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著者がこれまで取り組んできた主要なテーマについて振り返って述べた文章が収められており、梅原日本学への導入として最適な本だと思います。
第1章の「日本学事始」は、著者と上山春平との対談。
第2章「日本の古代学」と第3章「怨霊と鎮魂の思想」は、『神々の流竄』『隠された十字架』『水底の歌』など、著者のこれまでの仕事の要点が分かりやすく解説されています。著者たちの考え方の根幹をなしているのは、次のような見方です。
本居宣長らの国学者たちは、『古事記』および『日本書紀』を、明るく直き日本の神の心が現われているものとして読み、津田左右吉らの批判的研究者たちは、天皇制イデオロギーを正統化するものとして読んできました。しかし著者は、これらの説をともに退け、アマテラスが孫のニギギノミコトを高千穂に降臨させるのに先立って、タケミカズチを出雲に派遣していたことに注目し、藤原氏が支配権を確立するとともに、国家に反逆して殺された怨霊たちを鎮めるために記紀神話が作られたと主張します。
著者の聖徳太子論および柿本人麻呂論は、こうした「怨霊と鎮魂」という枠組みに則って日本史を見なおす中で形作られていくことになります。
そのほか、もう少し後に著者の主要な関心事となった縄文文化とアイヌ文化との関わりについての文章も収められています。