推理小説はそんなものだ
2022/03/29 05:38
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:如月 弥生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
4つの章に4つの推理小説が作中作として書かれている。登場人物の天才数学少女が、その作中作の推理を数学論で語るという物語。推理小説の犯人当てクイズの要素は結局、形式的に不完全なものにしかならないと言っている。早い話、推理小説は自由な世界。恣意的な表現や、著者の思惑で書かれていない状況がありえるので、推理が本当に真であるかどうかは、数学の問題で条件定義がされるように、ある条件を特定する必要があるということ。現実の推理と推理小説の推理は違う。しかし推理を数学で語るのは面白い。百合の三角関係はいいね(^^)
投稿元:
レビューを見る
華文ミステリーですが、あとがきによるとこの作者は、1988年生まれで、日本のミステリーを読んで育った作家のようです。
影響を受けた作家として、法月倫太郎、氷川透、麻耶雄嵩、三津田信三、柄谷行人、井上真偽、綾辻行人、米澤穂信他、現代人気作家の名が挙げられていました。
「ガール・ミーツ・ガール」の物語ということを除くと、派手な事件はなく、日常の謎的なゆるい展開です。
ミステリー好きで犯人当て小説を書く女子高生陸秋槎と同級生で数学の天才少女韓采蘆が主人公です。
秋槎の語る物語の犯人を采蘆が推理します。
第一話 連続体仮設
第二話 フェルマー最後の事件
第三話 不動点定理
第四話 グランディ級数
のうち、四話ではとうとう本物の殺人事件が起こりますが、本格推理の短編集なので、ストーリーの説明は難しいです。
最初の二話はなんとか意味がわかりましたが、後の二話は理解が難しかったです。
本格推理や数学は大の苦手なので、私にはちょっとハードルが高かったようです。
投稿元:
レビューを見る
後期クイーン的問題と真っ向から切り結ぶメタミステリの短編集。もっとてらいのないパズラーだと思い込んでいたのだけれど、えらく屈折している。その手の議論にあまり関心のない向きには、(ミステリとしては)少し退屈だが、代わりに炸裂する百合感が興味深い。さすがに「アステリズムに花束を」への参加を「強要」したと作者本人が明言するだけのことはあるか。
投稿元:
レビューを見る
作中作を数学的論法と絡めて展開する短編が4つ。解説で2氏が後期クイーン的問題について論じている。初華文ミステリで、好きではない系統だが、あと少しは読んでみようと思う。
投稿元:
レビューを見る
陸秋槎『文学少女対数学少女』読了。
作中作"犯人当て"と現実の謎解きの階層構造にその両方が数学の定理のアナロジーを成して、さらには天才数学少女とミステリ書きの少女の百合という欲張りセットの連作短篇集。
ライトな関係性や日常系謎解きの物語にハードな数学やミステリ論が調和した1つで何粒も美味しい一冊。
陸秋槎は「色のない緑」や『元年春之祭』ですごい作家だとは思っていたけれども、その2作ともまったくテイストが違う本作にその多才さに驚かされる。
ところで、いろんな本でゲーデルの不完全性定理を読みますが、未だに人にちゃんと説明できる気がしない…
投稿元:
レビューを見る
「元年春之祭」が日本でもヒットした華文ミステリー作家 陸秋槎の短編集。
陸秋槎と同名の女子高生がワトスン役。同級生で数学の天才 韓采盧がホームズ役といったところか。
ただこの短編集の変なところは、各短編に作中作となる短編推理小説があり、その犯人探しと実際の作中人物の抱える問題の回答を推理するという事と、各短編が推理小説の抱える構造的な問題(解説で後期クイーン論として紹介されていたりしますが)をテーマにしたアンチ・ミステリーの形をとっている事、そしてそれらが数学の理論や歴史を絡めた内容になっていて、さらにそこにホームズ役とワトスン役が女子高生でちょっと百合要素も入っている、、、などなどの多くの設定、枠組みが重ね合わされている点。
個人的にはアンチ・ミステリーはミステリー好きには受けるかもしれないが、ミステリー初心者には「なにこれ?」となることが多いと思われ、小説の結末はアンチ・ミステリーらしい、つまりノーマルなミステリーとしては必ずしも犯人がわかって読者が爽快感を得られるというのとはほど遠いところにいるので、果たして受けるのだろうか?と心配になってしまう。
それでも重版されているというから受けているのでしょう。
まぁ個人的にはそれほど好きではないです。
投稿元:
レビューを見る
この作者の本を読むのは三冊目。これも百合要素あり。
推理作家になりたい女子高生(作者♂と同名)と友達のいない数学の天才少女が主人公の華文青春ミステリー。四つの短編からなる連作集で、作中に「犯人当て」のエピソードがあり、そこが面白い。 数学なんて苦手という人は、難しく考えずに読むこと。
ただし、中国人の名前に馴染みがないので、男女の区別とかよくわからない。「秋槎」は男女ともに使われる名なのでしょうか? 例によって登場人物表が挟みこまれているのだが、性別も表記してほしい。
投稿元:
レビューを見る
――
Das Wesen die Detektivgeschichte liegt gerade in ihrer Freiheit.
青春百合小説に擬態しているものの、その実体は数学×ミステリ論を元に後期クイーン的問題を中心としたミステリの不自由さに真っ向から挑んだ論文的作品。うわぁなんだこれ!
不完全で不自由で自由なその論点は、確かに青春の証明不可能性と通じるところがあるのかもしれない。
数学は基礎の基礎で逃げ出した自分にも、その仕組みは理解できるくらいにそれぞれの数学的要素が語られているのが凄い。数学愛もミステリ愛もなきゃできないなぁ。
数学者というか数学愛好家というのも、そこらのミステリマニアと一緒で、数学というものの不完全さが愛おしくて数学とずぶずぶなんだろうなぁ、って。
クラシカルなゲームを縛りプレイしてずっと楽しんでいる感じが、いちばん近いのかもしれないとか、失礼なことを思っている。
真犯人が追い詰められると自白するのも、その精神からきてるのかもしれない。
推理小説の本質はその自由にある、
und Die Anziehungskraft die liegt gerade in ihrer Beschrankung.
自縄自縛、ということばがよく似合う。だから好きなのかな? ☆3.8
投稿元:
レビューを見る
登場人物の名前に馴染みがないので一致させるのに時間がかかったが、なかなかおもしろい話だった。
ミステリーではあるが、実際の事件を解決に導くようなものは多くなく、ミステリーのあり方というか、評論というか、数学との関連性など、推理小説を書く少女と数学の天才少女、その友人などが議論をしていくような話。
みんな頭の回転良すぎるので、読者として推理を楽しんでいくというよりは、外からの討論観戦のような感覚。
投稿元:
レビューを見る
面白くないわけではないのだけれども…という感想。
犯人を捜せ、という命題に数学の公式を当てはめて推理するってのは面白そうだけど。まぁでも彼女が書いた文章以外の論理的根拠等は無しとして、犯人を当てるという事にしないと辻褄が合わないような?
最後はちょっと、うん。
親友が文学少女だけを連れて行っちゃうのはナンダカナな感じが。そんなんで良いのか?
投稿元:
レビューを見る
作中作形式で描かれる犯人当てとそれにまつわる議論の全てが数学的知識をモティーフにしているすごい推理小説。
数学的厳密さが悪魔のようにミステリを解体してくその先に自分がミステリを大好きな理由が現れたりした。
見たいものを見ることこそがエンタメの本質なのかも。
第一話で科学捜査に拠らない古式ゆかしいミステリの限界がこれでもかと突きつけられ、もちろんその話の中でも解決は見られるけども
それがさらに最終話の流れと呼応するようで楽しかった。主人公の成長が見れたようで。
と同時に幕引きは主人公のある種の卒業を示唆してるようで切ない。でもこれはただの僕の勘違いかも。麻耶雄嵩っぽいなと思えて好きやが。
投稿元:
レビューを見る
するする読めたし、面白かった。ただし、連作短編として読むならば、個人的な好みからは外れる作品だった。
毎回作中作を題材に、様々な観点から推理方法を議論したり、解釈してみたりする様子は、読んでいて刺激を受けた。同じ題材で、こうも多様な謎解きができるんだなぁ、と思った。それのみならず、ミステリというジャンルに対して、どの話も違う角度から、かなり挑戦的な作品だったように思う。そこが非常に面白い点でもあったものの、結果として、斬新なアプローチを提示したにとどまっているように感じることがなくもない。つまり、きちんと「落ちた」と感じる話は少なく(=物語として不完全な感じがする)、あまつさえ犯人を提示しない話もある(=ミステリとして不完全な感じがする)。
また、ガール・ミーツ・ガールものとしても、趣味には合わなかった。確かにお互いに大事に思っている描写はあるものの、それがほとんど発展することはない。連作短編には、それぞれ独立した話ではありつつも、一本の太いストーリーが、或いは主軸となる人物の関係性が進展していくことを期待して読む場合が多いが、本書はそうした期待には応えてくれなかった。ガール・ミーツ・ガールとしてではなく、また純粋な短編集として、推理小説を好む人が読むのなら、かなり楽しめた作品であったと思う。
投稿元:
レビューを見る
表紙が可愛いという理由だけで手に取ったら
なんと華文ミステリー。しかも本格。
自身が書いた推理小説に自信がない高校生・陸秋槎
(りくしゅうさ)は学校で数学の天才と有名な
韓采蘆(かんさいろ)にアドバイスを求めようとする、
すると采蘆は…。
全4篇、すべて作中作を読み解き(?)かつ
現実の問題も解決(?)していく物語。
なぜ(?)なのかというと、ミステリの超初心者読者
の私としては「なんで?」「それはアリなの?」
「どうしてそうなった?」「ところで○○は?」
と(?)の連続だったからです。
数学が分からなくても(いい意味で)浅く楽しく読めました。
数学が大好きなら深く楽しく読むことができそうです。
パズルの解き方を教えてもらうような読書、
中国の(たぶんちょっとお金持ち)学生さんの
生活も体験できました。
*************************************
中国は学生服というとジャージが一般的だそうで
この表紙のセーラー服はとても珍しいのでは
ないでしょうか。
投稿元:
レビューを見る
連作短編4編。
劇中劇のように現実の事件の進行する中で、犯人当てミステリー小説も登場し、謎解きが2倍の二重構造。しかもその謎解きにはわかったようなわからない数学の公式や定理が登場し読者を煙に巻く。女子高校生の友情も魅力で三角関係風の雰囲気も面白かった。
投稿元:
レビューを見る
文学少女と数学少女。一見すると水と油のような関係に見える2人ではあるが、お互いの足りないところを補う関係が読んでいて微笑ましかった。
登場人物の名前が全員中国語なので、読む時に少し大変ではあったが、中国の文化や暮らしぶりが垣間見えて勉強になった部分もある。
物語の骨格になっているミステリー要素と数学。特に数学はフェルマーの最終定理や谷山志村予想が出てくるなど小説としては高度な話が出てくるが、それがうまく内容と結びついていてとても読みやすいと感じた。