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紙の本
やせっぽちのわがまま王女登場
2003/01/14 23:18
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投稿者:成瀬 洋一郎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
旅の中でガリオン少年は夢にも思い描かなかった事実を次々に知ることになります。
自分たちの旅は、彼がおとぎ話の中の存在と思いこんでいた「珠」、世界の運命を左右する力が盗まれたため、それを追跡するためのものであるということ。同行する怪しげな商人や戦士は実は諸国の王侯貴族であり、それどころかウルフ老人は伝説の魔法使いベルガラスであり、ポルおばさんはその娘ポルガラであるということ。そしてガリオン自身もそのベルガラスの血筋にあたるというのです。ガリオン少年は、大魔法使いや王子の集団に囲まれ、途方に暮れながら世界中をかけずり回りますが、ベルガラスと別れた隙にガリオンらは蛇の国ニーサの虜となり、ガリオンは女王の前に引きずり出されてしまいます……。
この巻あたりまでは人物と設定の紹介という側面が強いようです。酒と女が好きな魔法使いベルガラス、しっかり者で家事万能の魔女ポルガラ、狡猾で抜け目ない商人ケルダー王子(シルク)、無敵の騎士マンドラレン卿、わがままで気まぐれな王女セ・ネドラetc…。こうしたそうそうたるメンバーに囲まれ、いまだ心は平凡な農場の下働きのままのガリオン少年、そして彼と共に農場から来た正直者の鍛冶屋ダーニクは、華やかで複雑な貴族の世界、あるいは怪物や魔法との戦いに戸惑うしかありません。彼らにとって世界とは、農場の周辺だけであり、政治や戦争は別の世界のこと、魔法などはおとぎ話の中にだけ存在するもののはずでしたから。しかし、こうした彼らの戸惑いにかまうことなく、世界は彼らを中心に動き始めるのです。
この話の唯一の欠点は、登場人物の名前が多すぎることかもしれません。シルクがガリオンに語ったように、名前や身分は服と同じで、時と場合に応じて着替えていくものなのです。ただでさえ多すぎる登場人物が、時や場所が変わるたびに名前を変えていきますから、横文字の名前が覚えにくいという人は最初のうちは混乱するかもしれません。でも読んでいくうちに、だんだんと慣れていきます。そう。名前などは服と同じ。いつでも変わらぬ中身の人たちが、そこにいるのです。それに気がついたとき、それがこの本の面白さに取り込まれたときなのです。
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