投稿元:
レビューを見る
2022/10/20リクエスト 3
久しぶりにこれ程没頭できる本を読んだ。
ぶっ続けで5時間ほど。
なんとレビューを書くべきなのか、わからない。
血縁とは、親子とは、家族とは…
かつて子どもの取り違えは現実にあったと本で読んだことがある。授精卵の胚移植なら、お腹の中ですでに成長していて、この段階で、すでに我が子だと母親は感じるだろう。
生みの親より育ての親、というように、遺伝子だけの繋がりよりも育てるということのほうが、親子であり家族だと感じるのではと思う。
でも、国籍まで変わっていたら?
それでも、今更愛情を注ぐことを止めることは、できないだろう。
医大生の菜々子は、自分の血液型が両親のものと辻褄が合わないことに気づく。
母は、当たり前のように家族全員O型であることを信じていた。
自分で、家族全員のDNA型親子判定をした結果、二人ともが親ではなく、しかもアリールが違う。アリールは民族ごとに違うという。
自分が産まれた産院で、韓国の友人であるジヒョンも産まれていた。誕生日が2日違いで。
その産院は、当時未承認だった凍結卵子による顕微授精も行い、大学病院より成功率が高かった。
菜々子が自分のルーツを知るため、何が起こったのか知るために、産院へ行く。その後、家族が産院に呼ばれ、息子の現院長と弁護士から、産院の取り違えの可能性を示唆される。人工授精した当人である老医師の姿はなかった。
当時のカルテで凍結授精卵の胚移植で不妊治療を受けて、いた、ふた組分の受精卵を二人の患者に移植し、そのときに取り違えが生じた可能性があり、ほぼ同時期に妊娠、出産。
もうひと組は、韓国籍、連絡先もわからない。
その夫婦はソンさんだった…
大学で出会った友だちであり、同じタビケンに属する、ジヒョンの名字はソンだったはず、と混乱の中、ジヒョンが言うことが素晴らしい!
『私の父と母が本当の両親だったら良かったのにと考えてしまったよ。私のお父さんとお母さんは、本当にいい人たちですから。』
この本の中で、一番感動したシーンかもしれない。
菜々子が一人で韓国へ行くといったときジヒョンは涙をこぼした。
『ポゴシポ、会いたい。その気持ちがわかるから』
このシーンもジーンと来る。
菜々子は、ジヒョンの協力で、密かに韓国へ行き、取り違えのあった家族に会う。
自分の姿形にそっくりの本当の遺伝子上のお母さんと思われる人。
自分の湯河原の母だと思っていた人とそっくりな自分と同じ年頃の娘。
遺伝子上の母親は、知っているのか知らないのかわからないけれど、今の家族3人の生活をしっかりと守っていた。
菜々子の入る隙間はどこにもなかった。
だけど、その母は
『もう、自分たちは、日本には、行かないです。
いつもここにいる。ナナコさんは、いつでもきていいですよ。』
もしかしたらすべてを知っていて、育てた娘を守るため、日本へは行かないと決めたのか、と感じる。
P105
病気を治す以外にも医学が存在する。それには客観的なエビデンスが必要で、主観が入ってはいけない領域。
その時、菜々子は皮肉にも自分が医学部にいる本当の理由と初めて出会った気がした。
本当に読んでよかった。
2回続けて読んだ。2回も読むことはほぼない。本当に私にとってはいい本だった。
そして菜々子とジヒョンの友情がこの先ずっと続きますように。可能なら私の友達ともこのように付き合えますように。
投稿元:
レビューを見る
プロローグで、どうなるのか⁇という不穏な思いを心の隅に残して読む。
ラストには、淡々とした普通の親子の会話…なのに涙した。
これが家族なんだと。
これは、日本と韓国のふたつの家族が、子を欲しいと願い飛びついた医療の結末である。
医大生の菜々子は、自分の血液型が両親からは生まれてくるはずのないことに気づく。
母は、当たり前のように家族全員O型であることを信じていた。
法医学教授に頼み家族全員のDNA型親子判定をする。
その結果、二人ともが親ではなく、日本人としても稀な結果が出ていた。
母子手帳を持って当時の医院へ行く。そこは、昔はまだ未承認だった凍結卵子による顕微授精もしていたとブログやツイッターで書かれてあった。
母に可愛がってもらった記憶もなく、弟が生まれてからは邪険にされることもあった菜々子は、おばのサーちゃんに母が不妊治療をしていたことを聞く。
一方で、勝手に産婦人科へ行ったことで、弁護士から今回の事の顛末と二十三年前の説明をしたいと言われ家族で赴く。
当時のカルテで凍結授精卵の胚移植で不妊治療を受けて、妊娠したとの記載。
そして、ふた組分の受精卵を二人の患者に移植し、そのときに取り違えが生じた可能性があり、ほぼ同時期に妊娠、出産されている。
もうひと組は、韓国籍の患者であり、連絡先もわからず未確定であると。
菜々子は、韓国の友人であるジヒョンの協力で、密かに韓国へ行き、取り違えのあった家族に会う。
だが、何も話せないでいた。
もう、自分たちは、日本には、行かないです。
いつもここにいる。ナナコさんは、いつでもきていいですよ。
こう言ったことばから、もしかしたらすべてを知っていて、自分たちの育てた娘を守ろうとして、日本へは行かないと決めたのだと感じた。
韓国の旅を終え、出発前に抱えていた悲劇の感覚が消えたあと、思春期に入ってからずっと、明滅していた得体の知れない拠り所のなさにも、一つの決着がついたのかもしれない。
とあったが、菜々子本来の真っ直ぐさや強さ、そして内に宿る本物の優しさを改めて感じた。
レビューを書くにはとても難しくて、ほとんど内容になってしまった…。
かつて子どもの取り違えは現実にあったと記憶しているが、授精卵の胚移植となればお腹の中ですでに育んでいるわけで、すでに我が子であろうと思う。
遺伝子だけの繋がりよりも育てるということのほうが、親子であり家族だと感じるのではと思う。
だが、国籍が変わってもそうなのか…と。
やはりそれもそうなのだろう。
それは、もはや愛情なのだろうから。
投稿元:
レビューを見る
読み応えありました。
少しずつ分かっていく真実と、それを受け止めながら成長していく菜々子。
それを支えるジヒョンの素直な優しさと、謙太の健気な優しさがすごく良い。
血の繋がりって やはり強いけれど、
それだけではない家族の信頼関係もある。
家族の形について考えさせられる1冊。
投稿元:
レビューを見る
体外受精による受精卵の取り違えがあったと、自らDNA鑑定して気付いてしまった菜々子。自分の存在自体が根本から崩れ落ちる感覚。読んでいて、苦しくなった。最後まで息がつけなくてドキドキしながら読み終えた。
尊くんが言った言葉、病気がわかったとき知ったのは自分の強さだって、逆説的ですごく力強い。
想像を絶する困難を乗り越えて、人は強く魅力的になる。運命を受け入れる覚悟のようなものか。満たされなくていいんだよ。ありのまま受け止めたい。
私の過怠をお許し願いたい、という言葉を初めて知った。謝って済む問題ではないけれど、許す許さない含めて、人類が乗り越えていかなければならない課題なのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
あれれ、谷村さん初読みかもしれない(・・;)。
プロローグで描かれる1996年夏の情景から、本書の行方がわかったつもりで読んでいた。まあ、大筋では想像通りだったのだが、そこまで安易な作品ではないのでご安心を。
というか、こんなバレバレなプロットだけで引っ張るはずもなく(もちろん菜々子が真相を探る過程はドキドキなんだが)、むしろ真相がわかってからの主人公たちの行動が主眼なんだと思う。それまでの友情物語や家族関係も読みどころだ。
1点だけ、非常に大きな疑問があるのだが、医療監修者もおられることだし、たぶんぼくの無知ゆえなのだろう。
投稿元:
レビューを見る
分厚い本なのにあっという間に読了。でも、密の濃い内容で家族の在り方や揺れ動く心、精神など沢山の人間模様を描いたドラマで韓国からの留学生との出会いでお互いが寄り添いながら自分の進路を決めていく。
韓国では友達には遠慮なくズカズカと入り込んでいくのに対し日本人は心を開く事がない。家族を大切にし、両親を敬い敬語を使う韓国に対して日本人は違う。お隣同士の祖先は同じかも知れないのに全然違う文化になってしまっている事にも驚きだった。
医療の間違いで親が違うのに韓国ではそれでも絆は強く、日本人は血を大切にしている。自分は絆を選ぶのか血を選ぶのか。どちらなのだろうか。。
投稿元:
レビューを見る
厚いけれど読みやすい文章で夢中になって読みました。読み終わったときはかなり疲労感も感じましたが。
血液型から親子関係を疑う話は少なくないけれど、医学生らしくDNA鑑定まで行う。
その法医学の准教の話も現実味を感じました。
ALSにかかっていた、韓国からの留学生のイジョンが想い続けたタケル。
「自分の病気がわかったとき、線路から外れたみたいな気持ちになった」
「でも、その先にも別の線路がちゃんと延びてた」
「自分の病気がわかったとき、何を知ったかわかる?」
「多くの人が、その答えは絶望だと、想像するかもしれない。
でも違ったよ。
僕が知ったのは、自分の強さだった。むろん、散々挫け続けたあとにだけど」
こちらのストーリーも、深く考えさせられました。
投稿元:
レビューを見る
生まれた子の取替えではなくその前の受精卵の入れ間違い、こんなこともあるのだと医療ミスが恐くなる。主人公の自分のルーツを探す気持ちや韓国の留学生の幼い頃の友達を探す気持ちなど、真っ直ぐで真摯で思わず応援した。小説の終わり方も納得いくもので良かったです。
ただ元院長が気づいていながら隠蔽したことが腹が立ちました。
投稿元:
レビューを見る
これもまた血の繋がりとは?
家族とは?考えさせられる作品。
それも国を跨いで。
血の繋がりってそんなに重要なものじゃないかもなぁ。
一緒に過ごしてきた期間や関係性が
人間にとって大切。
投稿元:
レビューを見る
疲れた。やりきれない思い。ときほぐしようがない、こんがらがりよう。取り違え!あまりに単純なミスからあまりに重大で許されない結果責任。でも、どこに、誰に?「知らない方がいい真実」?「生まれてきた人間の身にもなってよ」いろいろ考えさせられた。
投稿元:
レビューを見る
〈不妊治療は日進月歩であり、世界中の研究者が鉱脈を掘り続けていた〉
P8より
子どもを望む何組もの夫婦がその産院を訪れた。
ひとりの医師による医療過誤。
あってはならないミスにより翻弄される家族がいた。
育ててくれた両親・弟とは血の繋がりがないとわかった菜々子の葛藤。
本当の家族に会うため韓国へ行く。
血のつながりだけではなく日本と韓国という国を跨いでの違い。
菜々子が医師を目指す学生という過程も
ストーリーが進む上で読みやすくなっている。
菜々子のこれからが気になるけれど
旅館を営む両親との関係はこの先も変わらないのだと思う。
そのことでほっとする自分もいる。
投稿元:
レビューを見る
人工授精卵の取り違えという医療過誤に直面していく主人公菜々子の葛藤や成長が伝わる重く苦しいテーマの一作。そこに集う菜々子を取り囲む仲間たちがとても素敵に描かれていて、輝きも満ちている。ただし、どこかスッキリしない後味感も・・・。
投稿元:
レビューを見る
不妊治療が今当たり前の時代。今現在受精卵を戻す先を間違えるなぞありえないことかと思いますが、ドキドキしながら一気読み。読み応えあり。
投稿元:
レビューを見る
読み終わって、出会えて良かったと思えた作品の一つになった。
物語の内容はとても興味深いテーマだった。
以前東野圭吾さんの作品「人魚の棲む家」を読んだときに感じた「死とはいつをもってそう定義されるか?」という疑問と並び立つ、「生命の誕生とはいつをもって定義されるか?」という疑問が胸に残った。
物語の主軸とは別に、菜々子や謙太に対する、いつも率直なジヒョンの物言いがとても心に響いた。
私はどちらかというと謙太のように、相手を傷つけまいとして言葉を選びすぎて、結局困ったような顔をして相槌を打つことくらいしかできない。
本当に相手のことを大切に考えての言葉なら、時として率直に伝えたほうが、相手の助けや救いとなることがあるのだと気づいた。
ちなみに私は最後の最後まで、取り違えられた相手方の子の正体はジヒョンだと思っていた。別の両親の存在は、ジヒョンの両親が家族に隠し通すためについた嘘だと考えていた。
冒頭で受精卵のシャーレを前にした宋夫妻の描写の際、すでに上に実子でない二人の姉がいるが〜という記述から、ジヒョンの優しい二人の姉がすぐ思い浮かんだからだ。それを裏付けるように、本当に生みの親だと知らされて会いに行ったソン夫妻には、菜々子と同年代の娘の存在しか描かれていなかった。
最後までどんでん返しがあるものと信じて読み進めてきたが、何もなく終わった。誰か私と同じ疑問を抱いた方がいないか、聞いてみたい。
投稿元:
レビューを見る
思っていた以上に分厚くかったので読みのにためらいましたが、読み始めたら一気に読んでました。
人工授精、取り違い等の話があり、テーマはヘビーでしたが、主人公は周りの人に恵まれていて良かったです。