紙の本
「ウマい」と感じる背景は何なのか
2023/01/29 19:12
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投稿者:オオバロニア - この投稿者のレビュー一覧を見る
一年間の研究留学(厳密には違うけど)で家族と共にロサンゼルスで過ごしていく中で感じた、現地の食文化の在り方と「ウマい」の根源についてエッセイと評論を混ぜたような形式で綴った本。
恐ろしく読みやすい論文のような、理屈っぽい旅行記のような不思議な文章だけど、書かれている内容がとにかく面白い。アメリカの食文化がなぜ実験的で日本食に比べてパワフルなのか、「ウマい」と感じる背景は何なのかを論じるパートが特に刺さった。
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新しい食に出会うたびに「記憶の襞」が折り込まれる
→味を惰性から覚醒(別の味の記憶との差異)
→おいしい
・モビリティによる(第四の)「画一性」からもたらされる「多様性」
・L.A.では多民族が群島状に分布し混ざり合わないからこそ食の多様性が保持されている
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映画批評家、かつ食と料理本批評も行うというマルチな方が、LAのフード文化を考察し、まとめ上げた一冊。数ヶ月前、私は初めての渡米を果たしているはずだった(が、そこでコロナである)ので、タイトルと、表紙のポップさに惹かれて軽い気持ちで手に取ってみた。しかし前半、軽いテンポで進んだフード紹介から、後半はかなり骨太な考察に突入していく。自分の足では踏み入れることのできなかったディープな世界に、美味しい「えさ」を撒かれて、あれよあれよと引き摺り込まれていった感じ。
LAの交通文化と、アメリカ的食文化の関連の結びつきから始まり、LAの多様性が「自然」ではなく「社会環境」によってもたらされること、自分自身が能動的にフリーウェイを走り抜けることがうむLAならではの季節性、食における「ヒップ」は、「忘れられた言語を学び直していること」、そしてジョナサンゴールドによる素晴らしい食レポ(と形容するのが適しているかどうか)。その片鱗を実際に足を運んで味わう筆者の行動力も素晴らしい。
「映画と牛」の論考を革切りにディープな世界へと入っていく後半、興味深かったのは多様性と画一性の分析だった。画一性をどうしても悪と見てしまう私には大きな学びだった。確かに私たちの生活の安全性・安定性・均一性は、大量生産品によって大部分が支えられ、その上において多様性が大いに価値を発揮する。これは食に限ったことではないが、この章を読むまですっかり忘れていた大事なことだった。
チャルメラの最後の下りもとても良かった。私には同じように強烈な体験とともに刻まれた心の中の襞は、どれくらいあるだろう?しかしそれは、ただ考えを巡らすだけでは甦りそうもない。その食べ物に対峙して、五感を通じてその料理を味わった時、ようやく姿を見せてくるものかもしれない、そんな体験を早く味わいたい。ああコロナが憎いなぁ。。
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映画研究者による、アメリカの食べ物エッセイです。カリフォルニアの大学で1年を過ごすことになった三浦さん。コンビニのサンドイッチから始まったアメリカ生活は、ジョナサン・ゴールドという「ロサンゼルスタイムズ」の料理評論家が評したレストラン探訪へと続いていきます。
ジョン・ファヴローが主演・監督した映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」で、技術指導をしたロイ・チョイというシェフのフードトラック「コギ(韓国語で“肉”の意味)」も出てきます。
映画「シェフ 三ツ星フードトラック始めました」
https://filmarks.com/movies/58614/reviews/110758404
アメリカの食事というと、「量との闘い」というイメージがありました。大味で、肉! イモ!って感じだったのですが。本書に出てくる料理は、そんなイメージを覆すものでした。
もちろん、高級レストランと、庶民フードの差はあると思いますし、タコス、タコス、タコスが連続するのはカリフォルニアという土地柄もあるのかもしれません。
『大使閣下の料理人』というマンガに、「アメリカ料理というものはない」というセリフが出てきます。移民国家であるアメリカは、各自の国から持ちよった食文化が溶け合って存在しているという話でした。
マンガが描かれた時代より、さらにエスニックに進化したようなLAフード。そこから立ち上る生命力。あぁ、実際に食べてみたい。
ジョナサン・ゴールドのレストラン評、三浦さんが大学で行った「映画と牛の関係について」と題した講演録も収録。これがめっちゃ新鮮でした。映画が「牛でできている」なんて知らなかった!
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千葉雅也さんの帯に惹かれて(アメリカ紀行)が面白かったのでもうちょっとアメリカを知ってみたいと思い購入。アメリカの食事のイメージが変わりLAに行ってみたいと思った。色んな国の料理が重なっている土台の上に新たな料理が生まれるというのが面白い。どんな味なんだろう?
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LAの食に季節は不在だが多様な食の可能性がある。ジョナサン・ゴールドのレビューも、ゲリラ・タコスも、極まったバーベキューの体験も、ケチャップへの気付きも、すべて面白く読んだ。いちばん膝を打ったのは、「記憶の襞」のところ。
ー私たちは、何かを味わうとき、別のカテゴリーにおけるその味の記憶を重ね、そこで得られる差異に感動している。それがとても鮮やかに際立つときは、自分の全存在がリフレッシュされるような高揚感が得られることもある。私たちはそのとき、記憶の襞から、感動を引き出している。(p.226)
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ロサンジェルス、と地名はよく聞くが、全く近隣の外国に少ししか行ったことがなく知り合いもいない、縁もない地の特殊性が良く伝わってきた。
東大大学院を出た映画を主とした研究者なんですよね。やっぱり文章がやや固いし、理屈を並べる部分は飛ばし読みで…。意味は理解できるけど、それが面白いと共感しながら読むことは出来なかった。
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自分が留学していた時に感じた、異国の文化や料理に戸惑いつつ自分の一部となっていく感覚を思い出した。話に出てくる料理に関しては、アメリカに長期滞在経験のある人は思わずわかると笑ってしまう部分もあり面白かった。
食は生活する上で切り離せない部分だからこそ、その土地の在り方を強く感じるもの。海外で日本食に会うとき、自分の慣れ親しんだものとの相違に、思わず批判的な感想を抱いてしまうことがある。しかし、それは日本食ではなく、その土地にローカライズされたまた異なる日本食だと言うことは自分も留意しておきたい。
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LAではないが、近々アメリカへ行く予定があるのでアメリカの食文化を学べると思い、図書館で借りた。
前半はin-n-outバーガーやTrader Joe'sなど、アメリカのチェーン店の紹介をしており実際に行きたいと、魅力的に思った。
食に関してだけでなく自身が渡米した目的であるUSCの体験も本書で触れており、映画の本場でしか得られない質の高い教育(映画を鑑賞した後にその監督が実際に来てディスカッションする授業など)について知ることができ、日本人でこのような経験をしている方は非常に稀有だと思うので、興味深かった。
最後の方で、LAから帰国した後に感じたこととして、拡張を良しとするアメリカに対して日本は物理的な狭さを細やかさと精密さで克服していたことが分かった、というフレーズがとても印象的だった。物理的な広さや狭さ、また、歴史の長さなども食文化や日用品に違いが現れるのだと思った。
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大学のサバティカル期間に家族でLA暮らしをすることにした著者が、"旬のない土地"LA独自の食文化を発見するまでの1年間の記録。
日本とのギャップに戸惑いながら「ハッピーターンの粉のような」味付けのフライドチキンや、旬の概念が存在しない寿司などと向き合っていく前半は面白い。Trader Joe'sはアメリカに移住した日本人がみんな好きなイメージあるけど、サラダがそんなにも心をすくい上げる食べ物だとは。
北米人の食とイズムの関係に関する考察も面白かった。アメリカやカナダでのバーベキューは日本のラーメンと同じく「ガレージの美学」を持つ料理だというくだりとか、ヒッピーコミューンの有機野菜マーケットは品質の良い野菜と民間療法の本が同居するとか。
ただ、後半に入ると南カリフォルニア大学の映画学科に通いはじめるのもあり、だんだんと大学の先生っぽい文章のつまらなさが浮き彫りになってくるのがつらい。日本びいきのアメリカ人家族に理論武装しておひたしを振舞ったらあまり食べてもらえず、しょんぼりするところはその先生っぽさがチャーミングだったけど。ジョナサン・ゴールドという、LAの移民が生みだす多様な食文化を支持・擁護したグルメ評論家に1章割いているが、ケレン味あふれるゴールドの文章と本書の地の文をつい比べてしまう。(ゴールドもまとめて読めばクドいと感じるとは思う)
随所に人間関係に対する細やかな気配りを感じる文章でありながら、フィッシュベジタリアンの義弟を「ごりごりの自然食野郎」と呼んだり、ミリオタの若者を「非モテ」と呼んだりするのも気になった。この表現だけを抜きだしてどうこうというのではなく、なんというか全体に大学の先生らしいつまらなさをまとった文章のなかにこういう語彙が紛れこんでくると、"精一杯の気さくな感じ"をだそうとしてこれを選んでるんだろうな……という感じが結構しんどいのである。
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LAの食だけでなく、人柄や土地、文化についても知ることができる。
西海岸、行ってみたくなりました。必ず行きます。
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フード系のエッセーって初めて読んだけどこんなにおもしろいのか…!
自分自身ここ数年でかなり食への好奇心と興味が出てきたので、好き嫌いがないことを武器に色々なものを食べたり、サーチしたり、食べ物のことを話題にあげたり、作ったり、ってしてるけど、記憶の襞、レイヤーで味覚と体験と興味が形作られるのはほんとうにわかります!!!!となった
はじめて凝ったネパール料理やさんでスパイスカレーをたべたとき、美味しいとかとはべつに色んな味がする!!!!!とおもったのをおぼえている。
いろんなものを食べて、実家を離れて自分で料理したり、という経験を経てから母のご飯を食べたときのわかりの深さもすごい感動したし、(自分の料理と比べて)味と見た目が3Dだ!!!!とおもったのも。
この本はそういう経験を思い出させ、強化し、さらにただいろんな味〜!だけではなくて、季節とか場所や人の歴史とかまで想いを馳せてたべるという可能性をしめしてくれている。
えー食べることってみんなしてることだけど、こんなにヤバいカルチャーなんか…人生ずっとたのしいね…フフ
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講談社
三浦哲哉 「LAフードダイアリー」
1年間のロサンゼル(LA)生活を通して、食文化からアメリカの多様性を紐解いた良書。異なる社会環境の併存が多様性をもたらすことを伝えている。読みやすく面白い。
LAを アメリカにやってきた植民者たちが 解放を求めて 西へ進み、最後に辿り着く「終着駅」とし、異なる社会集団ごとの食文化が併存している場所と位置づけている
さらにLAは 「ゴールドラッシュ」「石油」「映画」「シリコンバレー」と 時代ごとに 解放を求める人々を招き寄せて 多様性を保っているとのこと
名言「多様な食文化を知り、多種の美味を味合うことは、寛容な精神を滋養することである」
洋書を読む自信はないが
JonathanGold の本は読んでみたい。
日本の食事の多様性が、自然環境によってもたらされるとすれば、LAの食事の多様性は、社会環境によってもたらされる
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映画研究者の著者が1年間家族とロサンゼルスで過ごした食にまつわる滞在記。
「食」からアメリカの多様性、成り立ち、ハリウッド映画との関係などにも考察は及び私の知らないアメリカの一面を考えさせられる本でした。
料理評論家とか高級美食の世界ってなんかすごい。
ハンバーガーから多種多様なエスニック料理まで、LAだからこその味わいの理由がなんだかわかる気がします。