紙の本
1万年前の武器による殺人
2002/02/27 23:14
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投稿者:キイスミアキ - この投稿者のレビュー一覧を見る
雨林が広がる国立公園で、人骨が発見される。この森では、数年前には2人のハイカーが遭難し未だに発見されておらず、2週間前にも1人の女性が行方不明となっている。
友人のFBI捜査官ジョン・ロウからの依頼で、発見された骨の鑑定にあたったギデオン・オリヴァーは、この人物が一万年前に絶滅した種族が使用していた武器で殺されたという結論に至る。
エルキンズ作品の魅力は、好意的に個性的に描かれている登場人物の存在にある。特に、警官や老人に対して作者が待遇は特別なもの。ジョン・ロウとの友情は他の作品でも披露されているし、距離感や主人公ギデオンとの生活の不一致が面白い。ギデオンの恩師であり、老人でもあるエイブ博士との会話は、事件解決に必要な情報が与えられる重要な場面となっている。
一かけらの骨から、さまざまな情報を引き出してしまう、本シリーズ最大の見どころであるこの過程には、読者が疑問を挟む余地がないほど、難解で専門的な知識がなくては踏み込めない領域が存在している。
読者は、疑問を挟みたいと思う前に、そんな面倒なことをしなくてもいいという気持ちにさせられてしまう。エルキンズの作ったギデオンというキャラクターには、それだけの説得力と、彼だけの領域といったものがあるのだろう。名探偵には、特別な説得力が備わっていなくてはならないものなのだ。
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わたしが大学で専攻してたのは文化人類学ですが、もうひとつ自然人類学というのがあって、このミステリーの主人公、「スケルトン探偵」のギデオン教授はそっちのほうの専門。現場に残された「骨」を鑑定して、性別や年齢、体格、はてはその人の生前の特徴までぴたりと当ててしまうそのプロセスが面白い。事件の舞台が毎回なぜか風光明媚な観光地で、ちょっと「いい旅夢気分」入ったりするところ(笑)もユニークなシリーズ物です。
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スケルトン探偵ギデオン・オリヴァーと愛妻ジュリーの馴れ初めを描くシリーズ2作目。舞台は米ワシントン州の国立公園内の原生林。
「骨」の推理はちょっと(ちょっとグロいシーンあり)。
ギデオンとジュリーが親しくなっていくさまもロマンチックだが、謎もまたロマンチック。まさかホントにそのまま行くとは思いませんでした。ひとひねりはあるけれど。彼らの歴史とこれからを思うと、胸が痛みます。ギデオンたちと彼らとのつかの間の交流の描き方や、事件の解決方法も好きです。ジュリーはたいへん魅力的で、オリヴァー教授がめろめろになるのが理解できるように描かれている。(でも初めての場面、砂利の上の寝袋で、しかも誰かに監視されていると感じながらやるかね。そして、「数秒のことだった。」っていうんですけど、ええっ数秒で?! と思って読み直してしまったが、やっぱやったらしい。)
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このシリーズの読みどころは数あるが、その1つにギデオンとその妻ジュリーの仲睦まじいやり取りがある。毎度毎度ケンカすることも無く、けっこう年取った夫婦でありながらも熱々ぶりを披露する2人(逆に云えば、もっと2人に何か起きてシリーズに新風を吹かすくらいの演出をすればいいのにと思うが)。
その2人の馴れ初めが書かれているのがシリーズ第2作に当る本作。余談になるがシリーズ第1作“Fellowship Of Fear”は現在も訳出されていない。聞くところによると、第1作目はどちらかといえばホラー色が多く、シリーズとは異質の内容らしく、恐らく作者自身も封印したいのではないか。したがって本作こそが実質的なシリーズ第1作といっていいだろう。
物語の舞台は本国アメリカはワシントン州にあるオリンピック国立公園。ここで人骨の一部が見つかり、その調査をギデオンが頼まれる。そこでは6年前にハイカーが行方不明になった事件があり、その人物の遺骸であると判明する。しかし不可解なことにその骨に残った槍の穂先はなんと一万年前に絶滅したはずの種族の物だった!
非常に興味深い内容で、しかも学術的趣味に溢れている1作だ。まずオリンピック国立公園に関する薀蓄。なんとこの公園は実在し、敷地は神奈川県よりも広い(!)らしい。さらにギデオンによる骨の鑑定シーンで得られる法医学知識。そして本書に絡む幻のネイティヴ・アメリカンと云われるヤヒ族の話。
ギデオンが未来の妻ジュリーと出会うのはこの奥深い森を持つ公園。ジュリーの職業はパークレンジャーであり、密猟や森林の管理、そして遭難者の捜索など、全般的な公園の監理業務が彼女の仕事である。そこで遭難したギデオンを見つけた彼女はこの奥深い森の中で一夜を過ごす。そこに性的交渉はないものの、この非日常的状況が2人をくっつけるきっかけになったのは自明の理で、まあ、ベタといえばベタか。
また本書では準レギュラーのFBI捜査官ジョン・ロウも出てくる。つまり本書で既に固定キャラは登場してしまっているのだ。
やがてヤヒ族最後の生き残りが見つかり、ギデオンらは感動に震える。作者は元々大学教授であったこともあり、このような学術的な発見はいつか自分も成しえたかった夢であったのだろう。それを自作で実現させたように思える。
さて今回だが、個人的な話をすれば犯人は解ってしまった。これが解らなければ、本書は私の中でかなり上位になったかもしれない。骨の鑑定から一万年前の槍の穂先が見つかり、それを裏付ける絶滅したと思われるネイティヴ・アメリカンの登場。ここまでの流れはミステリではなく、冒険小説の筆運びになるからだ。いわゆる噂のみで存在する財宝を発見する話と変わらない。そう思わせておいて、実はミステリだったという、仰天の展開が繰り広げられるのだから、そうと思わずに読んでいれば傑作と褒め称えただろう。実際故瀬戸川氏は本書を大絶賛している。しかし、私の悪い癖で、推理とは関係のないところ、云わばミステリ読みの勘とも云うべき部分で真相を見抜いてしまった。しかしこれはこれで自分で謎を解いたのだから作者とのゲームに勝ったという意味で楽しめたと云える。
私は常���作家の作品は刊行順に読むべきだという持論を述べているが、本書に関しては特にそうは思わなかった。本来ならば刊行順に『暗い森』→『断崖の骨』→『古い骨』→『呪い!』と読むのがいいのだろうけど、逆にこのシリーズでは『古い骨』、『呪い!』でさんざん見せ付けれらた2人の熱々ぶりのそもそもの始まりを知ることになって逆に興味深く読めた。
このシリーズが好きな方は決して読み落とすべき作品ではない。なぜなら・・・って云わないでも解るか。
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ミステリ。ギデオン・オリヴァー・シリーズ。
あらすじから、絶対好きだろうと思っていた作品。
予想通り、とても好きだった。
特徴は、探偵役を務めるギデオンの捜査スタイル。
骨から得られる限られた情報から推理をする過程は独特で、ワクワクしながら読んだ。
独特な捜査過程のミステリとして、川瀬七緒さん・法医昆虫学捜査官シリーズを連想した。
ロマンス展開と、冒険小説の要素もあり。
これはシリーズ作品、全て読みたい。