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東プロイセンはじめ、国内移動によってルール工業地帯で主に鉱夫として労働に従事したポーランド人による民族=宗教的な諸団体及び運動と、それに対するプロイセン側の対応の概観。ただし題名のルール地方のみならず、ポーゼンなどプロイセン内での民族運動も比較的扱っている。だがそれならばさらに一歩議論を進めて、大きな意味でのポーランド民族主義としてこの問題を捉えることが肝心だったのではないか。本書の対象範囲を「ドイツ帝国内で少数民族として生きるポーランド人」に限定するならばこのまとまった記述は素晴らしいが、一九世紀以来のポーランド民族運動との関連性を考えるとき、会議王国や墺領ガリシア(後者については目立った動きはなかったとはいえ)における民族運動と連結させる視座は不可欠なように思われる。
<目次>
第一章 異郷と故郷
1,亡国の民
2,故郷から異郷へ
3,異郷のポーランド人
第二章 ポーランド人の結集と民族運動
1,民族運動のジャーナリズム
2,ポーランド人の組織的結集
3,ポーランド民族運動の広がり
第三章 ドイツ政治とポーランド民族運動
1,ポーランド労働運動の自立
2,帝国結社法とポーランド民族運動
第四章 「ポーランドの脅威」と民族抑圧
1,ポーランド人監視体制の確立
2,民族差別の拡大
3,社会的差別と解性問題
4,プロイセン政府のマズール人政策
第五章 ドイツ帝国主義とポーランド民族運動
1,東部におけるゲルマン化政策
2,ドイツ帝国主義と国民統合
3,ルール・ポーランド人の運動と民族意識
4,ドイツ国民国家とポーランド民族運動