紙の本
ポーカー・ゲーム
2002/03/09 08:02
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投稿者:modern - この投稿者のレビュー一覧を見る
ヴァン・ダインといえば「グリーン家」と「僧正」——。そんな風潮があるが、なかなかどうして、他にも名作、傑作はたくさん眠っている。そう、例えばこの「カナリヤ殺人事件」のような。
著者が掲げた「心理的探偵法」というものが一番美しい形で開花している作品である。容疑者たちを一同に集めた探偵が、彼らとポーカー・ゲームをやって犯人を突き止める——。現代の常識から考えると極めてナンセンスかもしれないが、そもそもヴァン・ダインの作品というものはそういういびつな感じを楽しめることが魅力になっているふしがあるから、あまり気にしてはいけない。
ともあれ、極上の味わいの一品。
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ブロードウェイの名花“カナリヤ”が密室で殺される。容疑者は四人しかいない。その四人のアリバイは、いずれも欠陥があるが、犯人と確認し得るきめ手の証拠はひとつもない。ファイロ・ヴァンスはポーカーの勝負を通じて犯人に戦いをいどむ。
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探偵ファイロ・ヴァンスシリーズです。
完全な密室殺人事件。一体どういうトリックなのか、気になって気になって、手に汗握りながらページを捲ってました(*´▽`*)
ずっと毛嫌いしてきた海外ものですが、有名なだけある。おもしろいですね。現代の作品と比べても全く遜色ない。今でも十分通じるし、昔の作品と言われなければ気づかないですねーー。
ただ、途中出てきたポーカーのシーンが、ポーカーを知らない私にはつらかった(笑)だから★1つ減点。そして、訳があまりにも古い。例えば、『○○シティー』が『○○シチー』って書かれてたり、クロワッサンに注釈がついてて『三日月のパン』とか(笑)そして、漢字も今は使わないようなものがちらほらしてて読みにくい。だから、さらに★1つ減点で、合計★3つと相成りました。
しかし、トリックや、謎解きの過程はとってもドキドキもんでいいですね。
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「カナリヤ」と呼ばれた歌手マーガレット・オデールの殺人事件。荒らされた部屋に残された指紋。指紋の持ち主は泥棒のスキール。事件当夜オデールとデートしていたスポーツウッド。帰宅直前にオデールの部屋から聞こえてきた悲鳴と警備員との会話。入口に警備員、裏口にはカギ、密室状態で殺害された被害者。
容疑者たちを集めてポーカーゲームから犯人を推理するヴァンス。
2007年4月1日再読
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愛すべきヴァンダイン。現代では不当に評価の低いヴァンダイン。
まともに読み進んでいって真相に辿り着くのは不可能なのではないか?
それでも作品自体の雰囲気は好きだ。
事件に関しては、殺人現場の隣の女が、容疑者の一人がかつて雇っていた云々の所で、おおっ!そこを使うか!
と震えたのだが、真相は全然関係なかった。
トリックもいきなりの開示。
古き良き時代を感じさせる。
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ブロードウェイの名花《カナリヤ》が、密室状態となった自宅で、
無惨な絞殺死体となって発見される事件が起こった。
室内は荒らされており、物取りの犯行かとも思われた。
浮上してきた四人の容疑者にはそれぞれアリバイがあったが、
いずれも不確かであり、怪しい点は見受けられるが、
これという決め手はなく、捜査は思うように進まない。
今回も、マーカムやヒースの主張をことごとく否定し、
独自の理論で事件を解明せんと試みるヴァンスは
容疑者を一堂に会し、ポーカーを行うことによって
心理的な側面から犯人を指摘しようとする。
ファイロ・ヴァンスが活躍するシリーズの第二作。
原題「The Canary Murder Case」。
ヴァン・ダインはこれで二作読んだことになるが、
やはり自分はヴァンスのキャラクターが好きなようだ。
はっきり言ってしまえば終始屁理屈をこねているだけの男で、
あれで犯人を指摘できなければただの嫌味なやつなのだが、
たまにそれなりに凄いところを垣間見せてくれるし、
根は真面目なようだから結局は憎めない感じになっている。
前回もそうだったが、ヴァンスという男はどうも、
「名探偵」という感じのしないキャラクターだと思う。
おそらく、彼の推理法が物的証拠や状況証拠を
足がかりにして推論を組み立てるものではないからだろう。
どうしても根拠薄弱に見えてしまって、
それは推理というより、ほとんどただの妄想にしか見えない。
もともと論理的というよりは妄想的である
本格ミステリというジャンルの中において、その色が一際濃い。
ただ、それは別に欠点となっているわけではなく、
むしろヴァンスが語るそのうさんくさい妄想が
真実を言い当てているというところに
アクロバット的な面白さが感じられるのだと思う。
あと、ヴァン・ダインはキャラクター造形が堅い。
今回の事件は、被害者は社交界では有名な美女であるし、
容疑者もそれなりに遊んでいる連中ばかりなのだが、
華やかさであるとか、放蕩な雰囲気というのは
読んでいてまったく伝わってこないのだ。
そのようなニュアンスの表現はされているものの、
ただ文章で説明してあるだけ、といった印象でしかない。
このお堅い感じが、ヴァン・ダインの特徴のひとつだろう。
中盤までは前作と同じような展開だったが、
後半はいくつかミステリらしいトリックも登場するし、
真犯人は意外性の高い人物であるし、
それなりにクライマックスを感じることができた。
なんといってもポーカーで犯人を当てるという
その独創的なアイディアはやはり秀逸と言うべきだろう。
このクオリティでも、シリーズの代表作である
「グリーン家~」や「僧正~」にはまだ劣るというのだから
この先の作品を読んでいくのが楽しみになってくる。
クイーンのような派手さはないが、面白い。
個人的には、ヴァン・ダイン、かなりのお気に入りで���る。
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素晴らしい出来です。と言っても本作は読む人を選びます。カードはUNO、ボードゲームは人生ゲーム、手品はインチキとイメージされる方々から見ればそれは「浅はかな」内容と評価されても仕方がないでしょう。それに井上勇氏の翻訳を読み切るにはそれなりのものが必要ですし。
近年の国内の犯罪を見れば状況証拠のみで犯人を特定しているものも幾つかあるようですが、ダイン氏ならどう思うだろうか。ヴァンスならどう真実を導くだろうか、と思う。
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ヴァン・ダインの第二作
〈カナリア〉という異名をもつ女優が、自室にて絞殺される。容疑者は限定できるが、それぞれにアリバイがあった。また、部屋に侵入したものはいないという電話交換手の証言や不自然に荒らされた部屋が事件を難しくさせていく…。
作中で難しくしているのは、シチュエーションというよりファイロ・ヴァンスだったりする。結果的にはそれでよかったものの、シンプルに「あいつ」が犯人だったとしたら、戦犯ものである。
心理面からのアプローチで、どうやって犯人のアリバイが作り出されたかは二の次。ポーカーゲームで犯人を洗い出してから、さて犯行はどうやって行われたのだろうと犯行現場で神託を受けようとするヴァンスには流石だといわざるを得ない。そして、躊躇いもなく「やらせる」というのは流石の一言。
解説で述べられているとおりだとすると、当時でもこのトリックは既出のものであったということなのだろうか。
このシリーズは、トリックよりヴァンスを愛でるものでないかと思いだしてきた。