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(2014.06.28読了)(2007.05.04購入)
副題「行動学からみた言語起源論」
5章までは、霊長類の話で、6章からは人間の乳幼児の話です。いずれも今まであまり取り上げられてこなかった部分の話です。
霊長類が仲間同士で差し迫った危険を教え合うということは知られていました。ここでの話題は、声でだれが発している声かを聞き分けていて、個別の個体に呼びかける声も存在するというのです。ある霊長類では、30種類ぐらいの鳴き声があって区別しているというのは、どこかで読んだことがあるのですが、特定の個体に呼びかける声があるというのは初めて知りました。
また、鳴き声は生得的なものではなく、群れの中でほかの仲間の鳴き声を聞きながら習得するものであることが、実験で確かめられたとのことです。
人間については、1歳前後から少しずつ言語を習得してゆくので、そのあたりからの研究は割と行われているのですが、生まれてから、単語をしゃべり出すまでの間のことは、余り研究されていなかったようです。
著者の研究によると、生まれて8週目ぐらいと26週目ぐらいの乳児を比較してみると母親の呼びかけに対する反応が、だいぶ変わってくるということです。
母親の言葉への反応が、だんだん母親の言葉の意図を理解したものに変ってきている、とのことです。
乳児に直接インタビューして聞くことができないので、どうすれば分析・確認できるかというのは、実に難しいことでしょうし、他の動物のように自由に環境を変えたりの実験がしにくい面もあるので、研究者の工夫も大変そうです。
【目次】
はじめに
1 仲間の名前を呼びあうサル
2 サルの会話を分析する
3 なぜ警戒音を発するのか
4 音声言語の知覚
5 発生を学習する
6 乳児の音声発達
7 泣き声の発達
8 今後の展望
あとがき
参考文献
●クモザルは名前を持っている(13頁)
クモザルの音声コミュニケーションの場合、彼らの行動を詳細に観察してみると、命名体系にあたるようなものを所有していることが明らかとなってきた。筆者は、一頭のクモザルがある音声を発すると、それに応答したり、発し手に接近していくのは、いつも複数のクモザルのうちの一頭に限られていることに注目した。
●プレイバック実験(24頁)
テープレコーダーで録音した仲間の音声を聞かせて、その動物の反応を観察する
●音声コミュニケーション(75頁)
プレイバック実験を始めとする音声コミュニケーションの分析技法の大半は、まず鳥類の研究から発達してきたと言っても過言ではない。初期の霊長類での研究は、したがってトリで明らかにされたことを、またサル類でも検証するという、「しょせん、霊長類も音声を使ってトリと同じことをしているのか」と陰口をたたかれてもやむを得ない地位に甘んじていた。鳥類ではプレイバック実験は、非常に単純な状況設定で実にクリアーな結果をもたらす。ところが霊長類では、なかなかうまくいかないことが多い。
●位置情報(75頁)
集団のメンバーのある特定の仲間の位置についての情報は、動物にとって、われわれの想像をはるかに���える貴重な特性なのではないかと私は思いはじめている。
☆関連図書(既読)
「0歳児がことばを獲得するとき」正高信男著、中公新書、1993.06.25
「子どもはことばをからだで覚える」正高信男著、中公新書、2001.04.25
「子どもとことば」岡本夏木著、岩波新書、1982.01.20
「小鳥はなぜ歌うのか」小西正一著、岩波新書、1994.05.20
「サル学の現在(上)」立花隆著、文春文庫、1996.01.10
「サル学の現在(下)」立花隆著、文春文庫、1996.01.10
(2014年7月1日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
赤ちゃん語とサル語の百科全書。人間だけしか話さないと思われていた言葉を実はサルも話していることがわかった。