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イメージ参照(http://kentuku902.seesaa.net/article/387163666.html)
(収録作品)茉莉花/ひとひらの殺意/盗まれて(日本推理作家協会賞候補(47回/1994年))/情けは人の・・・/ゴースト・ライター/白いカーネーション/時効/ポチが鳴く
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短編集。雰囲気はちょっと恐怖系だが、読了後には心の中に感動が残る。人のドラマを上手にミステリと融合させているからか。文章の書き方、話の展開のしかたが上手い。
「きっとこの後何かある」と予想はつくものの、そうきたか!と毎編、感心していた。
「世にも奇妙な物語」が好きな人にはオススメしたい。
特にタイトルにもなっている「盗まれて」はたたみかけるどんでん返しが素晴らしい。
イラストを描かれている北見隆さんの雰囲気とこれまたマッチしていて素敵です。
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手紙、あるいは電話が小道具として使われる短編を集めた一冊。今邑作品はこれまで長編しか読んだことがなかったのだけれど、短編もいける!
読みやすい文体で、すぐにその物語の世界に引き込ませる力はすごい。哀しい物語であったり、切ない物語であったり、ちょっと笑える物語であったり・・・。いずれも謎を含んでいるのだけれど、その結末にも満足。静かな余韻を残して終わる。
ひとひらの殺意【CALL IN SPRING】
作家志望だった兄が無理心中を図ってこの世を去ってから1年後。香子は兄の友人を訪ねる。兄の遺作を一冊の本にしてくれた友人だ。
死ぬ直前に香子に電話をした兄。その様子は普通ではなかった。興奮していて、それで心中なんて馬鹿なことを考えたのだろうか。兄はなぜ死んだのだろう。電話で語った言葉の意味は?
淡々とした香子の口調がなんだかかえって怖い。静かに静かに語る香子。
兄の遺作の題名は「夜桜心中」。その題名のとおりに桜が舞い散る季節に逝ってしまった兄。桜の花びら一枚だけが真実を語っていた。
盗まれて【CALL IN EARLY SUMMER】
アラサーOLのモモコ。総務から念願叶って企画部に異動になり、キャリアを積むのだと張り切っていたはずが、社内のエリート・沢村と婚約。そこへかかってきた元同僚の幸代からの電話。女同士、話はモモコの婚約までの経緯へと・・・。これがまた不思議な縁なのだ。
引っ越しを考えていたモモコに沢村がアパートを紹介。そこまではモモコも沢村のことを意識していなかった。が、おかしなことが起こり始めたのだ。どうやらモモコの分身がいるらしい。知らぬ間に洗濯物が片付いていたり、ベッドメイキングされていたり。ちょっと気味が悪くなって沢村に相談しているうちに親しくなった二人。
さて、お幸せに・・・という流れになりそうだが、それもそうはいかず。幸代と話しているウチに、なにやら話はおかしな方向へ。その分身の正体とは? 二人の結末は?
本当に身近に起きれば怖い話なんだろうけれど、なぜか可笑しさを感じる。男と女の仲というものは滑稽なものなのかもしれない。
モモコが「盗まれ」たのは何だったのか、愉しみに読んでみていただきたい。
情けは人の……【CALL IN AUTUMN】
場末のバーでバイト中の健史。ママはお気に入りの客と先に帰ってしまったが、酔いつぶれた風の客が一人残っているため健史は帰れない。仕方なくその客に声をかける。さてそこで話は妙な展開に。リストラされたというその男。働いていた会社の社長の息子を誘拐するから手伝えと健史に持ちかける。とある事情からその話に乗ってしまった健史。息子というのはまだ小学生だ。健史は見張り役。
これまた意外な展開を見せる。「情けは人のためならず」。大事だよなぁ・・・。
ゴースト・ライター【CALL FROM GHOST】
派手好きなおみの夫は売れっ子作家の千次。けれど、表向きはなおみが小説を書いていることになっている。つまりは千次はなおみのゴースト・ライターなのだ。売れっ子作家の地位を手に入れたいがためだけに千次と結婚したなおみ。けれど、これからまだまだ楽しもうってときに千次が急死。原稿の依頼は次から次へと舞い込んでく���。困ったなおみの元に一本の電話。声は女性だけれど、名を尋ねると「千次だよ」という。「君を助けるためにあの世から戻ってきたんだ」と。そうして、なおみのために作品を書き続けると約す。これぞ本物の”ゴースト・ライター”!
ま、途中から最後のオチは読めたけれど、それでもなおみのなりふり構わぬ姿が可笑しさを誘う。
最後の最後にちょこっと恐怖も味わえる作品だ。
ポチが鳴く【LETTER IN SPRING】
これがねぇ・・・。一番読むのが辛かった。なんせ作中で犬が惨殺されるんだ。読み飛ばそうかとも思ったけれど、結局は読んでしまった。
犬のポチの散歩に出かけた主人公は、公園のベンチで休憩しているとき、初老の夫婦と出会う。犬好きな夫人。けれど、犬は飼えないんだと打ち明ける。なぜかと問うと、「飼ってしまうと私は犬を殺してしまうから・・・。好きだからこそ飼えないんです。」
犬が好きなのに殺してしまう?! これにはこの夫人の両親が関わっていた。
無類の犬好きな父に似て、夫人も犬が大好きだった。けれど、ある日、とても恐ろしいことが起きた。
真相はどうだったのか。当事者が全て死んでしまっている今となってはハッキリしない。けれど・・・。
ココ掘れ、ワンワン!とポチが鳴く。
それが全ての謎を解く鍵。
白いカーネーション【LETTER IN MAY】
佳奈子の息子・康二が母に尋ねる。「なぜ仏壇に赤いカーネーションを飾るの?」
康二はどこからか、母の日に贈るカーネーションの色の意味を聞いたのだろう。まだ元気なお母さんには赤いカーネーション。天国へ逝ってしまったお母さんには白いカーネーションを贈るのだと。仏壇には佳奈子の夫が母に贈った赤いカーネーションが供えられていた。もう亡くなっているのに赤いカーネーション?
実は、この母の生前、夫は白いカーネーションを贈り続けていたのだ。死んだ母親に贈るとされている花を。そうして、死んでしまった今は赤いカーネーションを贈り続けている。佳奈子の誕生日を忘れることはあっても、母の日を決して忘れない夫。その訳とは・・・。
とても切ない話だ。子を思う母心の深さ。これからも毎年、仏壇には赤いカーネーションが手向けられるのだろう。
茉莉花【LETTER IN AUTUMN】
添田康子は女流作家。ある日、編集者という女性が家を訪ねてくる。原稿の依頼だ。作品を載せるにあたってプロフィールを康子に尋ねる。康子の本名は添田茉莉花。本名の方がペンネームみたいだ。なぜその名を使わず、あえて別の名をペンネームとしたのか。
そこで語られる「茉莉花」という名前に込められた思い。いや、父と母が、込めた思い。それぞれ別の方を向いた思いではあるが・・・。
そして、既に無くなった茉莉花の父の裏の姿が明らかになる。
「名前」ってそんなに大事かなぁ・・・。妙な思いを込めた名前を付けられた子供の身にもなってみなさいって。このお父さん、結局は誰も幸せにできなかったような気がする。
時効【LETTER IN LATE AUTUMN】
母と離れて住んでもう15年。滅多に顔を合わせることも無い。紘一の元にその母から手紙が届いた。母からの手紙自体は簡潔なもの。「あなたあてにこれが届きましたので、転送します。母より」。そして同封されていた一通の手紙。差出人は中学の同級生。なぜ今頃? しかも15年前の事件をなぜ知ってる?
手紙で指定された待ち合わせ場所に行くと、少女がいた。中学生くらいだろうか。そこで不思議な経験をする。
子供って純粋な思いを持っていればいるほど残酷なんだなぁ。
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超非科学的な現象が起きて、けれどそれにはやはりからくりがあって。そういった謎を上手くつかった物語集。ネタばらしもストーリーの雰囲気を壊すことなく、そうして静かに余韻を残す。そんな短編ばかり。
この本だけは文庫が手に入らなくて、図書館で単行本を借りたのだけれど、中古でもいいから文庫本を買おうかなと思案中。
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あるはずもない桜に興奮する死の直前の兄の電話。十五年前のクラスメイトからの過去を弾劾する手紙――ミステリーはいつも手紙や電話で幕を開ける!
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「茉莉花」は前に読んだ短編集「よもつひらさか」に入ってて読んだ。
「よもつひらさか」は、割と後味の悪い話が多かったけど、この本は比較的読後感よく読めた。
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電話や手紙から始まる不可解かつゾッとするようなミステリーや切ない思い出などの短編集。
・ひとひらの殺意 CALL IN SPRING
・盗まれて CALL IN EARLY SUMMER
・情けは人の…… CALL IN AUTUMN
・ゴースト・ライター CALL FROM GHOST
・ポチが鳴く LETTER IN SPRING
・白いカーネーション LETTER IN MAY
・茉莉花 LETTER IN AUTUMN
・時効 LETTRE IN LATE AUTUMN
・あとがき LETTRE FROM AUTHOR
明かされていなかった過去の犯罪がばれたり、家族の秘密に隠された悲しい物語や、心理戦、騙し合い。。。
今邑彩の要素一杯です。
ほんとに惜しい作家さんを亡くしたものです。
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ここでは人間の感情の機微に多く焦点が当てられているような気がした。
今邑彩は印象でしかないが、ゾッとする話はとにかくゾッとし読んでいる間ハラハラが止まらない。
それは根底として人間の感情の機微が追体験できるほど細やかに描かれているからではないかなと思った。自身のことのように本を通して体験しているため引き込まれる。残酷さ、怖さ、温かみなどこの作者の本を読むだけで感じることができるため勝手にお得かなとか考えている。