紙の本
シリーズ前作から6年が経過して・・・
2023/09/29 23:04
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
元刑事弁護士として作者は、様々な依頼人や彼らの複雑な事情を抱えた家族関係をたくさん見てきたにちがいないが、その経験が本作にも色濃く反映されている。
アルコールやドラッグの問題を抱え、さらに自閉症の息子までいるという重圧にさらされた母親キャシーの軌跡とその新たな人生への第一歩が感動的に描かれている。
その反対に、主人公ジョーたちと袂を分かったあとの父親トークのその後の転落ぶりがこれでもかというくらいに容赦なく描かれる。
それぞれの詳しい経緯は本書を読んでいただきたいが、作者はこのふたりの生き方をある種象徴的に描くことで、現実にはどちらがどちらの人生を選択してもおかしくないと言いたかったのではないか?
変われないひとなどいないということは、裏返せば意識や行動を自ら変えなければ変化もありえないということだ。その選択のタイミング、どれくらいそのためにエネルギーを注ぎ続けられるか、変化の過程での微妙な微調整などなど、実際にはキャシーのようにスムーズにはいかないのが現実だろう。行きつ戻りつしながら、昨日の場所より少しでも前に進む。無理をし過ぎると、以前より悪い状態に陥りかねない。
その過程こそが人生であり、規則的で健康的なライフスタイルといったものは、あくまで付け足しに過ぎないと思う。
そしてジョーにも、自分の身を守るために情報提供者の身元を明かすか、棚ぼたで転がり込んできた父の遺産を得て、ライラやジェレミーに安楽な生活を与えようとするかの選択が迫られる。金銭の誘惑は大抵の人を狂わせ、他人を顧みない冷酷さを引き出すものだが、ジョーには選択ではなく結果だけが余所から与えられる結末になっていたのが残念だ。
父や母とはちがう生き方を自ら選んでほしかったと思うのだが、ジョーのシリーズはまだ続くようなので次作以降の楽しみにとっておきたい。
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『償いの雪が降る』に続くジョー・タルバートのシリーズ第二作。前作では少女暴行殺人罪で有罪となった過去を持つ末期がん患者をインタビューする大学生として、過去の事件の真相に取り組む姿を見せていた主人公ジョーだが、彼を取り巻く過酷で特殊な家族環境は、作品に重厚感と心震わせるヒューマニティを与える独特なスパイスであった。
本書でもそれら家族の問題を取り上げるばかりか、見知らぬ父が被害者となった殺人事件を息子が追う、しかも家族の過去を掘り出しつつ、現在の再生を願うというタルバートの第二の決定的な時期と事件と取り上げて、家族と言う問題、差別や欲といった部分にまで詰めてゆく非常に厳しい物語となっている。
それでもジョーの一人称文体で綴られるページの重さや、誠実さはそのまま読者に感性や心理の浮き沈みを伝える武器となっており、この作家の優れたセンスを窺わせつつ読者の心を摑んでくる物語であるところは、毎作変わらない。アレン・エスケンスは、信頼性の置ける作家としてマークすべき一人である。
この作品では主人公が、見知らぬ父の死を謎含みの殺人事件として取材するとともに、自分探しの旅、また人生の転換点となる糸口としても、最重要視していることがわかる。その捜査の中で、同棲中の恋人との将来、落ちぶれた母の再生、自閉症の弟を含めての家族全体の再生などの大きな課題とも取り組んでゆく。
とりわけ兄弟が、大きな変化を遂げようとしている母と再会するシーンの心にこれでもかと言うくらい響いてくる。久々に心を打たれました。凄い作家である。人間性の重みをこれだけ持たせながら、物語の持つ娯楽性、ミステリとしての仕掛けや幾重ものツイスト、全体の起承転結のしっかりした構成、どれをとっても一流の作品である。
弁護士を引退して作家として成功をスタートさせた作家アレン・エスケンス。追いかけ続けねばならぬ作家がまた一人、ぼくのリストに色濃く書き加えられる。
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自分と同じ名前の男が不審死。その男は実の父親なのか。記者をしているジョーは事件を調べに行く。謎解きミステリーの趣と家族の物語でもある。著者の他の作品もそうだけれど人の内面を静かに濃く描くのが上手い。だからミステリーということを忘れそうになるときがある。人と人との間にある微妙な揺らぎのようなものが感じれてそれがとても好み。
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前作「償いの雪が降る」に続く第二弾
やっぱりこのシリーズいいです!
不器用で頑固、誠実で一生懸命、若さ故に間違えたり失敗もある。そんなジョーが今作で大きく成長するのが今作の読みどころ(*^^*)
相変わらず満身創痍です。
今回の田舎町も保安官含めて皆んな怪しい笑
ボロボロになりながらの孤軍奮闘に、我が息子を見守る母の気持ちで応援しつつ読むのが止まらない!
二度と許す事はないと頑なジョーが母親と再会する場面にはウルウルです(/ _ ; )
今作もやはり大円団の爽快な読後感でアレン・エスケンス大好きを再確認(*´∀`)♪
そしてジェレミーがホント可愛いわ\(//∇//)\
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『償いの雪が降る』の続編というが、何かが違う。謎解きにはもともと期待していないが、登場人物の描写に感情移入しにくく前作に比べると相当落ちるかな。
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ああ、今回も全てを投げ打って一気読み、、。どんどん山場が現れる素晴らしい展開に、読みやすい翻訳。今回も最後まで味わい尽くしました。事件の本筋もさることながら、ジョーとその家族の再生も描かれ、密度の濃さは呆然レベルです。ライラがメインらしい新作の翻訳が待たれて仕方ありません。
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間違いなく素晴らしい作品。ミステリのテイを取りながら、恋人、家族の再生、主人公本人の成長を静かに、豊かに描いてる。しかも田舎町の人間関係や登場人物のキャラ等がしっかりリアルで、
償いの雪が降る、に続いて本当に堪能した。
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特技ってありますか?
自分はいつでもどこでも寝れるという特技を持ってます
もちろん特技というくらいですからそれなりの目的意識のもと鍛錬を重ねて習得に至っているわけです
1980年代から1990年代にかけて子ども時代を過ごした人の実に8割はノストラダムスの大予言をなんとか乗り越えればいつか自分の机の抽斗からドラえもんが顔を出すと信じていたと言われています
もちろん8割の方の子ども時代を過ごしたわたくしですが他の人と違ったのは安穏と時を過ごすだけでなく、その未来をより確実なものとすべく2つの特技の習得を目指したわけです
1つはどこでも寝られる
そしてもう1つはすでにみなさんもお気づきの通りあやとりです
しかしあやとりの得意な人など周りになく、仕方なく活字情報つまり入門書に頼りました
そう!入門書を『あやとりの為に読む』なんちて
さて『過ちの雨が止む』です
普通の男ジョー・ダルバートがその一生懸命さと誠実さによりヒーローとなった前作『償いの雪が降る』から時は過ぎ、AP通信の記者となったジョーに自分の父親と思われる男が不審死をとげたとの情報を得ます
事件の真相を追うべく現地に向かったジョーですが今作は悪い意味での普通の男っぷりを撒き散らして行きます
あーそうだよねー普通はそう考えちゃうよねー
普通は腹立つよねー、普通はそっちに流されちゃうよねー、と
でも僕らはそんなジョーを見たいんじゃないんだよ!ライラだつてそんなの望んでないよ!
果たしてジョーは本来の自分を取り戻し事件を解決に導くことができるのか!?
過ちの雨が止む時、晴れ渡る空と共に感動の嵐に包まれます!
★5じゃ足りない面白さ!
最後にみんみんさん
「やっぱり順番に読んだ方が良かったかも」(byジェレミー)
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大学を卒業し、AP通信社の記者になったジョーは、ある日、自分と同姓同名の男の不審死を知らされる。死んだ男は、名前が同じだとしか知らない実父なのかもしれない――。凶行の疑いがあるというその事件に興味を抱いて、ジョーは現場の田舎町へ向かう。多数の人々から恨まれていた男の死の謎に挑むが……。
「償いの雪が降る」の続編。
「うちというのは場所じゃないこともある。それは人なんだ」ある登場人物の台詞が心に残る。
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AP通信の記者ジョー・タルボット。一度も会ったことのない父親が死んだらしいと聞いて、その街にやって来ると、トラブルの嵐。父親は殺された可能性大、彼の妻は自殺、娘は意識不明。遺産相続問題も絡んで・・・
読むのに時間がかかったがそれだけの意味はあった。
正義とか悪とか、愛とか嫌悪とか、人間のあれやこれやについて考えさせてくれる。
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前作「償いの雪が降る」に続きジョー・タルバートが主人公 劣悪な家庭環境から抜け出し 自閉症の弟をも助け出して 恋人も記者の職も得たジョーは 本作で 生まれる前に母を捨てた父親の死亡記事を見つける。その死は事件性があり 自分には腹違いの妹がいることを知ったジョーは一度も会ったことのない父が死んだ町に向かう。人は変われるか、人は変わらないのか 両方の例がここにある。本を読んで泣くことは求めてないが 戸棚のメープルシロップでちょっと泣いた。
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大学生だったジョー・タルバートがシリーズ第二作では若手の記者となって、一緒に暮らす彼女と弟を支える大人ぶりだが、思い込みの激しさと後先考えずに突っ込んでいくところは相変わらずで、消息を絶っていた父親にまつわる愛憎劇に巻き込まれる。ろくでなしだったと母から言い聞かされていた男がやっぱりそうだったんだと明らかにした息子に最後に贈られたものがなかなかのものだったというオチは素敵でした。
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CL 2022.7.13-2022.7.26
「償いの雪が降る」の続編。
深い余韻の残る前作に比べてけっこうドタバタ感がある。ジョーが考えなしに突っ走るのもさらに増えたような。ラストにはあちこち納得いくように決着がついたのでホッとする。
ただ、ジョーがケガしたとき、もう少し治療してもいいんじゃないかな?
あと、誰からも嫌われていたトークがDNA鑑定で父親だと証明さて、たとえ多額の遺産が転がり込むとしても、その遺伝子を受け継ぐことに多少でも葛藤してほしかった。
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前作『たとえ天が墜ちようとも』がマックスとボーディ、ベテラン同士の信念をかけたせめぎ合いだっただけに、ジョーの未熟さが際立った。
完全無欠なヒーローじゃなく、ずるくて卑怯なところもある人間として描かれていて、それが魅力のひとつではあるのだけど、さすがに会ったこともない父親の遺産を躊躇なくもらおうとする姿にはがっかりしてしまった。
一方ライラはというと、司法試験の勉強を最優先にするのが当然という態度に少しモヤッとしたが、やはり賢く良識があり、今回はジョーと別行動だったのが残念だった。また二人で事件を解決していくような話を読みたい。
二転三転するストーリーで、最後まで飽きさせないのがすごい。ちょっとやりすぎ感もあるが…。安っぽいアリバイトリックは要らなかった。
『償いの雪が降る』で決別した母親とのその後が知れたのはよかった。
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ジョーの軽率さ(チャーリーとのシーンの数々を見よ。お前、もうちょっと上手く立ち回れよ、言いたくなる)にイライラし、「ん? こいつの言動は、ちと怪しいぞ」とミスリードさせられたり、と愉しませてもらいました。希望を持たせるラストもいい。