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紙の本
山ねこのしたたかさと、一郎の清々しさと。
2011/06/22 18:03
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildflower - この投稿者のレビュー一覧を見る
1985年初版、96年には10刷を数えた宮澤賢治の童話絵本。
表紙には一面金色に耀く野原の中央に葉巻をくわえている山ねこの姿が描かれています。
葉巻をくわえ、片眼を訳ありげに細めながらこちらをみつめてくるまなざしが良いのです。
タイトルは、風が野原から吹きよせているように見える動きのある事体です。
一郎少年のもとに、ある日届いた1枚のはがきにはこんなことが書かれてありました。
あなたは、ごきげんよろしいほで、けっこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいでんなさい。
とびどぐもたないでください。
翌朝、一郎が谷川に添って歩くまでに出逢う者たち――くりの木、ふえふきの滝、
白いきのこ、りす――の様子は万物に意志宿るようにいきいきと描かれます。
徳田秀雄さんの絵は、本作で初めて知ったのですが細やかな情感を伝えていて見事です。
誰かれに山ねこの行方を訊ねながら往く方角は、みごとにばらばらなのですが、ちゃあんと
最後には目的地にたどり着く。なんとも不思議な道ゆきです。
表紙に描かれていた金色の野原にようやく一郎が辿り着くと、おかしな風貌の小男がひとり。
山ねこの馬車別当と名乗るその男が、はがきの差し出し人でした。卑屈な小男と、鷹揚でダンディな裁判官の山ねこ。一郎のまっとうな礼儀正しさが清々しく、山ねこの抜け目なさもどこかにいるだろうと思わせるリアルなおかしさがあります。
山ねこを3日もの間悩ませた「めんどなさいばん」は一郎の智恵であっという間に片づいたのですが、その裁判も、その後の顛末にも諷刺がぴりりと効いています。
旧かな遣いを現代のかな遣いに直してあるので、小さなお子さんがひとりで読むのにとても
親切な作品だと感じます。(全国学校図書館協議会選定図書でもあります)
「童話」とありますが、賢治のことばと挿画の幻想的なハーモニーを楽しみながら、行間に
穏やかに差し挟まれた毒にニヤリとする、大人ならではの楽しみ方もできる作品です。
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