「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
- カテゴリ:小学生
- 発売日:2020/11/20
- 出版社: くもん出版
- サイズ:26×26cm/40p
- 利用対象:小学生
- ISBN:978-4-7743-3193-5
紙の本
せきれい丸
【児童ペン賞絵本賞(第7回)】淡路島と明石を行き来する船、せきれい丸に乗ったひろし。沈没した船から海へ投げ出されたひろしは、親友の父に助けられるが…。敗戦直後の混乱が生ん...
せきれい丸
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
【児童ペン賞絵本賞(第7回)】淡路島と明石を行き来する船、せきれい丸に乗ったひろし。沈没した船から海へ投げ出されたひろしは、親友の父に助けられるが…。敗戦直後の混乱が生んだ海難事故の悲劇を乗りこえ、生きる力をとりもどす少年の物語。【「TRC MARC」の商品解説】
淡路島に生まれ育ったたひろしは、戦争で父を失う。戦争が終わった年の冬、親せきに食べ物を運ぶため、淡路島と明石をつなぐせきれい丸に乗った。しかし、定員の3倍の乗客を乗せた船はあっけなく沈没してしまう。同じ船に乗っていた親友のりゅうたの父親に偶然助けられたが、りゅうたは助からなかった。ひろしは、漁師であるりゅうたの家族を手伝い始め、漁を通じて淡路島の海と向き合う中で、生きることへの力強い思いをとりもどしていく…
淡路島を舞台に命を描き続ける絵本作家、田島征彦の最新作!【商品解説】
著者紹介
田島征彦
- 略歴
- 〈たじまゆきひこ〉1940年大阪府生まれ。「じごくのそうべえ」で第1回絵本にっぽん賞を受賞。
〈きどうちよしみ〉1940年兵庫県淡路島生まれ。この本だいすきの会会員。日本児童文学者協会会員。
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
まぎれもなく戦争
2020/12/30 16:49
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たあまる - この投稿者のレビュー一覧を見る
「せきれい丸」の事故は、
明石海峡大橋建設のきっかけになったとも言われているようです。
たしかに陸続きだったら、船の事故は起きなかったでしょう。
しかし、それは海難事故ではないというだけの話で、
この事故を起こしてしまった原因が解決されたわけではないのです
事故の直接の原因は、冬の荒天にもかかわらず出航してしまったことと、
定員オーバーの乗客を乗せてしまったことになるでしょう。
事故の責任は船長や運航会社にある。
また、制止も聞かず船に乗り込んだ乗客にもいくらかの責任がある。
そうなるかもしれません。
しかし、なぜそんなことをしてしまったのかというところが肝心なところです。
戦時中の人々の暮らしというと、まず食料不足が頭に浮かぶと思います。
しかし、食料不足が一番深刻だったのは、戦争が終わってからだったといいます。
1945年が凶作だったことが理由の一つであり、
さらに朝鮮半島など外地からの米の供給もなくなります。
そして復員や引揚げによって食べる人口が増えるのが次の理由。
そして、戦時中は戦争遂行のために国民の規範意識が保たれていたのが、
敗戦により緩んでしまったことも理由に挙げられます。
経済の統制は買い出し(生産者との直接的物々交換)や
闇市(不法に入手した物資食料の非合法販売)の横行で崩れてしまいます。
当時、法を遵守した検察官が餓死してしまったという話も伝えられるほどです。
法を守ってなどいられない、いわば弱肉強食の食料事情になり、
人々はなりふりかまわず食料をもとめて東奔西走しなければならなかったのです。
定員を超えていても船に殺到した人たちには、
単なるルール無視というより、ルールを守っていられない
切実な状況があったというべきでしょう。
乗務員にしても、むげに制止できない面があったかもしれませんし、
悪い想像をすれば、
戦争であまたの人命が失われ、死がありふれたものになる体験を経て、
人命尊重ということについて感覚が多少鈍麻していた面もあったかもしれません。
この絵本には挟み込みパンフがついていて2人の作者、
田島征彦と木戸内福美の「作者のことば」が掲載されています。
田島征彦は、この事件とちょうど同じ頃、
四国へ行く汽車に乗った体験を書いています。
「汽車は定員の3倍どころか、入口のデッキにまで多くの人がしがみついていた。
ぼくたち家族は、ガラスもなくなっている窓から乗りこんだ。
父が栄養失調のぼくの小さなからだを網棚の荷物の間に押しこんで、
長い旅は始まった。」
こんな混乱を引き起こしたのはまぎれもなく戦争です。
食料不足も、交通事情も、人心の荒廃も、原因は戦争です。
そういうことを考えられるという意味で、
このせきれい丸の事故は、平和教材になり得るといえます。
さらにこの絵本では戦時下の生活から描き始め、
主人公の父が出征し輸送船の沈没で戦死するというストーリーにして、
より戦争の影を濃くしています。
輸送船ごと沈められて海没した父と、
遭難して海に沈みかける主人公とがシンクロする場面もあります。
淡路市では各学校にこの絵本が配布されたということですが、
淡路に限らず、いろんなところで、
この事件を題材に平和学習ができたらいいなと思います。