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東京駅の東側の出口を八重洲口という。その八重洲口の地下街には、R.S.Booksという古本屋がある。以前は、もう一軒八重洲古書館という同じ書店が経営していた古本屋があったが今は閉店している。たまに用があっていくときは、立ち寄っている本屋だ。地下街に古本屋があるとは思いもよらないかったことと、本の品ぞろえがモクモク羊の好みに合っていて、なかなかいいなあと思ったからだ。
そんな八重洲という名前は、オランダ人に由来すると初めて聞いたときは驚いたものだ。時代は江戸時代にさかのぼる。あのヤン・ヨーステンだ。慶長5年(1600年)に、彼の乗っていたリーフデ号が今の大分県の臼杵湾に漂着した。家康の家来となり、今の八重洲あたりに土地をもらい屋敷を立てて住んでいた。「ヤン=ヨーステン」が訛って「耶楊子」(やようす)と呼ばれ、のちに「八代洲」(やよす)に変わり、おなじみの「八重洲」(やえす)になった。
今回の本は、確か神保町の古本屋で偶然見つけた。日本に定着している外来語に焦点を絞って書いている本なので、興味がわいて買って読んだ。
あの「3時おやつは文明堂」で有名なカステラは、カスティリヤ、カスティラと江戸時代には呼ばれていたそうだ。
カルタから発生して今に残っている言葉がいくつか挙げられている。たとえば、「うんともすんとも言わない」の「うん」と「すん」だ。著者によると、「ウン」はホルトガル語umで、1を意味する。一方、「スン」は、ポルトガル語summoの略で、最高あるいは最上級を意味する。
よくマスコミが「経済活性化のカンフル剤」などという言い方で使う「カンフル」。オランダ語kamferのことで、著書では、長崎に輸入される「竜脳」という眼病の薬として使われたフタバガキ科の喬木からとることができる一種の樹脂とある。「カンフル」にも歴史ありといったところか。「アベノミック」は、経済のカンフル剤になるかどうか気になるところだ。
あのマクドナルドが特定の月曜日の朝に限定してコーヒーSサイズを無料にしたり、自販機やコンビニに行くと必ず缶コーヒーがある。ある程度の街や駅の周辺にはスターバックス、タリーズ、ドトールコーヒー、サンマルクカフェ、上島珈琲館などのチェーン店があるくらいコーヒーが日本人にとって身近な存在となっているコーヒー。そんなコーヒーは、江戸時代「かうひい」と呼ばれていた。オランダ語でkoffieと言う。もちろんオランダはコーヒーを生産するのではなく、コーヒーを輸入、輸出していた。
この他にもさまざまな言葉が取り上げられている。1987年に発行された本だが、今読んでも色あせないいい本だ。
R.S.Booksのホームページ
http://www.kanaishoten.jp/3_shop/shop_rs.htm