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下巻は1923年の夫アーチーとの世界旅行から、離婚、そして1人でのバグダッド旅行、娘の結婚、そしてまた戦争など。第二次世界大戦のロンドンの状況や、そして「春にして君を離れ」を書く詳しい状況や探偵小説を書く時の考えなど、著作への姿勢が書かれとても興味深い。
夫アーチーとの帝国博覧会の大英帝国使節団の世界旅行では南アフリカ、アオストラリア、ニュージーランド、ハワイを回り、ハワイではサーフィンをしたとありかなり大きなサーフボードを背にした写真も載っている。
世界旅行後がアーチーと子供ととても幸せと感じていた時期で「スタイルズ荘」と名付けた家も買うが、ある日アーチーから離婚してくれと言われる。その後1926年謎の失踪事件が起きるがそれについては記されていない。
1927年、娘ロザリンドと秘書のシャーロットでカナリア諸島に行き「青列車の秘密」を書きあげるが、”書きたくなくても書いた”と、これがアマチュアからプロに転向した瞬間だったと記している。それまでは「小説を書くのは、ソファのクッションに刺繍をするのにとって代わるというくらいのもの」だった。しかし青列車~には書く楽しさが無く、出来にも不満があとまで残ったようだ。
1928年4月、離婚成立、30年にはバグダット旅行に「1人で」行く。「自分がどんな人間なのかみつけださなくてはいけない」「私が恐れているような他人に頼りっぱなしの人間になってしまっているかどうか」を考えるためとしている。そしてオリエント急行で行っており列車でおせっかいなC夫人に出会っている。この旅行が「春にして君を離れ」のモチーフになっているのは確かだ。実際列車が途中で止まったリもしている。
旅行ではおせっかいなC夫人のおかげで発掘場所などにも行き、そこで再婚相手となる考古学者マローワンと出会っている。なんと14才も年下なのだ。結婚後のこの時期自身の著作活動に不思議と記憶が無いと記している。実生活が幸せだった? 実際30年代は夫の発掘現場に同行し発掘を手伝っている。
1939年、またまた戦争だ。「それはこの前の戦争のようなものではなかった」「第一次世界大戦は、わけのわからないことのショックとしてやってきたが」「今度のはそれとちがっていた」「戦争が始まって、実際に戦われているのはロンドンや英国海岸ではなく、世界のどこか別の場所だった」・・しかし2,3年たつと「爆弾やロケット、こんなものがみな、当たり前のこととして続いていた」 またアガサの家も軍に接収される。
アガサはトーキイの病院の薬局で働く。戦時中に娘ロザリンドは結婚し、息子マシュー出産後すぐに夫が戦死。アガサの夫マローワンは北アフリカのフェザン砂漠に派遣されるがアガサと夫は戦争が終わって体重が増えていたとある。アガサ終戦時55才、夫は41才である。
2019.6.18図書館