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車から落ちた裸婦像。その中に封じ込められた女の死体。 そんなショッキングな場面から始まる表題作。まさしく乱歩の世界。 同様に像の中に死体を封じ込める描写はいくつかの作品で見かけたはず。また、美しい男女を剥製状にしてコレクションする作品もある。 ピグマリオンという言葉を知ったのも、乱歩を読んでいたからこそだが、このような形の愛着は、当時よりももっと一般的になってきているのではないか。 フィギュア。美容整形の一般化。男女を問わない肉体の改造指向。 現代版黒蜥蜴がどこかに美の屋敷を持っていても荒唐無稽とも言えない。 「猟奇の果」はSF仕立てでどこかに子孫的作品がありそうな内容。 解説では、出版社側の無理強いで登場となった明智小五郎の存在が作品を首尾一貫しないものとしてしまったとある。 他の作品にも言えることだが、連載の途中での路線変更を感じる場合があり、矛盾や竜頭蛇尾の思いを抱くこともしばしば。致し方ないことと思いながらも、より高度に昇華した「完全版」を求めてしまう。 さすがに、まだ子供には読ませられない一冊。