紙の本
格好の環境倫理学入門
2001/07/01 01:44
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:sai - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書によれば、環境倫理学の基本的テーゼは、三つある。
一.人間だけでなく、生物の種、生態系、景観などにも生存の権利があるので、勝手にそれを否定してはならない。
二.現在世代は、未来世代の生存可能性に対して責任がある。
三.地球の生態系は開いた宇宙ではなくて閉じた世界である。
環境倫理学とは、これらの基本的テーゼを土台にして、現実の環境問題を解いていこうとするもの。本書は具体的な環境問題を例にとりながら、上に挙げたテーゼが、説得力を持ちうるかどうかを丁寧に検証していく。たとえば、〈時代によって価値観が違うんだから、未来の問題は未来で解決するべき〉という歴史相対主義は、命の選択と趣味の選択を混同している、といった具合に。こうした典型的な反論の可能性を検討しながら、自らの主張を展開していく方法論は、同時に論理構成力も養ってくれることだろう。
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個人も企業も行政も考えなくちゃいけない「環境問題」
でも・・環境の意味をはきちがえていませんか?
原点に戻って環境を学べる一冊です。
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割と有名な本。
世代間倫理とかについて考えさせられるいい機会になったのではないかと思う。
あと、権利の拡大とか。
倫理嫌いにとっては、読むのは結構辛いものがあったけれど、最後に参考文献もまとめられているので、そこそこ便利。
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かなり昔に読んだ本だが、環境保護が単純に善とされている現在、環境問題に対する考え方を整理するにはよいかもしれない。
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[ 内容 ]
地球規模での環境破壊が問題になり始めた七〇年代、アメリカを中心にエコロジー運動の哲学的・倫理学的基礎の解明をめざして生まれた思想―それが環境倫理学である。
本書は、環境倫理学の三つの基本主張:自然の生存権の問題、世代間倫理の問題、地球全体主義の紹介から説き起こし、対応を迫られている様々な環境問題について、どのように対処すればよいのかを具体的に提言する、本邦初の「環境倫理学」入門の書である。
[ 目次 ]
環境倫理学の三つの基本主張
「中之島ブルース」―または人間に対する自然の権利
世代間倫理としての環境倫理学
地球全体主義の問題
日本の使命
人口と環境
バイオエシックスと環境倫理学の対立
ゴミと自然観
世代間倫理と歴史相対主義
未来の人間の権利
権利はどこまで拡張できるか
アメリカの自然主義と土地倫理
生態学と経済学
再考、再興、自然主義!
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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割と古いのだけれども、環境問題における主要な論点をあさるには手軽な本。
なんつーか、良くも悪くもない普通な本。
ただこの本を通してしった熊沢蕃山の思想は結構お気に入り
「人は小体の天にして、天は大体の人」
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工学の世界にしか目を向けていないと「なんだかよくわからない」ことに対して、少しずつヒントを与えてくれるから面白い。
例えば国立のマンション訴訟に関しては、一言で「景観論争」と言ってしまうとそれまでだが、もっとよく考えてみると根底には、近代的民主主義の構造的欠陥があることがみえてくる。そうしたことを初めて示唆してくれたのが環境倫理学(鬼頭や加藤の論)。つまり視覚的な意味だけで景観がどうのこうの、と言っていても問題解決の助けにはなるまい。「景観論争」ではないのだ。
もう一つ書いておきたいのが「生態系」のこと。
生態系を守ることが絶対的な善であると捉えられがちな今日であるが、守ることの意味・意義についても、加藤はいくつかのヒントを与えてくれている(11~13章)。
※以下、付記)
「バイオエシックスと環境倫理学の対立」という論点には「当事者主権」など(あるいは「生活と観光」とかも)いろんな問題が集約されている気がした。
また、「権利はどこまで拡張できるか」という章では、自然そのものに権利があるのか?死んだ人間は?植物は?植物人間は?胎児は?動物個体は?と、議論が相当哲学的(ハイレベル)で、完全にはついていけないのだが、断片的に考えさせられる記述がでてくる。たとえば「対応能力」という概念。「イエス・ノーの意思表示が可能」で、「それぞれの答えが自分の身にどんな影響を及ぼすかがわかる」、さらに「自分の答えを覚えている」といったあたりが加藤の考える「対応能力」の要件。もっともそうした「能力」とは、(『当事者主権』的言い分によれば)周囲の人々のコミュニケーション能力とのかかわりの中でも決まってくるのでは、とも考えるが。
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環境倫理学の中核的な問題を、自然の生存権の問題、世代間倫理の問題、地球全体主義という三点に見いだし、それらが従来の倫理学に対するどのような意義申し立てとなっているのかを解説している本です。
倫理的な原則に立ち返って問題を捉えなおすというスタンスがはっきりしており、入門書としてはやや骨太の内容になっているように思いました。
少し気になったのは、東洋的自然観が現代の環境倫理学にどのような寄与をおこなうことができるのかということに関する議論です。おそらく著者は、現代の具体的な問題を解決するためにさまざまな思想的遺産を活用することができるという視座から議論を展開しているのではないかと思われます。しかしながら、環境問題と東洋的自然観というテーマはしばしば環境ナショナリズムの問題を招くことが多いことも事実です。本書の議論そのものは、具体的な問題と思想内容をていねいにすりあわせているといってよいと思いますが、そうした問題があるということにも一言触れられていてもよいのではないかという気がします。
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自然の生存権、世代間倫理、地球全体主義の3つの基本的主張を骨子にする。
3つの骨子の中で、世代間倫理の観点を最も多く言及している。封建倫理は未来世代のための倫理でもあった。家という観念には、未来世代の繁栄を願う気持ちも含まれていた。
国家全体主義では、個人の自由と国家の拡張とが連動していた。地球全体主義では地球が優先され、国家のエゴは抑制される。
国連資料によると、世界の人口増加率は西暦千年代の初めまでゼロに近かった。増加率が1%を超えるのは20世紀から21世紀前半にかけての100年に満たない期間に終わると予想される。その後、再び増加率はゼロに近くなる。
生命倫理と環境倫理は対立する。個人と全体の対立でもある。
最終章では、人類が成長という、わずか200年に満たない生活習慣に浸り過ぎたと結論づける。