紙の本
バベル-17に隠されたものを解き明かせ。
2004/09/27 02:24
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:albrecht - この投稿者のレビュー一覧を見る
サミュエル・R・ディレーニイの長編の中では、「簡単な」部類に属するに違いない。少なくとも、この本が「むずかしい」と評されるのを聞いたことはないから。でも、やっぱり、この小説も他のディレーニイ作品と同じく、表面的なストーリー展開と、そこに込められた(あまり隠されていない)メッセージと、さらにその奥に何層にもわたってさまざまな象徴/主張/感情が織り込まれているハズなのだ。それがディレーニイなのだから。
まずは表面的なストーリーなのだが、すでにこのレベルがとてもおもしろい。
主人公は宇宙的詩人であり、若くて美人で暗号解読のエキスパートのリドラ・ウォン。彼女が、インベーダーによる破壊工作のときに必ず交信されるバベル-17という暗号を解読するため、エキセントリックな中間たちとともに宇宙を旅する。しかし、ゆく手には姿を見せないインベーダーによる妨害もあり、リドラたち自身の命も狙われる。
波乱万丈の物語にくわえ、リドラを助けるメンバーたちが多種多彩。かれら宇宙船乗組員には、自分のからだをサーベルタイガーのように整形しているパイロットや、皮膚がすべて透明で筋肉の動きがそのまま見えるように改造している航宙士(このイメージはものすごく強烈で、たぶん、一生忘れないだろう)がいて、モルグで「死んでいる」のもいるし、本当に零体化しているものもいる。リドラがかれらをスカウトしていくシーンは、一般人の税関職員を狂言回しに、目くるめくイメージが次々と繰りだされる。ディレーニイがウキウキしながらペンを走らせるさまが目にうかぶようだ。
さて、表向きは楽しい冒険譚だが、その実、体制vs.反体制、自由vs.全体主義、科学者vs.芸術家といったテーマが、すべてのキーとなる「バベル-17」を中心に展開されていく…と(個人的には)思っているのだが、ここらへんは人それぞれ受け取り方が違うし、あまり書いてはこれから読む人の興味を削いでしまうので細かいことは割愛。ただ1つ書かせてもらうとすると、リドラの幼少期の思い出に登場する九官鳥のように、一見、無邪気にならべられているだけのようにみえる「小道具」が、実は深くテーマにかかわっていたりする。さすがディレーニイ、気が抜けん。
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インベーダーの破壊活動に晒された地球(を含む "同盟" の星々)。インベーダーの侵略の前後に残される<バベル-17>と名づけられた通信。侵略を防ぐ鍵となる<バベル-17>の解読を命じられた宇宙的詩人リドラ。<バベル-17>の謎を解き、インベーダーから"同盟"を守れるのか?
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ハードSF物苦手な人でも
楽しめるお勧めSF物!?
美貌の詩人リドル・ウォン
魅力的な女性が主人公
あとは…
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本当は「エンパイア・スター」か「時は準宝石の螺旋のように」と行きたかったけど、データがなかった。全作品が好きです.
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The first postmodern computer language vs the first babel-17 computer language: Ruby
高橋征義氏の発表資料(YAPC::Asia 2006 TOKYO)から
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読んだのは銀背版。ブッチャーとの自閉症チックなやりとりがすごくよかった(けど、註はいらなかったな…)。らぶらぶ。
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その言語を学ぶことで広がる世界。「知る感動」を味わえるSFですね。この作者さんはなかなかユニークなんだとか。「アインシュタイン交点」も読みましたが、さらっとも読めるし、きっと奥深くも読めるんだろう(私はさらっとしか読めませんでした)と思います。
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時は未来の戦乱時代、地球は銀河同盟の一員として大規模な宇宙戦争を繰り広げています。敵の破壊工作が行われる現場で必ず傍受される謎の暗号「バベル-17」の謎を解くため、天才的な言語センスを持つ美貌の詩人リドラ・ウォンは個性的な仲間たちと共に宇宙へと旅立ちます。バベル-17が暗号ではなく未知の言語体系であることを突き止めた彼女は、その鍵を握るある人物と出会いますが・・・
表紙イラストのダサさには眼をつぶれ!(笑)
華やかなスペースオペラの体裁を取っていますが、その実態は空前絶後の「言語SF」。ネビュラ賞受賞もうなずける、玄人受けする傑作です。鴨は10代の頃に一度読んでおりまして、20年ぶりの再読です。が、
よくこれ読破できたな10代の自分。
と変な感動をしてしまうほど(笑)捻った作品で、たぶん10代の自分はかなり飛ばし読みしてたんだろうなぁ・・・(^_^;ディレイニーの作品にしてはかなり読みやすい方だと思いますけどね。
以前レビューしたディレイニー作品「ノヴァ」にも通ずるこの作品の特徴は、単なるSFには留まらない重層的な構造を持ちつつも、その一方でそうした知識を持ち合わせなくとも充分SFとして面白い、という点に尽きます。10代の頃にはたぶん読み飛ばしていたであろう言語理論に関わる描写についても、今回は10代の自分よりは理解しているとは思いますが(笑)100%理解した自信はありません(^_^;でも、言語を巡る一つの謎解きという視点で読むと充分スッキリしましたし、そういう意味でこの作品はSFであると同時に優れたミステリでもあります。
それに、何よりも登場人物たちがとても魅力的で、読んでいてもダレることがありません。天才的な資質がありながらコンプレックスの塊でもある主人公リドラ・ウォンの人物造形はもちろん、脇を固める仲間たちもグロテスクにしてチャーミングな連中ばかり。リドラを見守るトゥムワルバ博士との艶っぽい関係性もグッと来ますねうーん、10代の頃は気づかなかったことがいろいろと理解できる歳になったなぁ・・・(-_-)しみじみ。
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詩人にして、暗号解読の達人、宇宙船の女キャプテン、リドラ・ウォン。インベーダーが侵略に使う謎の通信を調べるために、船員を集め宇宙船ランボー号を敵の攻撃地点へと向わせる。
謎解きも好きだけれど、ヒロインをはじめ登場人物の内面描写も好き。私の中のベリー・ロングセラー。
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言語学をめぐるSFとしては斬新な部分もある。ただ、SFの楽しみ方を忘れて久しいから、のめり込めなかったなぁ。
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言語と宇宙は同じである。広大な夥しいほどの数の所有。幽霊と感覚は奇妙である。存在の有無にかかわらず感知することができる。チョコレートのようだ。ABC。DEF。これぞSFっていうSF。
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言語学をテーマにしたSFと聞いて興味を持ったので手に取ってみた。
リドラ・ウォンは敵エイリアンが使っている「バベル17」と呼ばれる言語を解読し習得する。さらにバベル17が優れた言語であることに気づきどんどんバベル17使って思考するようになったとき、知らないうちに自分の思考をバベル17に乗っ取られてしまうようになる。
思考やコミュニケーションに使う言語が話者の認識を決定しているという「サピア=ウォーフの仮説」という言語学の仮説があるが、『バベル17』の設定とストーリーはこの仮説を思い出させる。
各国の言語やバベル17で「円」という言葉を翻訳することで問題を解決するシーンやバベル17で思考することで敵宇宙船の布陣の弱点を突く野に成功するシーン、三角形の集まりでできた網をいとも簡単に破ってしまうシーンなど言語が思考や認識に影響を与えることを扱ったシーンが詳細な描写で描かれていて、言語を勉強している人間としてはとても面白く読めた。
とくに「あなた」と「わたし」が逆になったまま会話が交わされるシーンはまさにこの小説のハイライトだろう。
ただ、「プログラミング言語のようなもの」と作中で説明されているバベル17が人間の思考となじむのか、プログラミング言語に思考を乗っ取られてしまうようなことがありうるだろうか・・・という気もするけど、まあそこはSF小説なので。
とにかく、言語を通じてエイリアンから侵略をうけるというアイデアはすごく面白い。
中盤まではテンポよく読めるが、ラストはいまいち納得がいかない。バベル17の支配から解放された方法もなんだか適当すぎるように思った。バベル17に徐々に支配されていく描写がとてもていねいだっただけになおさらだ。
しかし総合的にみれば斬新なアイデアも面白いし、スペースオペラとしても冒険心をくすぐられて素直に楽しい。オススメ!
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ヘレン・ケラーの伝記のように感じました。
公衆電話が出てくる。スマホ(ケータイ)が出てこない。
情報の記録媒体がテープ。穴を開けるらしい。コンピュータ史の授業で少し習った気がする…
普通です。
真ん中あたりが面白かったです。
言語に関するお話でした。
少しの言葉で多くの情報を表せる言語があれば便利だなという感じです。
確かに便利だけど、メモリがすごくたくさん必要なので、習得するのは大変そうだと思いました。
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最初いやぁな感じの詩人リドラがだんだんチャーミングになるから不思議。ただ、やっぱり翻訳だとわかりづらい気がしてあまり楽しめず、結局原書を買った。でも言語SFって実はすごくないか!!
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「ほんのまくら」フェアで入手した一冊。なかなか手をつけられなかったんですが、読み始めたらノンストップでした。すんげー面白いです。うんちくやしかけ的な部分もさることながら、キャラクター造形がとても好みで、再読も楽しみ。ディレイニー作品は他に「コロナ」しか読んだことが無いが、キャラクターがみなとても優しくて躍動的でチャーミング。読んでて幸せな気分になる空気をまとっているので好き。
余談。この表紙だと自分はジャケ買いはしなかったと思うので、「まくら」で売って正解なタイトルだったと思う。出会い、あったよ…!