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90年代に書かれた著者の時評やエッセイを収録している本。
テレクラやブルセラといった女子高生たちの振舞いに対して、倫理的な言説を説くことを、著者は拒否します。現代の女子校生は、もはや親や学校の説教を受け入れて振舞いを改めることもなければ、反発して振舞いを続けることもなく、ただバレないようにうまくやればいいと考えるだけだと著者は言います。こうした状況で道徳を説くことは、ホンネとタテマエの乖離を招き、大人の世界は「ウソ社会」だという実感を強化することになって、かえって逆効果だと考えられることになります。
こうした状況を踏まえて著者は、価値を伝達するのではなく、こうしたシステムの状況を分析した上で、問題が生じないようなメカニズムを整備することこそが必要だと論じています。
価値についての議論を棚上げにすることで、初めてシステムについて議論する舞台が開けてくるということに、非常に興味を覚えました。ただ、著者のような極端な設計主義がどれほど有効なのかという批判が、保守派の側から提出されることになるのではないかという気もします。