紙の本
バブリーなミステリー
2020/11/16 23:00
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
戦争からバブルを駆け抜け獄死した女の物語を綴るため、彼女の生涯を遡り関係者に取材する“私”。淡々と紡がれる知らない時代の嘘の様な高揚と沈滞にスリルを覚え、バブルの如く掴みかけた真相が弾け散る衝撃の社会派ミステリー
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投稿者:あや - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白いは面白い
1人の女性の人生を辿った。って感じ。
でも起承転結が大きいわけでは無く、
ジャンル的にどんなジャンルになるんだろう?っと感じるような、、
なんとも評価し難い感じだったかなぁ
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葉真中さんの作品「絶叫」で感じた主人公女性の強い生命力をこの作品のハルさんにも感じた。しかし幸せだったのか?の問いかけに対するハルさんの答が、生きることの難しさ、切なさを表している。
泡とはバブル。戦後からバブル崩壊までが一つの時代とするなら、今またネット社会、グローバル化の加速からのコロナ危機でまた時代が一つ終わっていくのだろうか?このネット社会において世界を脅かしているのが、生きたウイルスという皮肉。泡は消えていったが、コロナウイルスは、そう簡単に消えてはくれない。
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その時代に起きた出来事や犯罪が詳細に語られていて、リアリティあるなと思っていたら、実際に起きた出来事や人物をモデルにしていたということを読み終わった後に判明しました。
実際のモデルは尾上縫。小説の中では、「北浜の魔女」と呼ばれた朝比奈ハルとして登場します。
一対一のインタビュー形式で、物語は進行します。刑務所で一緒になった女性や幼なじみなど朝比奈ハルの関係者たちから浮かんでくる「朝比奈ハル」像。その生涯は、壮絶な人生を歩んでいます。朝比奈ハル自身の視点はなく、関係者自身の生涯にハルの過去を取り入れながら、事件の全体が見えてきます。
終戦やバブル崩壊、コロナ禍。一見バラバラな出来事ですが、共通しているのはお金の動き。振り幅は違えども、お金が招く人々の幸福や悲劇が共通しています。ここに登場する人物が、まるで現実で生きていたかのように心理描写がリアルでした。集団心理やそれぞれが持つ何かしらの欲望、人間ってこうも人が変わっていくんだなと思い知らされました。
何事も程々だなとは思いましたが、改めてお金の魔力は恐ろしいと感じました。
後半までは、特にミステリーというよりは、ザ・ノンフィクションのようなドキュメンタリーを読んでいたのですが、徐々にミステリーへと変わっていきます。
インタビュアーの「私」は誰なのか?事件の本当の真相とは?「うみうし様」とは?次々と出てくる衝撃の事実に圧倒されました。
なんとなく違う真実があるのでは?とは思っていましたが、まさかこう来るとは・・・。証言者が発する伏線も後に回収していて、楽しめました。
犯人は直接この人!という書き方ではなく、間接的に匂わせる書き方でしたが、読み手としては、あの人だと想像することができます。
平成のバブル期が多く描かれていましたが、コロナ禍だからこそ感じたこと、特に最後の部分が印象的でした。歪みはあるかもしれませんが、人間の本性が多く詰まった作品でした。
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バブル期に女帝と呼ばれた尾上縫をモデルにした作品。固有名詞や細部は変えられているが、ほぼ実際にあった事件を踏襲していると思われる。作家ではない“私”が小説を書くために取材をしているという設定で、事件の関係者へのインタビュー形式を取りそれぞれの一人称で話は進む。なかなか興味深いが、なぜ今この話? という疑問は拭えなかった。冒頭に“私”が、30年前と現在の状況は似ている、と書いているのだが……。
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前作「ブルー」と同様の時代振り返りミステリー。平成に絞った前作と異なり、終戦直後から令和2年の今までを俯瞰。敗戦、バブル崩壊とコロナ禍を重ね合わせ、1人の女の生き様が証言形式で語られる。時代背景の説明が若干わざとらしく、二番煎じの感もあるが、葉真中さんらしい仕掛けは健在。終盤の展開に「エッ!?」となる。皮肉にも想定外のパンデミックが訪れたことで、より現実味が増す話になったのではないかと。加筆修正は大変だったでしょうが…。
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もう少し上の年代の人だと、どの事件もリアルに経験しているので、もっと楽しめると思うが、私はその後なので、あまりどれもよく知らない事件ばかりだった。
本人の語りは、ひとつもない。
周りの人から見たハルさん、なのでハル自身に語って欲しかった。
真実と、まがい物の作り話が混在しているような流れ。
バブルとともに、終える人生、そういうものもあってもいいのかも。
今の政治家などは、こういうきっちりとした責任の取り方をしないから…
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ストーリはまんま尾上縫の半生をもとにしたもの。「縫の会」「ガマのお告げ」「興銀のワリコー」「三和銀行」「東洋信金」「ナショナルリース」にそのまま置き換えて懐かしく感じた次第。時代背景を知らない読者向けに説明が過ぎるところが読んでて苦痛だったが仕方ないか。流石に葉真中作品だけあって終盤の展開は流石。
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バブル期に「北浜の魔女」と呼ばれた一人の女性。彼女の周りで起こる不審死、彼女自身が起こした殺人事件、そして彼女に神託を下したという「うみうし様」の存在。謎めいた彼女の生涯を小説にするために行われた取材の中で、徐々に浮かび上がる真実を描くミステリ。
これはミステリではあるけれど、その時代の世相を味わう物語でもあるかもしれません。バブルの狂騒に湧いた時代、その後に訪れたバブル崩壊で低迷する時代、そして現在のコロナ禍の時代。バブルの時代はじかに自分で経験してはいないのだけれど、それでもその時代の空気は味わえる気がします。そしてそれが現在となんとなく似たようなところがあるのでは、ということも。
そしてここに描かれたさまざまな人々の物語を読むにつけ、幸せの意味を考えさせられました。お金があって、自由があって、それでもそれを幸せと感じられないのなら。なんだかとっても虚しくなってしまいます……。どの要素も幸せのために必然ではないにしても。いったい何を求めれば良かったのでしょうね。
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前作「blue」では平成が始まった日に生まれ、平成が終わった日に命を終えた一人の青年の物語を描いたが、今作では太平洋戦争前に生まれ、焼け野原の戦後を力強く生き、バブル期にはマネーゲームに興じ、個人としては最高額と言われる4,300億円もの負債を抱えた一人の女性・朝比奈ハルの半生をインタビュー形式で描く。
戦後、バブル、そしてコロナ…
この3つの時代の大きな分岐点を、よく比較して描かれていると思う。
そして、その大きな波を自分らしく生きた朝比奈ハルと言う女性は、読んでいる途中は自分勝手だと思っていたが、最後まで読んでみると、「こんな考え方もあるかも」と思えるような仕上がりはさすが。
すっかり半生記を読まされていると思っていたら、まさかの残り100ページを切った当たりでどんでん返しを入れて来るのは、久々にゾクゾクした。
でも、インタビュー形式だと思っていなかったので、評価は少し低めで…
大幅な加筆でコロナ禍に合わせて来た作者の力量は確かだろう。
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世の中ゼニや!!!「北浜の魔女」と呼ばれた朝比奈ハル。バブル時代に信じられないくらい大儲けした後、破綻した挙句殺人事件を起こして獄中死した女の人生。彼女を知る人の語りにより物語は進む。面白くない、ことはない。1日で読み終わるくらい面白い。けど「バブルにコロナをまぶしてみました」といった感じで期待よりは小粒な印象。『絶叫』や『凍てつく太陽』クラスのスケールにはとても及ばなかったなぁ。個人的にずっとインタビュー形式という展開も好みではなかった。終盤にかけては一捻りあるのでそこはハマさんらしい作中ハイライト。
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初のコロナ渦中の日常も。バブル時代と変わらぬ人間の思考、行動。教訓は生かされない。だけどミステリーとしては中途半端。懐かしの青春フォークソング特集か。戦後日本を懐かしむには最適。団塊世代向けたような作品、最近目につく。ガマがウミウシは愛嬌か?「心に従い自然に逆らってワガママに生きる」
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終戦からコロナの時代まで。大阪万博はいけそうだけど、オリンピックは無理かも、という正に今のこの時までを駆け抜けた女性の物語。インタビュー形式だけど、突然視点が変わってちょっと驚く。自由とお金。気持ちよい程徹底した生き方に見えたけど、幸せだったのか?と聞かれて戸惑うその気持ちが少し分かる気がしました。刑務所まるごと買収できる程の資産を持ちながら、そこに幸せはなかったらしい。ただ、コロナ禍の今「お金」だよね、とも思う。現実問題。葉真中さんは、こういう痛みを伴う疾走感を書かれるのが上手だな、と思います。
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【バブル崩壊とコロナ】
バブル崩壊も
コロナウィルスパンデミックも
年明けの1月の段階では
私たちは新年を祝いどんな年になるだろうと
期待をしていたはずです。
でもその時点ですでに水面下で
世界の様相がガラリと変わっていて
静かに近く振動が起きているなんて
想像すらしていなかったはずです。
1990年はその前年末に史上最高値を付けた
日経平均株価が
年始からじわじわと下落していたけど
どうせ株価はすぐに戻るだろうと
楽観視していました。
それは今年の1月も中国で
新型肺炎が流行しているという
ニュースの報道をみても
SARS(サーズ)のように日本は関係ないだろうし
すぐに終息するだろうと今回のコロナウィルスも
楽観視していたのです。
30年前も今年も年が明けた時点で
災厄はすでに始まっていて
それに気づくことができない
私たち人間は成長していないのかもしれませんね。
それによってこれまでの生活が
変わらず続くと疑わずにいたので
気づいたときにはもう遅く
世界はがらりと変わってしまう予測ができていれば
こんなに生活様式が変わることも
なかったかもしれません。
【宇佐原陽菜】
この小説の主人公の朝比奈ハルは
通称「北浜の魔女」と呼ばれた
大阪で料亭を経営する傍ら
巨額の株式投資を行った個人投資家でした。
その彼女の話を聞こうと訪れたのが宇佐原陽菜です。
彼女はK女子刑務所でハルさんと
同じ房に入り労務として
高齢の受刑者の世話をすることになったのです。
その4年9か月の間に色々な話をしていたとのことで
話を聞くことになったのです。
そんな宇佐美陽菜は両親が「メギドの民」(キリスト教をベースにした宗教)
の信者で自分もそうだと信じ、
多くの制約のある中で暮らしていました。
「メギトの民」の教えはいわゆる
終末思想で“信ずるものは救われる”という考えで
その教えに従って自らの欲望を律して
生活することこそ幸福であると
教えられて生活していたそうです。
「メギドの民」ではもちろん恋愛は
認められていませんでしたが、
陽菜にも同じ年の彼ができたのですが、
彼と駆け落ちをして教会から離れると
彼は凶変し常に暴力を振るうようになり
それに耐えられなくなり彼を殺してしまい
K刑務所に入所することになり
ハルさんと出会うこととなったのです。
彼女の話はとても興味深く共感できるもので
朝比奈ハルのことを誰よりも
理解しているようでもあったのです。
【うみうし様】
朝比奈ハルは和歌山県にある漁村で生まれました。
彼女の住む村の浜には
時々死んだうみうしが上がることがあったのです。
そのうみうしは小さくて
手のひらくらいの大きさ(40センチくらい)
で全身カビとか苔が生えているみたいな
緑色でぬらぬらと光って
気持ち悪く好かれることのない姿
なのにハルさんは好きだったようです。
そんなハルさんは戦争が終わった翌月に
不思議な経験をして
うみうし様と信じるようになったようです。
そこからうみうし様は彼女の願いを
かなえてくれたとのことです。
彼女は誰にも何にも縛られずに
自由に生きるために彼女は願ったのです。
そのためには家族の死なども
問題ではなかったようです。
彼女は何も我慢せず、
運命にも世界にも抗い、
わがままにやりたいことをやって生きていく、
それが世界への復讐であり
この怒りを鎮める唯一の方法だと
思っていたからなのです。
うみうし様は八尾比丘尼(やおびくに)
という人魚の肉をもらった女が
不老長寿になるという話に
似ているように思うと
陽菜さんはそう思ったようです。
彼女はうみうし様の力を
借りることで生きていると実感できたのだと思います。
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尾上縫をモデルとして、バブル当時の金融紳士たちを描く。
他人の証言で語らせる手法の狙いは成功していると思うが、ミステリ仕立てのようにした結末で、作者が語りたい主題がぼやけた気がする。