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あたしのあ あなたのア ことばがうまれるまで 障害児の言語指導にことばあそびを みんなのレビュー

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紙の本

「遊び上等!」と障害児の母は思います。

2007/02/08 15:35

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る

 正直に告白すると、私はいままで谷川俊太郎氏の詩にはあまり興味を持てなかった。使われている言葉に魅力は感じるものの、自分とはまるで違うほうを向いている方の書いたものという印象が強く、うわすべりに流れていくだけで、心に入り込むものを感じなかった。
 その印象が、この一冊でまるっきり変わってしまった。
 本書は、谷川氏の詩による言葉遊びを実演する女優の波瀬満子氏や、障害児言語教育の専門家、養護学校の先生方など、数人による共著であり、どの章も読み応えのある内容となっているが、なかでも谷川氏による「ことばがうまれるまで」という文章には強い共感を覚えた。
 谷川氏は、言語獲得の難しい状態にある子供たちと、言葉の生まれる原点に立ち返った遊びを共有し、ともにたわむれることによって、障害・健常のあいだのバリアをなくし、気持ちの通じ合いというコミュニケーションの基礎になる部分の突破口を開くということができるのではないか、ということを語っている。
 谷川氏の文章は、ゆったりと口頭で語られているかのような文体で、あまりにも柔らかく書かれているので、要旨をかっちりととらえようとするのが難しいほどなのだが、核にあるものは強い意志によって導かれた挑戦的な試みの提示である。
 文章中に、こんな一節がある。
「波瀬さんのビデオを見たある現場の先生がたから、〈こんなものは言語教育とはいえない。ただいっしょに遊んでいるだけだ〉という声が出たと聞きました。困難な毎日を過ごしておられる先生がたにとっては、私たちの試みが遊び半分のように見えるのも無理はないとおもいます。しかし、私たちはその〈遊び〉こそが、障害児に限らず人間と人間のむすびつきをつくる大切な要素のひとつだと考えています。」
 悲しいことだが、「遊び」よりも「教育」のほうが、子供の成長を促す力にたけていると錯覚している大人はとても多い。
 しかし考えてもみてほしい。自分の母語をしかつめらしい「言語教育」によって身につける幼児が、いったいどこの世界にいるだろうか。皆あたりまえの暮らしのなかで念入りに世話をされ、かわいがられ、思う存分遊びながら、自然に言語を獲得していくのである。
 重い障害のある子供たちは、豊かな遊びの機会が極端に少ないまま成長せざるをえない場合が多い。そのことが言葉の土台となるべき気持ちの共有、共感するという体験の乏しさをもたらしているのだとすれば、「ただいっしょに遊ぶ」という時間を持つことが、どれほどその子供の人生にとって有意義で貴重なものであるか計り知れない。
 実際、子供に対して一方的に「言葉を教える」というアプローチの仕方は、コミュニケーションツールとしての言語の生き生きとした魅力を著しく損なう場合が多い。子供は、一方的に言葉の形式のみを教えられただけでは、それを使って相手に伝えたいというダイナミックな気持ちを育てることができない。けれども強い感情の交流を伴った遊びは、そのことをちゃんと教えてくれる。そうしたことに配慮のない教師が障害児教育の現場にあるのだとすれば、それはとても危ういことである。
 谷川氏自身は、障害児たちと直接には触れあったことがないという。そのことを残念に思う一方、子供たちと直接触れあわずにきたからこそ、言葉を紡ぎ出す職業の人として、言葉を獲得することの難しい子供たちの「生」というものに対して、純粋に思いをはせることができたのではないかとも想像する。
 言語芸術と言語教育が手を携えて、伝えあい共有するという言葉の世界に、言葉のない子供たちを引き込んでいく…言葉のない子を持つ親にとっては夢とも思うようなことが、本書のなかでは確かに具現化されている。

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