紙の本
犯罪被害者専門カウンセラー
2021/09/22 04:32
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
警察が斡旋する犯罪被害者専門のカウンセラーが、自ら抱える傷を活かし、塞いだ心と向き合う希望溢れる物語。重い話の中でもときめくシーンもありとても魅力的でオススメの作品
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主人公の異様な価値観でキャラ立ち狙っているが、常識人すぎて効果を発揮せず。近年の著者の迷走を示す一冊。とはいえ、一定の水準をクリアしており、楽しんで読めるのはさすが。
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大学の研究員で臨床心理士の唯子は、県警から委託を受けた事件被害者へのカウンセリングを行なっている。彼女が請け負ったカウンセリングに纏わる5つの物語の連作集。時系列はそのままなので流れる季節感を味わいながらすんなりと読み進むことができた。
被害者たちを絶望の底に落とすのは人間だが、底から這い上がらせようと救いの手を差し伸べるのも人間だ。心理系初の国家資格として公認心理士が誕生した。この本でその存在意義を強く感じた。
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犯罪を犯した加害者はなぜ被害者と同じ罰を与えず、刑務所の中で生き、そしてまた刑務所から出れるのかと考えたことがあった。なぜすぐに死刑にはならず、反省の時間を設けさせるのか?犯罪を犯した者の家族、被害様の家族それぞれやり場のない気持ちを抱えて生きていかなければならない事件後にスポットを置き、その気持ちを可視化することが面白かった。当事者でなはいと感情移入しにくいが、【夜の影】春雄さんの「他に何ができたでしょう」の一言にどれ程の重みがあるだろうかと想像した時、被害者家族にしか分かりえない感情を理解しようとする自分が浅はかだと感じさせられ、本多先生の小説の凄さを感じた。ただ恋愛の部分で仲上が主人公に惚れる要素がいまいちピンと来なかったが、途中で読むのを止めずに最後まで読み終えたいと思える作品だった。
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加害者遺族と被害者遺族を根底に、赦すということについて書かれた物語。
主人公の高階唯子は大学に席を置く研究員。県警からの委託があった際、被害者支援のためのカウンセリングを担当する。
唯子の家族にも犯罪に関与した人物がおり、彼女自身もそのことで十字架を背負っています。
加害者遺族、被害者遺族。ネットやSNSが普及した昨今、小説でも取り上げられることが増えましたし、TVや新聞・雑誌などでも特集が組まれることが増えて来ました。
私自身、誹謗中傷をするような人間にだけはなりたくないと思っているのですが、心無い人の書き込みなどを見ると気が塞ぎます。
そういうことも含めて、いろいろと考えさせられる作品でした。
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警察専門のカウンセラー・高階唯子の仕事は、
事件被害者やその家族のケアをすること。
多くを語らないクライエントの、秘められた
想いに触れていき…。心揺さぶる連作ミステリ。
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アフターサイレンス…事件によって命が絶たれたその後の物語。
犯罪被害者の家族のカウンセラーである高階唯子は、優しく柔らかく温かく、人々を救おうとする。
5つの物語を通して、彼女自身がもつ犯罪との葛藤が語られる。
一つ一つの物語がとても興味深く、ミステリーとしての要素も楽しめる。
初めての作者だったが一気にファンになった。
カウンセリングの時に録音しない彼女はその理由を「消えてしまうからこそ言える言葉がある。この場限りだと思うから言える言葉、誰にも繰り返しては聞いてほしくない言葉…」と言う。
言葉をとても大切にしている作家だと思う。
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著者ファンとして、久しぶりに大満足
。
今までは少し神憑り的な部分が多いものがあったけれど、今回は主人公の苦悩を軸に、それぞれの人間模様が描かれていて、人に寄り添うことが如何に難しく、カウンセラーの存在意義を知った。
臨床心理士、公認心理師、精神科医の位置付けもおぼろげにわかり、これからの職種がもっと連携すれば、救われる人たちも多くなるのだと感じた。
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読後、どれもなんとも言えない気持ちになった。長くて静かな余韻が残った。
事件は、加害者と被害者だけの単純な話ではない。
家族や周りの人にも、それぞれの人生や考え方、思惑、無念さがあって、事件というのはそれらの「沈黙」が複雑に絡み合ったものなんだなと思った。
それぞれの事件に、厚みを生み出すような作品だった。
「正しさ」ってなんだろう。絶対的に正しいことは、この世にないのではないのだろうか。
「他に何ができたでしょう」。この問いに対する答えを、その裏にある思いを、ずっと考えていかなければいけない気がした。
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警察からの依頼を受けて、事件被害者やその家族の心のケアをする高階唯子を主人公とした連作短篇集。5篇の作品で構成され、読み進むうちに彼女を取り巻く様々な事情が明るみに出る。実際にこうした職業があるのか、警察が犯罪被害者のケアを行っているのか、寡聞にして知らないが、各話の設定や面談はリアルで説得力があった。そのうえで、加害者と被害者、それぞれの家族とどう向き合っていくのかが大事なことだと思った。
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予備知識なく読むのってのは良いですよね。昨今は帯などからも色々な情報が入ってきてしまいます。書評やら広告は避けれても帯とかって難しい。でもって、それも避けて読んで、こう言う短編の連鎖は、どう進んで、どこに落ち着くのか、それを含めてわくわくしますよね。で、感情の振られ方も大きくなって、そう言う職業があるんだーと言う簡単な部分からじっくり入れました。
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警察専門のカウンセラーとして、被害者やその家族の気持ちに寄り添うべくケアをしていく高階唯子。
さまざまな被害者たちの想いをどこまで理解してケアしていけるのか…とても神経の擦り減る仕事だろう。
臨床心理士、公認心理師という資格を持っていてもクライエントに主治医がつけば、その医師の指示のもとでしか動きがとれないなど知らないことが多い職種であり、何をもって終了となるのか難しいと思う。
人は、辛い悲しみにある時こそ本音も隠すと思うし、
話したくない、人にも会いたくない、誰とも分かり合えない…と心を閉ざす。
その隠された心の中、秘められた想いを巧く汲みとって少しずつクライエントが抱える悩みと謎を解決していくのは凄いと感じた。
最終章の「ほとりを離れる」で高階唯子の抱えていた心の闇の部分がやっと開放されたような気がした。
人間誰しも上手に生きてはいけず、いつも不安でもがいているのかもしれない。
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❇︎
二つ目の傷跡
獣と生きる
夜の影
迷い子の足跡
ほとりを離れる
警察専門カウンセラー 高階唯子(ゆいこ)
犯罪被害者の心に寄り添い、沈黙の奥にある
秘めた気持ちが吐き出されるのを待つ。
唯子の過去はカウンセラーになるきっかけ
だけに止まらない、深い痛みを伴っていた。
唯子は被害者そして被害者遺族の心を
掬い取れるのか。
犯罪への罪と罰、加害者と被害者、そして
その家族がその後どんなふうに生きて行くのか
考えさせられる物語でした。
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犯罪被害者のカウセリングを担当する高階唯子を主役にした連作短篇集。不倫相手を刺し殺す事件やひき逃げ、娘を殺害された父親が余命間近になる話、女子高生が行方不明、姉を撲殺された弟が犯人が出所した後復讐する話。
うーん。面白い部分とそうでない部分が斑になってる感じ。ストーリー展開は悪くないんだけど、リアリティがやや欠けているように感じる。ラストの「ほとりを離れる」では、まさかカウンセラーがそこまでやるか?と思わざるを得なかった。
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犯罪被害者やその家族へのケアを行うカウンセラーが、彼らとの交流を通し、事件や彼らの心にわだかまったものを紐解いていく、静かな筆致で描きあげた連作短編集です。
沈黙という言葉がタイトルに入っているとおり、人々が心に溜めたままの想いにこそ、この先を切り開いていく鍵がある。ただそれは他人が無理に開けるものではない。カウンセラーが思い悩みながらひとりひとりと向き合い、慎重に触れ合いを重ねていく様子には、人のもろさと、だからこそ人には、支え合える、力を分け与えてくれる人が必要のだという想いを改めて抱かせてくれました。
話が進むうちに、主人公のカウンセラーにこそ、沈黙を通している問題があることに気づかされていきます。かたくなになかなか全貌が明らかにならない彼女の事情のその沈黙の固さから、彼女がカウンセラーをしている理由、真摯に人々と向き合おうとしている意思の強さに気づかされていきます。その強さは脆さとも実は表裏一体で、息の詰まるような、救いのないような想いすら抱かせるほどで、はらはらと胸が迫る想いにさせられますが、……とりあえずは、ほっとできる展開となり安心しました。
しあわせな他愛ない未来があることを。そういう微笑みたくなるやさしい会話で締められた、重々しい事件ばかりながらも、人の心にやわらかく寄り添ったお話でした。とても良かったです。