投稿元:
レビューを見る
(1992.02.22読了)(1992.02.14購入)
(「BOOK」データベースより)
ただひとつ、ずっとわかっていることはこの恋が淋しさに支えられているということだけだ。この光るように孤独な闇の中に2人でひっそりいることの、じんとしびれるような心地から立ち上がれずにいるのだ。―絶対の愛の感情と喪失を透明な夜の夜間の中に描いた「白河夜船」「夜と夜の旅人」「ある体験」の三部作。
☆吉本ばななさんの本(既読)
「哀しい予感」吉本ばなな著、角川文庫、1991.09.25
「キッチン」吉本ばなな著、福武文庫、1991.10.17
「うたかた/サンクチュアリ」吉本ばなな著、福武文庫、1991.11.15
「パイナップリン」吉本ばなな著、角川文庫、1992.01.25
投稿元:
レビューを見る
この人は才能豊かな妄想家であろうと この小説を書いた年齢を遡ると20代である。さすがに「人生の垢」のついてない時の作品だと納得する。
50代になった吉本さんの作品を買いに行こう。
この小説の前に読んだのが谷崎潤一郎の「春琴抄」である。男女の愛のギャップが凄い。吉本ワールドではもはや愛は道具である
投稿元:
レビューを見る
白河夜船【しらかわ・よふね】「京都を見物してきた」と嘘を言った者が、白河のことを聞かれて川の名前だと思い、「夜中に船で通ったので知らない」と答え、嘘がばれたという話に基づくとされている。
白河は、京都の地名。
「こういう、濃いブルーよ。目も耳もすべてここに集中してしまうような、閉じ込められた夜の色よ。」p168,夜と夜の旅人
ずっと夜の中にいるような心持ちがします。不思議と落ち着き、いつまでも浸かっていたいような気がするのです。
いつかは夜の果てを見なきゃいけないんですね。
投稿元:
レビューを見る
再読。白河夜船を含めた3編のお話たちの、底辺に流れる悲しさややり切れなさ、暗さがなんとも言えない魅力だと思う。
投稿元:
レビューを見る
死がまず存在して、残された人々の話が始まる。残して行ってしまった人との思い出から距離を測り、絶望の淵にいるが、なんやかんやで立ち直って行く。
そこの、なんやかんやが吉本ばななの真骨頂。毎回同じ枠組みなのにね。といってもキッチンしか他に読んでないから、作者の進化は知らないのですが。取り敢えずこの頃はそういうパターン。
死に引きずられる者たちの再生。再生には非常にわかりやすい生の象徴がファクターとなる。一例は鰻。それを解説ではエロスと書いてあったが、肉体的な喜びという意味でしょう。精神に重点の置かれる時代であっても、どこまでも人間は肉体的で、単純で、虚しくそして生命的なのだ。そういう人間讃歌な作品群。
投稿元:
レビューを見る
映画をやっていて、どんな話だっけな…と再読。
やっぱりこういう吉本ばななさんの作品、好きだなあ。すこーん、と、さみしくて、水みたいな。
投稿元:
レビューを見る
表題作の長く寝てる感じもすきだし、寝ててもすきな人からの電話はたしかにわかる気がする。
なんとなく夢の中みたいなぼんやりした世界観すごい〜
投稿元:
レビューを見る
3つの短編集。どれも身近な人の死に対するテーマで、3つともストーリーや調子が違うので良い。
眠りとお酒がとても共感できた。後書きで吉本ばななさんが行っているように、誰かの死に直面した人が、これを読んで少し楽になってくれたらというのが、この本の本質だと思った。
投稿元:
レビューを見る
初めて吉本ばななの本を読んだ、日本語が好きだった、特に最初の話、解説の文も好きだった、うなぎ食べたい
投稿元:
レビューを見る
平成元年、つまり自分が生まれるよりも前に書かれた本作は、古めかしい感じはするのだが、決して古くさいということはなく、人の心の内を丁寧にリアルに描いている名作だと思う。文学というのはたった数十年くらいでは色褪せないものなのかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
表紙があまりにもかわいいので買った。福武文庫は古本屋でたまに見かけるけど今のところ外れがない。あと昔あった雑誌「海燕」から出ている小説もしかり。この小説はいずれにも当てはまる。
「白河夜船」が良すぎて、読み終わった後すぐにこれを良いと思っている気持ちをなんとか表さなくてはならないと思い、つぶやいた。
眠りがテーマのこの話を読みながら少し前に読んだ村上春樹の「眠り」を思い出した。内容というよりはまた眠りに関する本に惹かれているという共通点を見つけて頭に思い浮かんだという感じ。この短編集に収録されている三編すべてに村上春樹作品の好きな部分と似通ったところを見つけていた。
ばなな作品は大事な人が亡くなっているところから作品がはじまることが多く、それによる欠落との対峙、そして乗り越える過程というものに心を動かされる。今回、もっとも好きだったのは「白河夜船」にて主人公が一週間のアルバイトをし、自分を取り戻していくところで、なんだかとても自分と重なった。
投稿元:
レビューを見る
久しぶりに読んだ。
現実との向き合い方を感じさせるようなお話ばかりだった。
精神状態が悪いと眠りたくなるのはよくわかる。
お酒も睡眠も、それは一種の現実逃避だ。
そして、眠りは仮死である、という感覚もわかる気がする。
3つの話がそれぞれの現実と死を抱えて、入り乱れ、それでも時間の中を生きて行かなくてはならない、そんな不安さや不確かさと、したたかさのようなものも感じた。
2006.7.14
とてもリアルだ。「白河夜船」の眠りが侵食してくるさまや、しおり、全てが手ごたえのあるリアルな存在だ。「ある体験」だけがさくっとしていて、少し調子よく運ぶ感じがするけれど、全体的にこの本は面白い。会話に違和感を覚えるところもあるが。未来に希望が確実にあるわけではない。痛みの多い人生だけれど、それでもその現実の中で生き続けるしかないのだ。
2003.11.20
孤独でリアルだ。特に「白河夜船」と「夜と夜の旅人」はよくできている。というか、孤独がにじみ出ている。人の弱さとしたたかさを描き切っている。改めて人は感情の生き物だな、と思う。理性と感情があったら、大抵は感情が勝つのではないか。感情を抑えることの苦しさ。流されてしまう弱さ。寺子について、やはり私は不倫はダメだと思う。好きな人と完全に幸福になることができない。あるいは、不倫でなくても完全に幸福になることは難しいのかもしれないけれど。ってのは理性の言葉か。寺子もわかってて進んだのだ。全部わかっていて、それでも一緒にいたかったのだ。サラも毬絵も、みんなそうだ。うまくいかない世の中だ。それでも、人はわりとしぶとく生きてゆく。