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1996.12.31 27刷 580
雪のため外界と隔絶した民宿に一本の電話がはいった。警察からだ。ロンドンで起きた殺人事件とこの民宿になんらかの関連があるので、これからこちらへ向かうという。そして、刑事はやってきたが……不気味なマザー・グースの調べにのって起こる連続殺人劇とは?有名な戯曲「ねずみとり」の原作「三匹の盲ネズミ」をはじめ、ポアル、ミス・マープル、クィンと、個性豊かな探偵たちが頭脳の冴えを見せる珠玉の短篇集!
三匹の盲ネズミ・風変わりな冗談・巻尺殺人事件・非の打ちどころがないメイド・管理人の事件・四階の部屋・ジョニー・ウェイヴァリー誘拐事件・愛の探偵たち
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ハズレのない「短編集」
なので煮え切らない作品に辟易と
する心配もないのがうれしいところ。
お勧めは、やはり中篇に当たる「三匹の盲ネズミ」かな。
定例のマザー・グースに乗せて
殺人が行われますが、
油断していると最後に思わぬ一撃が。
まさか、がありえてしまうのです。
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出色の出来の作品はないが、それぞれ趣向が凝らされた作品集。
「三匹の盲ネズミ」
本作品集の中で最も長い中編作品。
大雪で周囲から隔絶された宿泊所に刑事がやってきて、この中に殺人犯が紛れ込んでいること、次の犯行がここで行われようとしていることが告げられ、実際に殺人事件が起こり、互いに疑いの目を向ける人物たち。
意外な結末を見せるが、本格物ではなく、サスペンスミステリー寄りの作品。
「風変わりな冗談」
意外な遺産の隠し場所をマープルが指摘。
「巻尺殺人事件」
スペンロー夫人が殺され、二人の人物に容疑がかけられるが……。マープルは、事件を担当する巡査が持っていたあるものを見て、犯人を確信する。真相を知ると、作者が大胆な仕掛けをしていることに気づく。
「非の打ちどころがないメイド」
スキナー姉妹のメイドがブローチ盗難の疑いをかけられ、解雇されることになり、マープルが姉妹に思いとどまるように説得するも功を奏せず、新しいメイドが採用される。マープルは、そのメイドの「非の打ちどころがなさ」に疑問を持ち、その後に起こった盗難事件の真相に気づく。
「管理人の殺人」
ヘイドック医師から、「精神的な強壮剤」としてマープルに渡された謎解きの物語。金持ちの妻を連れて、故郷に錦を飾った男。その妻に嫌がらせをする元管理人の老婆。妻は落馬し、非業の死を遂げる。ある人物の陰謀をマープルは見抜く。
「四階の部屋」
鍵を紛失したため、サーヴィス・リフトを使って部屋に入ったところ、階を間違えてしまって、死体を発見するという興味深い発端で始まる事件。たまたま、現場に居合わせたポアロが、いくつかの事柄に不審を抱き、犯人の企みを暴く。
「ジョニー・ウェイヴァリー誘拐事件」
お金持ちの子供が誘拐された事件の調査を依頼されたポアロとヘイスティングズ。ポアロは、犯人が誘拐を予告してお金を要求したことを不審に思い、真相に気づく。
「愛の探偵たち」
ドワイトン卿が撲殺された事件で、夫人は自分が銃殺したと自白し、デランガという男は自分が刺殺したと自白した奇妙な事件。壊れた時計の表示時刻とアリバイから、サタースウェイトとクィン氏は真相に気づく。彼らが救った愛とは?
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改訂版を読了後、感想共有。
愛の探偵たち
クリスティの短編集。女史が生み出してきた探偵たちが活躍する作品集。
三匹の盲目なねずみ
100ページ以上ある為、中編だと認識。新婚夫婦が初めて民泊を経営し、そこに宿泊する様々な特徴の人々。大雪で外部との連絡が途絶えた環境。捕まらない殺人鬼。「雪の山荘」のお約束が十二分に詰まったお手本の様な作品。合わせて、クリスティはサスペンス作品の出来も素晴らしい事を思い出させてくれた作品。
ストーリーについてはある程度犯人も予測しやすくなっているが、とても面白い。登場人物達の癖づけによって皆んなが怪しく見え、疑う事が出来る状態で進行する為、スリリングな内容だ。
奇妙な冗談
マープルが登場。若き夫婦の叔父が亡くなり、遺産があるはずだが見つからない。知人の伝手でマープルを紹介してもらい、遺産探しがスタートされる。短い物語で大きな波は無いが宝探しは古今東西面白い道理で今回もとてもユニークに感じた。高額切手での遺産は今の時代では中々思いつかないが、叔父さんのちゃめっ気にほのぼのした空気感の物語だ。
昔ながらの殺人事件
探偵役はマープル。セントメアリミードで発生する事件について、全てマープルに報告すれば良いのにと思うのは僕だけだろうか(笑)警察署長に至るまでマープルの観察力、推理力についていけるものはいない。今回もスペンローという人物が感情を出さないタイプなので警察から疑われているが、この時代は陪審員制度然り、感情に訴えなければ無罪になれないのではと思う程だ。
マープルの観察と推察はシンプルであり急所を突いている。今回はお節介な部分も魅力だ。
申し分のないメイド
探偵役はマープル。村で発生する盗難事件について。彼女が最後、犯人を警官に告げるシーンにおいて、自身のメイドのいとこがあらぬ疑いでクビになり、噂が経っている事を解消する為に憤りを感じている部分が、彼女の優しさだけでは無く強さも表している。事件はありきたりではあるが、犯人の正体についつは楽しむ事ができた。
管理人事件
病気で塞ぎ込んでいるマープルにヘイドック医師が身近で起きた謎をまとめて持参。
若くてお金持ちの夫婦。夫の故郷である田舎に戻り、家を再興し、昔ヤンチャだったがオールドミス達に認められ。そんな暮らしの中で、以前敷地の古屋敷に住んでいた老婆が嫌がらせをする様になり。マープル曰く、昔から人が大きく変化する事はない。後味が悪い事件である。
四階のフラット
探偵役はポアロ。若い男女グループがフラットという旧イギリスの家屋で鍵を無くしてしまい裏通路(ゴミ捨て場?)から侵入し部屋のドアを開けようと試みるが、誤って下の部屋に侵入してしまい。死体を発見し、困っているところ、上のフロアにいたポアロが助け舟を出す。最後、ロマンチックに締めていくところがポアロシリーズらしい結末だ。
ジョニー・ウェイバリーの冒険
ポアロシリーズ。ヘイスティングスも登場。誘拐事件。被害者家族の屋敷内にて偽装が多すぎる為、ポアロは違和感に気づく。いわゆ��誘拐偽装事件であり、ある程度見たことのあるストーリーだった。
愛の探偵たち
表題作。探偵役はクィン。表題作の探偵がクィンである事が感慨深い。内容はありきたりなものでアリバイも当時のミステリーに有りがちな壊れた時計の二重仕掛けだ。犯人達がそれぞれ自分が犯人だと名乗り上げ、殺害方法を実際のものと違う方法を挙げ推理が自分達に向かない様に偽装する。何重にも偽装を仕込んでいるところが面白い作品だ。