紙の本
予言的イマジネーション
2023/02/06 10:41
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投稿者:ちぃ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作が1929年に発表された作品だということにまず驚く。ナチスのガス室を思わせる描写があるのだ。
主人公は記憶をなくした透明人間化した探偵らしい。さらわれた姫を助け出し、1000階の館に君臨して住民たちを恐怖で支配する男と対決するためにやってきたらしい。館内を探索し、館の主の正体を探る。あらゆるエリアが風変わりで想像力にあふれている。
疾走感も良かったが、結末をどう収拾つけるのかと思ったらまさかの夢オチで拍子抜けした。それだけが残念。
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東京創元社2016年復刊フェア書目。
巨大なビルの中に広がる、不気味で幻想的な世界に惹かれる。猥雑でグロテスクだが、不思議と生々しさが無い理由は、オチのせいだろうか……(但しあのオチはあの時代だからこそ、だと思う)。
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タイトルに惹かれて購入。
記憶喪失の男が千階建てのビルの中でビルの支配者を相手に冒険を繰り広げる怪奇小説。
舞台が無味乾燥なビルでありながら、主人公はロマンチストとして活躍する。
表紙記載の粗筋以外予備知識なしで読み、当初は、アラン・ポー風味かと思ったが、読み進める内にロシア・アヴァンギャルドの絵画を見ている気分になった。
読了後、訳者解説を見て納得。
作者のヤン・ヴァイスは1892年生まれのチェコ人。当作品は1925年に書かれたものとのこと。
当時の前衛芸術運動が影響を与えたのであろう。
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おれは誰だ?天に聳える1000階建の迷宮で目を覚ました俺。チェコの巨匠ヤンヴァイスが1929年に書いた幻の傑作が復刊してたので迷わず拝読。記憶のない俺は所持品から自分は囚われたタマーラ姫救出の命を受けた探偵だと推測する。そしてそこは世界を支配し管理するミューラーの館だった。古いSFは無声映画を見るような楽しみがあるがこれは違う。モロダー版のメトロポリスかブレイドランナーあるいは江戸川乱歩のようなどこかレトロで奇妙な未来感とともに、戦前の資本家が作る奴隷社会の閉塞感が描かれ、美しいタマーラ姫との恋とミューラーとの対決へと話は進む。ミューラーとは誰か、神なのか悪魔なのか。そして色褪せない古典的ラストへ(≧∀≦)うーん名作!
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チェコの作家「ヤン・ヴァイス」の長篇SF作品『迷宮1000(原題:Dom o tisici patrech)』を読みました。
最近、ドイツとオーストリアの作品を読んだのですが、その隣国チェコの作品… 東欧の作品は珍しいですね。
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「おれはだれだ?」記憶を失って目覚めた場所は、天高く雲をついて聳えたつ巨大な舘。
全世界を睥睨せんがごときこの舘の主の名は「オヒスファー・ミューラー」。
いつは神か、あるいは悪魔か。
捜し求めるは失踪したタマーラ姫。
1000もの階層からなる超巨大建築を彷徨ううちに、“探偵”たるおれは、冒険家の集う町や他星系へ渡る人々の待合室、そして地獄に至る道を見出すが……。
訳者あとがき=「深見弾」
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1929年(昭和4年)に刊行された幻の傑作とのこと… 創元推理文庫2016年復刊フェアでの復刊作品です。
天をついて聳えたつ館… それは外界から隔絶され、ひとつ屋根で覆われた巨大な都市のごとくであった、、、
果てしなく続く、見も知らぬ1000のフロア… 館の中、おれは記憶を失った状態で目覚めた。
わずかな手掛かりから得られたのは、どうやらおれが探偵であること… 名は「ピーター・ブローク」、、、
捜し求めるは失踪したタマーラ姫の姿… 打ち倒すべきは館の主、神とも悪魔とも噂される全能の男「オヒスファー・ミューラー」。
やがて館の中に蠢きはじめる叛乱の影… この館がいざなうのは、はたして星の世界か、あるいは地獄か!?
100年近く前に、この世界観を描けた想像力については驚きですが… 面白いかというと微妙でしたねー 雰囲気は嫌いじゃないのですが、あまり入り込めなかったなぁ、、、
1000のフロアとひっかけているのか、ページ数も1001ページから始まっていたのが特徴的でしたね… まぁ、歴史的価値のある作品を読めたということに意義を感じるしかないかな。