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- カテゴリ:一般
- 発売日:2021/09/01
- 出版社: 講談社
- サイズ:20cm/381p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-06-524132-5
読割 50
紙の本
スタジオジブリの想像力 地平線とは何か
著者 三浦 雅士 (著)
なぜ宮崎アニメの作中人物は空を飛び、火と接吻するのか? 西洋ルネサンスとアニメ・ルネサンスを雁行する視覚芸術史上の事件として眺め、スタジオジブリを人類史のなかに位置づける...
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商品説明
なぜ宮崎アニメの作中人物は空を飛び、火と接吻するのか? 西洋ルネサンスとアニメ・ルネサンスを雁行する視覚芸術史上の事件として眺め、スタジオジブリを人類史のなかに位置づける。『熱風』連載を改稿し単行本化。【「TRC MARC」の商品解説】
……アニメーションの魅力を全面的に開花させたのが、高畑勲さん、宮崎駿さん(以下敬称略)といった人々によって担われたスタジオジブリの作品群であったと、私は考えています。高畑や宮崎といった作り手の仕事の素晴らしさについて私はこれからお話ししたいと思っているわけですが、そのためにはまずアニメーションそのものの魅力について語る必要があります。
(中略)
ルネサンス絵画の本質はアニメだということです。
ボッティチェリの『春』でも『ヴィーナスの誕生』でもいい。たくさんあるラファエロの聖母子像でも『アテネの学堂』でもいい。登場人物はすべて動き出そうとしている。静止画でさえ、いまにも瞬きしようとしている。これはもう、ルネサンス絵画の本質というよりは西洋絵画の本質で、ボッティチェリだろうがラファエロだろうが、レオナルドだろうがミケランジェロだろうが、さらには時代下ってカラヴァッジョだろうが、あるいはレンブラントだろうがフェルメールだろうが、すべてそうです。
ということは、彼らの絵をもとにしてアニメが作れるように出来ているということです。原画もキャラクターも台本も全部そろっている。ボッティチェリ作画、高畑勲監督『春』なんてことがありえたということです。それこそが、イタリア・ルネサンスの魅力の核心であると考えたほうが、よほど分かりが早い。実際、コマーシャル・フィルムなどで、そういうことを試みている例ーーたとえば優しくウィンクする『モナ・リザ』ーーが少なくないわけですが、コンピュータ・グラフィクスの驚異的な発展がこれからどんなことを可能にするか、空恐ろしいほどです。ルネサンス絵画のすべてが動き出すことになるかもしれないわけですから。
(中略)
……その眼で眺め直してみると、ゴンブリッチが援用したジェームズ・J・ギブソンの知覚論や、ルドルフ・アルンハイムの視覚論、エルンスト・クリスのカリカチュア論を含む精神分析的美術論などが、アニメーション探究に役立たないはずがありません。漫画論ーーとりわけ少女漫画論、劇画論ーーについてはもちろんのことです。
西洋ルネサンスとアニメ・ルネサンスを雁行する視覚芸術史上の事件として眺めるというこの考え方は、さらにいろいろ興味深い示唆を含みます。たとえば前者においてはキリスト教が占めた位置を後者においてはエコロジー(生態学)信仰が占めています。終末論として似ているのです。
高畑の作品も宮崎の作品も、大略、このような視点から眺められなければならないと私は思っていますが、しかしそれだけではもちろんありません。
(第一章「絵より先にアニメがあった」より抜萃)
【商品解説】
目次
- 第一章 絵より先にアニメがあった
- 第二章 なぜ宮崎アニメでは空を飛ぶのか
- 第三章 飛翔する力がジブリを創った
- 第四章 地平線という主人公ーーギブソンと宮崎駿
- 第五章 恋愛の地平線ーー「天空の城ラピュタ」
- 第六章 地平線と火の接吻の物語ーー「ハウルの動く城」
- 第七章 内面空間としての地平線ーー「千と千尋の神隠し」
- 第八章 地平線の比較文学ーーフォード・黒澤・宮崎駿
著者紹介
三浦 雅士
- 略歴
- 〈三浦雅士〉1946年生まれ。1970年代『ユリイカ』『現代思想』編集長を務めた。80年代に評論家に転じる。紫綬褒章受章。恩賜賞・日本芸術院賞受賞。著書に「石坂洋次郎の逆襲」など。
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空飛ぶ少女の視点はどのように生まれたか
2022/03/08 15:32
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ぴんさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
途方もないスケールの本だ。宮崎駿のアニメとルネサンス絵画が人類の視覚芸術にとって同じくらい重大な出来事だということを証明してしまうのだから。ジブリ作品へのオマージュと思いきや、三浦さんらしい口吻とともに縦横無尽にのびのびと話が展開。美術史、現象学からダンスや言語まで話を広げつつ、「地平線」を発明した人類が「憧れ」も発明した、という殺し文句へ。