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谷村志穂さんが1990年から94年にかけて世界各地や日本のあちこちを旅したときの25編のエッセイ集です。
谷村さんの30歳前後の時期にあたります。
この時期に谷村さんは1年の3分の1以上の日々を旅の空の下で過ごしていたそうです。
京都、鳥取砂丘、帯広の然別湖、浜松、小樽、奈良、和歌山、雲仙、津軽、新潟、長野、ジャマイカ、マレーシア、フランス、ドイツ、オーストラリアなどを旅します。
「遠くへ行きたい」のロケで北海道知床半島に出かけたときに漁師さんたちがシーズンに寝泊まりする番屋を訪ねています。
東北から出稼ぎに来た漁師さんたちは半年ほど「単身赴任」生活をします。
朝3時に起きて夜6時に寝る生活です。
領海を越えた漁師さんがロシアにだ捕されるという話もありました。
羅臼と国後は30キロしか離れておらず、海に線などもともとないわけです。
だ捕された人がすぐに帰ったり、なかなか帰らなかったり、帰ってこなかったりということがあります。
「いつかここを舞台に小説を書きたい」とありますが、それが「黒髪」なのだろうかと思いました。
軽井沢の小径を歩いたというものもあります。
軽井沢には立原道造、堀辰雄、有島武郎の足跡があります。
明治期にはイギリス人に愛されたところだったようです。
軽井沢は森絵都さんの「ラン」でも出てきましたが、行ってみたいと憧れています。
「雪になる」「みにくいあひる」などの短編を読むとこの本の旅との関連が見られそうなものもあります。
作家は自分の体験を作品に昇華させているのだなと感じました。