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著者は関東大震災による壊滅的な被害からの約10年間、いわゆる「復興期」の建築ラッシュこそが現在の東京の原風景をつくったと考え、昭和10(1935)年に都市美協会が発行した写真集『建築の東京』を手に、そこに収められた500件ちかい建物を地道なフィールドワークによって訪ねあるく。訪ねあるいた昭和61(1986)年、『建築の東京』発刊から50年を経過した時点で踏査できたのは450軒、すでに半数以上の建築が姿を消していた。建物の現存を確認すると同時に著者は、そのわずかな期間のうちに出現した建築の数もさることながら、そのスタイルの百花繚乱ぶりに驚かされる。アールデコ、ドイツ表現派、フランク・ロイド・ライト風、インターナショナルスタイル、古典風、日本趣味……そうしたさまざまな様式と思想があたかも当然のごとく並立し、ときに混交しながら乱れ咲いている。その折衷的なあり方こそが、「復興期」の建築のなによりもの特徴であると著者は言う。建築に限らず、そこには西欧の文化をわずかな時間のうちに受容し消化していった島国「日本」の姿があるのではないか。