繋がってるのね、と肯定できた。
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相変わらず著者の分析は素晴らしく、視点も面白い。
対策も具体的で説得力がある。
・企業の大きさと1人あたり生産量は比例関係がある。
・国としては中小企業を守る政策ではなく、規模拡大を促進する政策をするべき。
・最低賃金を上げるべき。