紙の本
明治女学生残酷物語
2002/07/23 23:37
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投稿者:ぴろ - この投稿者のレビュー一覧を見る
『魔風恋風』は、明治35年読売新聞で連載され、人気を集めた作品である。
ヒロインの初野は、名門女学校で主席の優等生で、道を歩けば誰もが振り返る程の美貌の持ち主。物語りの始まりは、初野が自転車で事故を起こし、怪我をして病院に入院させられてしまう所からである。初野は、父を早くに亡くし、母は妾であったため、実家は富裕であるにも関わらず、僅かな仕送りしか貰っていなかった。そして、兄は初野の入院費を出すことを拒むのだ。そこが、初野の悲劇の始まりである。初野は、その後、兄と喧嘩をし、仕送りを止められ、その上、実家から逃げてきた妹まで養わなければならない。初野に関心を持った男は、初野を愛人にするため、貧窮した初野の弱味に付け込み、様々な甘言と弄作を練る。
これでもか、これでもかと初野を襲う悲劇。
読んでいると、明治の女学生は随分好奇な眼差しによって、消費されたんだと知り愕然とする。
だが、明治の女学生というものを知りたいと思った場合格好の資料であり、興味深い。
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会話で話が進んでいく。
100年以上前の作品なのに、すらすら読める!!
明治30年代に急激に増えた女学生をヒロインとして、その「堕落」を描く。時代的な限界はあるものの、昼ドラにできそうな話の筋でおもしろい♪
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明治30年に読売新聞に連載。新聞の再販を促したほどに人気を博した。
帝國女子学院に通う萩原初野は、才色兼備の麗しい女学生である。ところが、卒業試験を間近に控え、卒業後の立身出世を夢見て勉強に勤しもうとする初野に、次々と問題が降りかかる。自身の入院、妹の家出、腹違いの兄が戸主となっている実家との絶縁、許婚のある大学生東吾との関係…。やがて初野は金銭に窮し、脚気をも患う。
自転車に乗ってさっそうと登場したヒロインなのに、これでもか、これでもかと、コテンパに痛めつけられていく。勉強でもお金でも恋でも、何か一つくらい成就させてやったらどうかね?と思うのだが。
さながら”有名人の転落人生”なんていうテレビ番組を見ているようだ。
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小杉天外の長編小説。1903年(明治36年)2月25日~9月16日まで『読売新聞』で連載。大変な人気を博した。
戦後岩波文庫に入り、いったん絶版となったが、本田和子氏が『女学生の系譜』(1993年)で論じてより、明治の女学生を論じる際の定番テクストとなった。
当時の男女学生の風俗が描かれた悲恋物語の前篇。
才色兼備の女学生、萩原初野。自転車で転んで骨折するシーンは、時代は違えど、あの名作『はいからさんが通る』の花村紅緒を想起した。
どんな困難があっても他人を頼る事はせず、己の力だけで生きて行くのだ! と、勝気で確りした、堅い気質の女性像が鮮烈だ。
そんな容姿・気質が禍して、初野に様々な困難や危機が次から次へと訪れる。巻き返しを図るべく、一大決心をする所で前篇は終わる。
物語がスピードを増し、読む手に力が入った。
当時の大衆も、次の日の連載を楽しみに待って夜を越したのだろう。
立て続けにやって来る厄災に、初野が可哀想でもあるが、彼女に限らず、明治の女性の考え方や生き方も、文章から鮮やかに浮かび上がる筆致には、面白味がある。
カテゴリーとしては通俗小説なので、当時の世相を面白く、ハラハラドキドキしながら知る事が出来る。
さて、後篇は如何なる展開で結末まで導いてくれるのか…。