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本書は怪異と奇想とにかかわる日本的な感性のありかたをたずね、同時に、失われた霊界好感能力を回復するための、じつにささやかな試みに過ぎない――
という前書きで始まる荒俣流「日本オカルト文学」ガイド。万巻の書を読破してきた著者ゆえに文章はどっちらけ(そんなところにこだわりがあったら、この読破量は不可能)ではあるものの、引っ張ってくるデータの量は尋常ではなく、知らなかったことを知る喜びを満たすには良い本だと思う。
最近の興味とのかねあいで行くと、南総里見八犬伝の絵解きを試みる部分と、吉田神道の解説、浄瑠璃版酒呑童子の紹介などが面白かった。
他に宣教師が布教のために色々な者を日本に持ち込んでいて、天正9年には黒人奴隷を連れてきたとか、江戸期の医師安藤昌益を紹介する件に書かれた陰陽五行説による生命観(すべからく天地の間に生まるる者、みな陰陽五行をつくるなり。その気に不同あるゆえに、草木あり、鳥獣あり、人倫あり。草木はさかさまに生まれて、根をかしらとし、枝を末とする。鳥獣は横さまに生まれて横に走りあるくなり)などは、知らなかったので面白かった。まさか草木の喋らない理由が気が逆立ちしているからだとは……。ちなみにこの発想はダンテの「神曲」にも現れるそうで、著者はそれを対応だといっているが、自分には伝播したのではないかと感じられた。
本書の最後をしめるのは、パーシヴァル・ロウエルのエピソードで、彼の著書が呼び水となってラフカディオ・ハーンは日本に来たらしい。ロウエルは西洋に日本を紹介した先駆者であるにもかかわらず、日本での知名度ははなはだ低い(ぼくも知らなかった)のだが、その原因は、その紹介の仕方があまり日本人にとって気持ちの良いものではなかったからのようだ(大森貝塚の発見で有名なモースも、この点似たような者で、日本人は食肉人種だと宣伝に努めていたが、大森貝塚を発見したという一点で残りの部分は黙殺され、日本史に名前をとどめているようだ)。
ではどのように日本人を描写したのかというと、日本人の精神は想像力がなく、女々しい。というのが、彼の結論だった。著者はこれを「正解」と呼んでいるが、なるほど確かに正解だと思う部分もある。現状にブチブチと煮え切らない不平をこぼしながら、自分から何かを変えようとしないというイメージを女性的と捉えるなら、日本人の精神性は女性以外の何者でもないからだ。
って、本の感想とはズレた。まあいいか。とりあえず色々書いてありますが、自分のように頭の悪い人間が読むと、片っ端から忘れてしまい、ほとんど残らないかもしれません。へえと思いたい人向き。
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震えて眠る子らのために。
古代・中世・近世の日本文学を新たな視点で読み解く、とてもスリリングな一冊。
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博学強記の一例。
アラマタ式に系統立ててある為、読みやすいガイド本。
(手元に有るのは作品舎版だが絶版xx)
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怪人荒俣の読書量は半端じゃないと思い知った一冊だった。
そして、学校で習った江戸時代の市井の学者達はだいぶイカれているのだなーと思った。書き方ひとつで人格者のように見えてしまうから怖いなーと思った。
ただ、荒俣先生のこの本は随所随所に荒俣流の解釈があって、まるっきり鵜呑みにできないような気もした。
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日本における幻想文学を、一応全99話説きだすつもりだったが・・・
南総里見八犬伝のパーティと文殊菩薩の童子の関連説、神道集や浄瑠璃が凄まじいファンタジーの宝庫であるという指摘は傾聴に値する。
「窓に!窓に!」
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1/5 読了。
日本の幻想文学の源流を求め、怪異と奇想の日本文学史を辿る。大きく四つのセクションからなり、虚構世界を支える古代の実在人物として小野小町、空海、安倍晴明を召喚する第一部。「関東ユートピア幻想」と称して、京都に対するカウンターとしての<関東>が生んだ幻想国家の夢を、八犬伝や平田篤胤の古道、酒呑童子ら鬼の伝承に見る第二部。日本に伝わる魔術・神秘学の系譜を手繰る第三部。そして、過去の混沌とした幻想世界を体系化し、強化する必要に迫られた江戸期の知識人たちと、日本の激動期を見つめた外国人たちの思考を追った第四部で幕を閉じる。全体でキーになる物語が百あり、一冊で百物語が完成するという粋な構成を持った、異色の日本文学史本。
荒俣せんせいの諧謔味溢れる語り口で日本文化のあらゆる断層にメスを入れ、幻想の種を採集して見せてくれる。道教に儒教、神仙思想を自在に取り込み真言と密教を日本に根付かせた空海の営みは、ヨーロッパにおけるカバラに匹敵する。狂言綺語の世界のようにも思えるが、偉大な宗教家はいつの時代も大ペテン師だと相場が決まっている。
関連本:松岡正剛「空海の夢」、松岡正剛「花鳥風月の科学」
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小野小町七変化(壮衰絵巻・九相詩絵巻)
熊と神通力(神道集)
陰陽博士、出世を語る事(戻橋、茨木・今昔物語・宇治拾遺物語・信田妻)
房総幻想王国(南総里見八犬伝)
鬼たちの理想郷(灯台記・酒呑童子)
巷談妖術考(昔話稲妻表紙・列仙伝・立正安国論・調伏曽我)
吉利支丹打拂ひの事(伴天連記)
幽冥界覚書(本居宜長、平田篤胤)
秋成狂乱(霊語通・定家)
転真敬会革命を論ず(安藤昌益、自然真営道)
明治期異人、「破邪神霊」の要を論ず(オカルト日本)
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荒俣先生は、当時は独身であった。
そんで、浄瑠璃だかなんだっからファンタジーな作品を紹介するといふ凄まじい真似をやる。
すごい。甲賀三郎関係は本書で知った。