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佐藤優の「尊敬する外交官」。それだけで手に取らざるを得なくなった。同じ心境のあなたは立派な佐藤優信者である。
吉野文六氏の戦後の話はほぼ出ない。吉野文六氏の体験した"戦中"である。願わくば戦後も追って刊行されることを願う。
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ヒトラードイツ最期のベルリンにて大使館員として生き抜いた内容の濃い一冊。大島駐独大使が酷評です…
降伏時にフランスの機関が移って来たジグマリンゲンって昔自分がホームステイしてたドナウエッシンゲンの近くの街だったんですね。新発見です(^^)
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何故、ドイツが米国やソ連に戦争を仕掛けたか。
大島ドイツ大使のような情勢認識と判断能力に劣る無能が、日独の軍事同盟を推し進めた事実を歴史にきちんと刻み込む必要がある。本著を読む限りでは、大島大使は確かに酷い。しかし、外交に限らず、物事の決断には、その役割を担った個人の資質に左右される事が多いのは事実、情報がその担当のフィルターを通じてしか得られない場合は特に。その決断が国単位で国民全体に影響を与えるとなれば、考えるほど恐怖である。
佐藤優も書いている。人間の職業選択などというのは、ちょっとした偶然で決まる。この偶然が人生を大きく左右するのである、と。況んや、国事をや、だ。
本題に入る。
このドイツでの経験が吉野文六にとって、どのような影響を与えたか。沖縄返還時の密約の取り扱いに際し、当然、その影響は小さくない。一人の人間としての感情、判断能力、職業的良心の形成、そこへの忠実度の醸成という意味においてだ。しかし、本著では、この沖縄返還におけるエピソードは語られず、戦争の終わりと共に幕を閉じる。つまり、判断が形成された過程のみを語り、理解せよという趣旨だ。
佐藤優の著作は、雑誌に寄稿する類の時事問題への評論的な本と、対談本、自らの実体験を語る本、記録を整理した本に類別できる。本著は対談本でありながら、過去の記録の整理も合わせて試みた本。佐藤優の記録整理、解説本は当たりが多い。読んで損はない。
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日本大使館にはドイツ人の女性タイピストが2人いた。2人ともユダヤ系だった。日本大使館はあえてユダヤ系ドイツ人を雇用していた。親日だが反ナチスという知識人は多かった。そのような人々の依頼に応じて、日本大使館は、あえてユダヤ系ドイツ人を庇護したのだった。同盟国である日本の大使館に勤めているならばゲシュタポもうかつに手を出すことができなかった。
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本書は、佐藤優が、後に外務省アメリカ局長となる吉野文六氏から、第二次大戦期に当たる駆け出しの外務省員の頃の話を聞くという形を取っているが、純粋なインタビューだけでなく、佐藤優の解説部分も多い。吉野氏の沖縄返還時の密約問題はともかくとして、このインタビューの対象となるのが、太平洋戦争直前のアメリカの様子とか、第二次大戦中のドイツ各地と敗戦時のベルリンという歴史の舞台そのものであり、非常に興味深い。ドイツ敗戦時のベルリンについては、新関欽哉の「ベルリン最後の日」を読んでいたので、それとの関連や対比を含めて面白かった。
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筋を通す、人の生き方として至難の技である。
国益を考える時、後世の人間が、あの時の判断はそれがよりベターな判断であったと追認できるような処理の仕方。
私心を捨て、冷酷な決断が必要だ。
佐藤優さんが最も尊敬する外交官 吉野文六さんの取ってきた行動を著した著作でした。
外交官という職責、命を賭しての職務遂行だ。
内容
第1章 教養主義
第2章 若き外交官のアメリカ
第3章 動乱の欧州へ
第4章 学究の日々と日米開戦
第5章 在独日本大使館・1944
第6章 ベルリン籠城
第7章 ソ連占領下からの脱出
第8章 帰朝
吉野文六 ドイツ語日記
あとがき
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ナチスドイツの行動についての現場報告。ヒトラーはナチスの原理を体現していたがヒムラーとゲーリングや軍人は反共で一致していたのみで官僚主義的で真のナチではないと分かる。ヘスの渡英も自己判断での実施とのこと。日本がナチスドイツのゲリラ戦ノウハウを輸入し毛沢東のゲリラ戦研究していたのは驚き。
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副題の通り第二次世界大戦でのドイツ崩壊を目の当たりにした、外交官のノンフィクションの内容で興味深い。日本を含め敗戦国の直前の混乱ぶり、人間としての本性がよく分かる。そしてロシアのしたたかさというか、酷さがわかる。
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読もうと思ったのは、沖縄返還の際のさまざまな密約について、近年自分が関わったことを認めた吉野文六さんについて、もっと知りたいと思ったため。しかしながら、内容は吉野さんが外交官になった初期のドイツ駐在時代の、ナチスドイツの崩壊過程についてであり、残念ながら沖縄密約の話なかった。まぁサブタイトル通りではあるが。
そして、佐藤優のスタイルなのだろうが、他の著書からの引用が非常に多くて、吉野文六さんの話というよりは、吉野さんの話もワンオブゼムで、いろんな資料から戦時中のナチスドイツの経過や、当時の日本の外交を整理した本という印象。オーラルヒストリーならもっと読みやすかったと思うが、引用が多くて少し読み疲れる感じ。
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沖縄返還に関わる取材から、佐藤優が掘り起こした、あの日、アノ時、の物語。時は、1945年5月、場所は、ソ連軍の猛攻に晒された首都ベルリン。ドイツの首都陥落を経験した日本人外交官(吉野文六氏)へのインタビュー そして佐藤優の解説等もあり。時の全権大使‘大島浩‘の逃避行等についても記載。ベルリンにソ連軍が迫る中、在独在留邦人の保護等に勤めることもなく、大使館幹部とともにドイツ南部への逃避行(観光旅行な)を行っている大島全権大使ご一行の行状等に、いやはや、であります。日独防共協定を結んだ大島浩のひとつの実像でもあります。
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本作は、端的に言えば、佐藤氏による現代史の再構成、といったら大袈裟でしょうか。
言葉を加えるならば、吉野文六という元外交官の人生(の前半)を梃に、その周辺の歴史を再構成する、とでもいったものでありましょう。
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多くのかたは吉野文六氏をご存じないと思います。
でもこの方の名前を最も有名にしたのは西山事件でしょう。
西山事件は一から説明すると長くなるのですが、要は戦後の沖縄返還に際して、本来米国が日本に支払うべき資金について、日本が支払う(つまりチャラにしてあげる)という密約をした、と。これをすっぱ抜いたのが毎日新聞の西山記者ですが、西山記者は言わば国策裁判でハメられ、その際の証言で吉野氏は「そんな密約はなかった」と虚偽の証言をしたものです。
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なお、この証言が虚偽と分かったのは、言わずもがな、日本の記録からではありません。
米国の公文書が2000年に公開されるに至り、2006年に本人が証言は虚偽であった(沖縄返還時に日米に密約があった)と認めたものです。
で、佐藤氏はこの吉野氏の行為に強く心を打たれたようです。
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さて、本作そのものは、吉野氏の戦前戦中の記憶や佐藤氏との会話に加え、佐藤氏が諜報的解説を敷衍して行ってゆくもの。
言わば吉野氏によるオーラルヒストリーに佐藤氏が彩りを加えていくという体裁をとります。
このオーラルヒストリーの貴重な点は、やはり教科書の字面から一面的にしか知らないものを、一個人の証言からよりビビッドに多面的に理解できる、という事です。
例えば、1941年の日米開戦以前、米国の雰囲気はどうだったかというと、吉野氏に言わせれば、日本人への憎悪もなく、物にあふれ、牧歌的な朗らかさがあったという。てかもう反日的な雰囲気で満たされていたとかって思いません?
またナチスは第一党として国民から選ばれた、という教科書の記述などをしばしば見ます。
これなぞは、あたかも多くの国民は熱狂的にヒットラーやナチスを支持したように感じます。しかし吉野氏の目から見れば、形だけの支持の人も多く、なんなら公然と悪口を言う人も結構いたことが綴られます。へー。
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なんてことを書くと、一体歴史の正しさとは何か、その事実はだれが認定するのか、なんてことに疑問を持ちます。
ドイツでのナチスの支持についても、文科省の担当者よりも、吉野氏の現場の声のほうが、すこし説得力があるように感じます。ではこれがすべてかというとそうも言いきれない。これは一事例であり、例外の可能性もあります。
歴史の概ねの事実は共通して合意されるとは思います。しかし、歴史とは予想以上に重層的・複層的で、細部を見れば見るほど、そこには不確かで相反する証言や背景が蓄積してもおかしくなさそうです。
だからこそ、一方的な断定的事実(とされるもの)には、時に懐疑的な方が健全なのかもしれません。またそれゆえに、こうした一個人の口述は非常に貴重であると感じた次第です。加えて、こ��ような不確かな歴史的土壌がぬかるみのようにあるからこそ、歴史小説がフィクションとして花開くのではないのでしょうか。
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ということで佐藤氏の作品でした。
西山事件とはほとんど関連のない著作でした。むしろ戦中ドイツを吉野氏を通じてインテリジェンス的に読み解くというもの。
こうした外交・インテリジェンス等に興味がある方にはお勧めできる作品です。加えて、歴史とは何が真実かと、ふと思わせる著作でもありました。