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太宰の文才は太田治子ではなく津島佑子に継がれたのね、が第一印象。
高子の奔放で独立心の強い生き方は、津島佑子の父親の愛人達の姿ではないのか。それを描いた津島佑子の心境はどんなものだったのか、父が自殺した後のこの作者とその母の生き方はどんなものだったのかとても興味を覚える。
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想像妊娠、なんていうからもっと奇っ怪な妖しい話かと思いきや、ずっと現実的だったのがよかった。美しい夢の書き出しに騙された。笑
高子は、ありのまま、を愛している。ありのまま。石原千秋のいうところの本能と成長への反抗。その根底には死んだダウン症の兄の生き方がある。飾らないこと。偽らないこと。剥き出しにするしかないこと。理性を持ちようのない状態、それを高子は性の奔放さでしか追随できなかった。それが高子の美徳だった。
男無しじゃ生きられないようにみえて、人一倍自立していて…それが一人娘夏野子への愛着として映り、お腹の子を私生児にするという決意に落ちる。面白いくらい共感してしまった。私も、自分の子は、自分だけの子だと思う瞬間がある。私が私だけの力で宿して生んで育てる。母親はやっぱり病かもしれない。
作者自身のことを大いに反映しているのを後書きで知り、それまた面白く。いい小説だった。
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2017.6月分
夫と離婚し、孤独な立場の主人公の高子。娘の夏野子は、高子の姉の裕福な家に下宿する。1人で暮らすようになった高子はある時、自分が妊娠していることに気づく。その妊娠をきっかけに今までの男性との関係を思い出して物語が進んでいく。子供の父親が誰か特定できないほどの自分の止まらぬ性欲と、愛を求める一面と、そして夏野子を育てる母としての一面が交差して、高子を苦しめていく。
お腹はどんどん大きくなっていき、高子は1人で中絶することを決断する。この中絶という決断に至るまでの高子の心境は、読んでいて辛くなる。
しかし中絶と決断したものの、医者から胎児はいない。想像妊娠していると告げられる。高子は自分の愛して欲しかった人の子供を授かりたいという気持ちのあまり、妊娠したと勘違いし、どんどん太っていたようだ。
絶望と再び孤独の闇に落とされる高子だが、1人で強く生きていく姿が最後に描かれている。
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後半に読み進めていくて面白くなります。想像妊娠をしてしまった高子。離婚した元旦那の中立的な立場の人に相談して、次第に関係をもつようになる。まさかのプロポーズされるが1人で生きていくことになる。
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想像妊娠の主題が生々しく、男性として興味深い。
主人公のプライドや自己中心性、他者との物差しなど、こういった女性の解像度が非常に高く、少し怖気が走る場面もあり。
ただこの描写に作者のパーツが幾つか投影されているのは間違いなく、愛着すら感じる。
表題の見事さ含め面白く読めた。
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なんで高子は想像妊娠をしたのか?というなぜを紐解く話。
妊娠を女性の本能の帰結、と位置付けることから実は自分を縛り付けていて、それに気がつき自力で歩いていくために殻を破れた高子の姿が静かにカタルシスだった。後半一気に話が動くのに無理なく読める。
津島祐子さん、お父さんよりもずっと文才があるのでは‥。