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紙の本

たくさんのせつなさが。

2001/03/06 11:28

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:kaede - この投稿者のレビュー一覧を見る

 凌馬が好きなのは、自分を護ってくれるからでも、快感を与えてくれるからでもなく、自分を求める凌馬がたまらなく愛おしく、それが痺れるほど嬉しいから…という拓哉。

 凌馬のことを本当に大切な存在だと気付いた拓哉が、自分達はどちらも失ってはいけないし、凌馬を哀しませたくないから、自分はどこにも行かないし、ずっと凌馬のそばにいる、と決めていた拓哉だったが、皮肉なことに、信じられない事実を高見に知らされる。

 自分を護るために凌馬が命を引き換えにしてしまうことを知らさせた拓哉が、自分との思い出をこれ以上凌馬に与えないように振るまおうとするところもせつないし、2人が覚悟を決めて旅立ち、束の間の幸せな時を過ごすシーンは儚くせつない。

 また、最後の最後に1人で行こうとする凌馬を必死で必死で自分も一緒に行こうと言い募る拓哉に、とうとう凌馬が、拓哉への想いを口にしてしまうところ。

 見にくい妄執だと自嘲する凌馬だったが、拓哉ははっきりと事情はわからないながらも、どんな事情でも、穏やかに笑って凌馬を恨みもせず変わらず凌馬を愛してくれるだろう拓哉を結局凌馬は置いていく…。

 最後まで凌馬と共にいるはずが置いていかれた拓哉の想いも、拓哉を護ろうとして拓哉を残した凌馬の想いも、どちらもが読んでいて痛いほどせつない。

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