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- カテゴリ:一般
- 発売日:2021/10/16
- 出版社: 徳間書店
- サイズ:20cm/173p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-19-865363-7
読割 50
紙の本
あの春がゆき この夏がきて
著者 乙川 優三郎 (著)
浮浪児だった男は画家の養子となり、生き延びた。奇跡的な出会いと別れを通し、女性達の魅力を知る−。本当の自分を知りながら、流れてゆく人間の葛藤を細やかに描き上げた長篇小説。...
あの春がゆき この夏がきて
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商品説明
浮浪児だった男は画家の養子となり、生き延びた。奇跡的な出会いと別れを通し、女性達の魅力を知る−。本当の自分を知りながら、流れてゆく人間の葛藤を細やかに描き上げた長篇小説。【「TRC MARC」の商品解説】
2001年『五年の梅』で山本周五郎賞、02年『生きる』で直木三十五賞、04年『武家用心集』で中山義秀文学賞、13年『脊梁山脈』で大佛次郎賞を受賞。1年年『『太陽は気を失う』で芸術選奨文部科学大臣賞、17年『ロゴスの市』で島清恋愛文学賞を受賞。
あらゆる賞を総なめにしてきた名手が描く美しい本!
戦後、浮浪児だった男が主人公。画家の養子となり、装幀家になる。多くの女性と出会い、別れ……。名手が紡ぐ「一人の男」
「死んだ伯父さんが言ってた。汚いものばかり見ていると目も汚れる。そんなときこそ、美しいものを探せって」神木が画家に出会ったときのその言葉が、彼の運命を変えた。
神木は忘れなかった。女性を愛し、芸術を愛しながら、浮浪児の孤独だけは忘れずにいたので、ときおり、自家中毒を起こした。
神木(こうのぎ)は、戦後、浮浪児から、画家だった養父に拾われ、「養子となった。芸大在学中、養父が死去。
全くの一人になった男が辿った道筋とは。出版社の装幀部に勤めていたが、その後、川崎にバーを経営。魅力的な女性と出会い、別れる。名手が書き下ろす一人の男の人生。
「変に優しいのよね。けっこう優しく裏切る」
彼は優しい男のまま別れようとしていた。人の人生までねじ曲げるような乱暴は好まなくなっていた。女は気を失うような刺激に飢えていたのだと思った。今の女には安堵の色が見えていた。
「私が男の人に真実を期待しすぎるのかしら、それとも男の人が私に真実を期待しないのかしら」ニューカレドニア生まれのマリエは神木の経営するバーに咲いた花だったが、とことん男を見る目がなかった。男に裏切られてきた女が見出したのは。
逗子に住む富豪夫人・漆原市子の画集装幀を依頼される。
「描いている間の自由を愉しみ、どうにか平常心を保ってきたのです。私の絵は窮屈な現実との闘いであり、逃避でもあります。ここが私の全世界」
「動機はなんであれ、突き進むのが芸術です」
戦争孤児で浮浪児だった神木は、軌跡的な出会いで、画家の養父に拾われた。浮浪児だった時、清潔な下着や靴下、自分たちを案じてくれる人の目、親の抱擁と言った温かいものに飢えていた神木は、美しいものにもそれに代わる力があるのに気づいて癒やされた。
終わりを感じる体と精神になって人生を見失い、もう一度性根を据えてなにかに懸けてみようと考えたとき、神木には美しい本をつくることしかできそうになかった。
「パリだけがフランスでないように、東京だけが日本でもない、人はその人に向いている土地というのがあるのかもしれない。そこに行き着くためにいろいろやって生きてきたような気さえする」
神木は美しい本を求め続ける。
「十年後に見ても美しいものが本物だろう、ここからが私の闘いで、愉しみなが身を削ることにもなる」【商品解説】
著者紹介
乙川 優三郎
- 略歴
- 〈乙川優三郎〉1953年東京都生まれ。「藪燕」でオール讀物新人賞、「生きる」で直木三十五賞、「武家用心集」で中山義秀文学賞を受賞。
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乙川節が身につまされる
2024/03/10 20:32
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投稿者:スマートクリエイティブ - この投稿者のレビュー一覧を見る
乙川優三郎書下ろしの8編の連作小説。21年に読んでいたものを再読。神木(こうのぎ)の装幀家時代の3編に続いて、売るための装幀に疲れて会社を辞めバーのオーナーに転身した中盤の2編から文章を紹介。
【赤と青の小瓶】伝をたどって、神木にバーまで自身の絵画集の装幀を依頼しにきた、死と向い合せの女性が絵画集完成後亡くなったあとの描写。
「絵のひとつひとつに夫人の執念を見る気がした。赤は心に秘めたものを吐き出すときの強い夫人のようだし、青は沈みがちな日常を持て余す夫人のようであった。いつ訪れるかわからない死と向き合いながら夫人は人生の幕引きを計算していたとみえて、傍からみると潔い限りである」
夫人に長く仕えていた的場が神木にいう。『奥さまは神木さんの人柄と仕事に感じ入って、おまえは恃む人もいないのだからああいう人を大切にしなさいとおっしゃいました。そこまで考えてくださる人に、私はただ給料のために仕えてきたのかと気づきました』
【秋麗】フランスに生活を築いた学生時代の旧友西野と再会して。
「困窮しても苦しくても、決めた道を一生歩いていくであろう西野と、同じ芸術を愛しながらふらふらしている自分との違いは、覚悟の差でもあるように思われた」「都会づれした人間のずるさで、なんにでも都合よく理由をみつけられるように生きてきたのかと考えさせられた」
ここ1年で旧友が3人亡くなった。亡くなってから気づいたが自身の人生で深いつながりのある10人のうちの3人。乙川節が身につまされる思い。