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ローマンブリテン3部作の三作目。
満場一致でカーネギー賞を受賞したサトクリフの最高傑作です。
ピクト人の侵攻が激しくなり、ローマの国力も衰え、属州から撤退を決めた時代、一人の青年が、軍とともにローマに向かうか、脱走するか、煩悶します。しかし彼の悩みは、家がピクト人に襲われ、家族が殺され、妹がさらわれたことで、一気に復讐と妹の奪還に変ります。
アーサー王伝説の一つのモデルのアンブロシウスに使えながら、アクイラは目的に向かいます。しかし、異民族の子を身ごもった妹はもう、彼のもとへ帰る気を失っていました。挫折と、そして復活…。
いい作品です。是非どうぞ。
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いがみ合う者と共に長く生きてしまえば
愛や愛着が生まれてしまう。
まさに真っ暗な時代に灯一つを掲げて進んでいくような物語。
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日本の蜜蜂は花の時期が長くてたくさんあるからおっとりして、西欧は花の時期が短いので、余所者が入ってくるとまずそれを排除する。ということを何かの本で読んで、蜜蜂にも国蜂性(!?)があるのだと思ったことがある。歴史の教科書に書かれた一行の民族の大移動も、食糧を求めての命をかけた闘いだったと思うと、とても重い。現代の日本に生まれてよかったと思い、理想論かもしれないけれど、タイトルのように希望があって良かったと感じた。
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生きる目的を探して。
すべてを無くし、生きる目的にしてきたものも失い。
なお生きる目的を探して。
見つけたのは家族。
主役は男性だけど、女性の悲しさと強さもしっかり描かれているように思います。
本意ではないどころか、強引に妻とされ、子を持たされた女性が、それでも子を愛し、妻としての自分に存在意義を見出し生きていく。
私はどうしていいか分かりませんでした、あの部分を読んだ時に、とにかく落ち込むしかなかった。
私もあの時の主人公と同じように、真っ暗になった。
そこからどう生きていくか。
何を目的に、その過去にどう折り合いをつけて、先に歩くのか。
結局敵と同じことを自分もして。
それに自分はどう向き合っていくのか。
自分の家族、か。
自分の子、か。
遠いなあ。
小学校高学年なら読んでいけます。
多分冒険もの、ファンタジーのように読むことになるでしょう。
でも、私とは感じ方が全然違うでしょうね。
私が大人だからこそ面白いのかもしれない、このお話しは。
子供がどう感じるか、私はこの本を自分の中で処理するのに必死で、そこまで考える余裕ができませんでした。
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児童書として出版されていますが、手ごわいことこの上ありません。
何しろ全然知識のない時代の歴史小説なので、地名も人名も読む端からごっちゃになってしまいます。
ローマ帝国の衰退期。
ブリテンにおけるローマ正規軍が撤退してから40年が過ぎ、最後のローマ地方軍団も撤退が決まります。
ローマ地方軍団というのは、ローマ兵士と土着の民との間に生まれた子たちの子孫で成り立っているので、頭ではローマに忠誠を誓っていても、心も体もブリトン人になってしまっています。
だってローマ人は450年もこの地を治めていたのですから。
生まれも育ちもブリテンの人の方が多いのです。
元々ブリテンに住んでいたケルト人と長い間ローマ人は戦っていたのですが、最近になって北方からサクソン人が続々とブリテン島にやってきて争い事が絶えず、本土に増兵の要請をしていたのですが、ついにローマ兵は撤退することになったのです。
主人公のアクイラは、最終的に軍を脱走して自分の故郷に帰ります。
自分がローマに行くと、故郷には目の不自由な父と16歳の妹が、ローマ兵の守りもなく敵に取り囲まれてしまうからです。
しかしアクイラ一人が残ったところで敵の侵略を止めることができるわけはなく、父は殺され、妹はサクソン人にさらわれ、自分は別のサクソン人(本当はジュード人)の元で奴隷になってしまいます。
アクイラが生き延びるための心の支えは、妹との再会と裏切者への復讐。
脱走して自由の身になったアクイラは、ローマ人〈ブリトン人〉として一番の実力者であるアンブロシウスに仕えます。
ケルト人とサクソン人が連合を組んだり、ケルト人とブリトン人が同盟を結んだりしながら、どの陣営も傷を負い、死者が出るわけで…。
愛のない、政略結婚のような結婚。
転戦に次ぐ転戦で家庭を顧みることもなく、心のどこかに空疎な思いをかくしながら生きたアクイラの人生の苦さは、児童書として読めばかなりハードです。
歴史小説としても、現在のイギリスにブリトン人がいないことを考えると、アクイラの人生だけではなくブリトン人の状況も明るいものとは言えません。
ひとまずサクソン人を撃退し、アンブロシウスが王として戴冠した日に、王の主治医であるユージーニアスが言います。
“「われわれはいま、夕日のまえに立っているようにわしには思われるのだ。(中略)そのうち夜がわれわれをおおいつくすだろう。しかしかならず朝はくる。朝はいつでも闇からあらわれる。太陽の沈むのをみた人びとにとっては、そうは思われんかもしれんがね。われわれは『ともしび』をかかげる者だ。なあ友だちよ。われわれは何か燃えるものをかかげて、暗闇と風のなかに光をもたらす者なのだ。」”
著者のことばによると、サクソン人がブリテンを征服するまでに250年以上かかったそうなので、戦乱の日々はまだ続いていたということですね。
自分は『ともしびをかかげる者』である、と胸を張って言えるだろうか。
重たい物語ではありましたが、読後感はとてもいいです。
ア���イラは自分の人生に誇りを持って生き、それが報われるような終わり方でした。
大満足です。
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まず作者がサトクリフだし、「第9軍団のワシ」を手こずって読んだし・・・で恐る恐る読みだしたのですが。
いや~よかった!さすが、サトクリフ!!(手のひら返しではなく、最初から尊敬してます)
アクイラの心情や、大人になるにつれての心の在り方もわかったし、彼に影響を与えた妹、妻の書き方も良かったし、息子との関係性もあるあるって思えたし。
私がサトクリフを理解できるおとなになったってことかなあ。ともかく、脱帽の作品でした。