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紙の本
霧のロンドンに行こう!
2005/05/12 03:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:アルカンジョ - この投稿者のレビュー一覧を見る
舞台は1888年、ロンドンである。
ロンドンは「霧のロンドン」と称されるように、その特異な地形により大変に霧の発生しやすい地域だ。ロンドンの霧の深さたるや、日本ではなかなか体験することのできない、霧である。
そんなロンドンの霧が、まさに鼻先まで香ってきそうな小説である。
主人公は、明治の日本より来る医学生・柏木薫。そして忘れてはならないのが薫のパートナー、日本の貴族階級そして欧米人も目を見張る美貌の鷹原惟光だ。
この二人を中心に物語りは進行し、19世紀ロンドンで実際に起きた有名過ぎるあの連続殺人「切り裂きジャック」の事件が起きる。
史実と虚実が入り混じり、主人公・薫は混乱し、誘惑され、苦悩する。
作品中にはやや女性向けな表現も見られるが、男性読者でも抵抗なく読める程度だ。
この作品からは、19世紀ロンドンの匂いがはっきりと、香ってくる。貧民階級・貴族・見世物小屋・差別と偏見・・・・。
あの時代のロンドンに立ち、まさに薫や鷹原と一緒にあの街を歩き回っているような気分にひたれることだろう。
文体も、読みにくい文体ではない。ミステリ然とした、秩序正しい文章である。
そして、切り裂きジャックについては史実が8割程で当時を再現しつつも、作者のレトリックがきいた作品に仕上がっている。残りの2割は作者のでっちあげ(最後のオチがうまくつきすぎてるので)であり、この作品が単なる「切り裂きジャック」事件再考察書ではないのを感じさせてくれる。
本書の主人公はおどおどした医学生・柏木薫であるが、2002年に同作者より発刊された「一八八八切り裂きジャック」では薫のパートナー、鷹原惟光が主人公となっているようだ。
薫と鷹原は、性格も立場も境遇も真逆といっていいほど違う。別々の主人公の視点から見た、切り裂きジャックの殺人事件。
ジャックに踊らされるのは殺された娼婦か、薫か、それとも鷹原なのか。
霧に沈むロンドンの町だけが知っている。
あと、作者もね。
紙の本
そんな結末
2002/01/15 00:51
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投稿者:水兎 - この投稿者のレビュー一覧を見る
柏木薫に届いた一通の手紙。そこには懐かしい名前があった。
1888年、なにをロンドンに勉強しに来たのかよく判らなくなっている医学生・柏木薫視点で展開されていった「切り裂きジャック」事件。
半分鷹原に連れ回される様子の柏木のコンビがなかなか良かった。
そういうことも可能だった、ということですが、最後の結末は上手くいきすぎです(笑)。
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