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1909年(明治42年)。
糾える縄の如く、二つの語りが絡み合い、呼応し、やがて一つに収斂される。芸道に身を置く者達の、狂おしくも美しい因縁話。凍てつく夜、月と、掛行燈の灯のもとで。
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ちょっと旧表現が出てくるので
読みづらさを感じてしまうでしょう。
でも全体に漂う空気は非常によい感じです。
それと昔ながらの作品ですが
笑わせてくれるところもありますしね。
(按摩の所ね)
そして必見は神秘的なラスト。
意味はわかりづらいですが
お勧めの場面です。
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古市の按摩さん!
月の夜、強い風、按摩の道にうごめくさまが不気味…意味を正確にとれない箇所もあるが、不吉な場面を切り取とり重ねていくので、”理解”というよりも”感覚”に近い。
最後五頁、舞と謡の緊張と高まり、喜多八かけつけてからの加速が息をのむ。
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好きな鏡花作品中でも、多分、一番好きな作品。
芸に懸ける執念や自負が怖い程に描かれております。
芸の至高と愛の至福は両立しないものなのでしょうか?
ラストは圧巻ですね。
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はじめはバラバラだった情景や人物や物語が、後半でひとつの流れになって加速する。舞と謠と、桑名の夜の風の音が聴こえてきそうなラスト。興奮。
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冬の桑名の月の夜、うどん屋の店先で酒をあおる 旅芸人若者は、なぜか夜空に響く按摩の笛に怯え ている。やがておかみを前に3年前の因縁話を語 りはじめた同じその頃、旅屋湊屋では、芸妓お三 重が旅の二老人に薄倖な身の上を明かしていた。 二つの語りの交錯が幽艶な陶酔境を現出する鏡花 一代の傑作。
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古く、艶やかな文体。舞台の寒さ、うら寂しさが伝わってくる。ふたつの物語が進行し、終盤に明かされる事実によってそのふたつは交錯する。独特の雰囲気が好きでした。
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収録作はタイトルの歌行灯のみ。
とはいえそれほど長い話ではなく、頁数もそれほどないです。
調子の良い文体で書かれていて比較的読みやすく、あっという間に読んでしまいました。
泉鏡花はこのころの他の作家に比べるとプロットがしっかりしていて、読んでいて続きの気になる物語を書く作家だと思います。
本作も、一見無関係に見える2つのストーリーが同時に進められ、終盤で一処に集約するという構成になっており、物語として面白かったです。
2人の老人、弥次郎兵衛と捻平は、旅の道中、名物の焼蛤に酒を酌み交わすべく湊家という旅籠に入る。
一方で、その旅籠の近隣の饂飩屋にある門附の男が訪れる。その門附が爪弾く博多節は見事なもので、饂飩屋の亭主と女房は聴き惚れる。
弥次郎兵衛と捻平は、周囲の景気の良さに絆され、酌人を頼みたい、が、人がいないため、お三重という娘がやってくるのですが、このお三重が芸者だのに三味線も弾けなければ、踊もだめ、唯一、唯一つだけ舞の真似事ができるのだという。
門附は饂飩屋で、やはり周囲の賑やかさに酒を飲み、按摩を呼ぶ。按摩にかかるのは生まれて初めてだという。
そこで、自分は過去に、按摩を殺したことがあると告白をする。
そして捻平は、唯一できるという三重の舞を見て大層驚く。
導入部分は軽い感じで書かれているのですが、物語がさわりに入ると怪奇趣味な雰囲気になります。
ただ、怪異小説、幻想小説的なテイストは薄いため、泉鏡花の代表作としての出来栄えは申し分ないのですが、氏の入り口としては相応しくないかと思います。
また、泉鏡花は同世代の作家に比べると読みやすいのですが、本作は2人の老人の話、門附の話、三重の話、門附の過去の話がパラパラと切り替わり、話が分からなくなりがちなため、注意して読む必要があります。
物語としておすすめ。能を題材とした作品ですが、造詣がなくても楽しめます。